「苦しみ」は「ある」:逆目の時には逆手を打つ/久々の海外辺境地域ルポルタージュもの
Posted at 13/04/18 PermaLink» Tweet
【「苦しみ」は「ある」:逆目の時には逆手を打つ】
朝起きてなんだか心とか身体とかに何とも言えない不安な感じや、苦しい感じがあって、それは何だろうと考えていたのだけど、そうか、これが「苦しみ」というものなんだと思った。私はずっと、苦しみというものはある種の幻だと考えていたところがあり、それは仏教的に言えばすべては因縁だから苦しみというものもまた実体のないもの、みたいに考えていたのだけど、今何となくの逆流の中にいてみると、むしろ「苦しみ」というものがある、と考えた方が分かりやすいし、何かと対処することもできるのではないかと思った。「苦しみ」というものも転換して違うものにすることはできるし、基本的には今までそうしてきたのだけど、今いろいろなことで逆目にいることを意識してみると、むしろ「苦しみ」というものが「ある」と考えることで、少なくとも多くの人がそういうものが「ある」と感じ、考えているということを理解することによって、今の自分が前に進むことができるのではないかと思った。
鮭はここまで約束守ってんのに | |
桜井章一・岩崎夏海 | |
竹書房 |
『体を整える』を読み終わってからまた桜井章一の言葉が聴きたく(読みたく)なり、書棚にあった『鮭はここまで約束守ってんのに』をぱらぱらと読んでいて、逆目の時には逆手を打つ、順目のときには順手を打つ、という言葉が心に残った。今の状態はどう考えても逆目、逆流の中にいるから、今打つべき手は普段と違う、逆手を打つべき時なんだと思った。これは羽生善治が書いていたけれども、自分にとって有利な時には見えている手を計画通りにどんどんさしていく、自分にとって不利な時にはわざと場を混乱させるような手をさす、という言葉を読んで感心したことがあったが、ある意味そういうことなんだろうなと思う。桜井はその上で、運の流れを変えることについても触れているから、その辺のところもどういうことなのか、また見て行きたいなと思った。
【久々の海外辺境地域ルポルタージュもの】
謎の独立国家ソマリランド | |
高野秀行 | |
本の雑誌社 |
『謎の独立国家ソマリランド』、現在198/507ページ。大変面白い。ソマリ人という人たちがどんどん面白いと思えて来る。「アフリカの角」と呼ばれる広大な地域の主人公は彼らなのだが、その実態がほとんど日本では知られていなくて、著者の高野秀行がいろいろな思考錯誤をしながらソマリランドやケニアの難民キャンプを訪れたりしている記述が面白い。こういう旅行記のようなものはそう言えば最近全然読んでいなかったが、たぶん子どもの頃にはガリバーをはじめ(あれは架空の話だが)それなりに読んでいたと思うのだが全然覚えていない。覚えているのは本多勝一の『カナダ・エスキモー』と『ニューギニア高地人』だけだ。高野の本も本多の本も両者ともジャーナリストのルポルタージュという点で性格が似ているが、高野の作品の方がいろいろな面で脳天気というか、遙かに現代人的で、そこがいいという人とちょっとという人の分かれ目だろう。しかし逆に言えば現代のフリージャーナリストというもののノリというか、そういうものが感じられてこれが分かっているとテレビなどにこういう人たちが出て来た時もこういう感じなのかなと思いながらみられるような気がした。
アマゾンの書評に、ソマリ人の特徴的な社会形態、氏族社会を源平時代の日本の源氏や平家、藤原氏に例えているのが帰って分かりにくい、というのがあったのだけど、それは私も思った。確かになじみのない地域の氏族間の抗争など、読む気が一気に失せるものではあるが、こういう本を読もうという以上、そのくらいのことは普通覚悟しているのではないかと思うし、これはちょっと気を遣いすぎてわかりにくくなっているのではないかという気がした。むしろ登場人物紹介的に、その氏族の特徴や政権をにぎった人物などについて書いておけばよいのではないかと思ったが、まあこういうのは自分が書こうとした時にどうなるかは分からないし、ロミオとジュリエットみたいにモンタギュー家とキャピュレット家に収斂させられるならともかく、ばら戦争とか三十年戦争並みに入り組んだ氏族間闘争をハイこの通りと一読で理解させるのはもともと無理だろうから、まあ作者の紹介の仕方に沿って理解することを試みるしかないと思った。
ソマリ人の中にも被差別民がいたり(それも皮革業や屠殺業を担う人たちだ)、インタビューを受けている人の多くが近親者に欧米で生活している人がいたりなど、また多くのホテルで無線LANが使えるとか、21世紀になってから海外に行ったことのない私には(そう言えばここ数年は国内のホテルにさえ泊っていない)びっくりするような記述もあってへえというしかない感じだった。こういうものも時には読むのもいいなと思った次第。
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