夜明け前が一番暗い/『半分立ち腐れた棒杭の姿に見とれる」

Posted at 13/01/26

【夜明け前が一番暗い】

地上の記憶 (アクションコミックス)
白山宣之
双葉社

バタバタと忙しいが、読書メモ。買ったまま何となく置いてあった『白山宣之遺作集 地上の記憶』が何となく読めと言っている感じがして読んでみたら、ど感動した。これは寡作だった作家の短編をいくつか集めたものだが、どの作品もいい。「大力伝」は「コミック斬」で読んだ覚えがあるが、他のものはたぶん初めてだ。とくに「ちひろ」と「Tropico」がすごくよかった。「ちひろ」は暁闇という言葉を示して、夜明け前が一番暗いんだよ、と言われたのは、考えていたこととマッチしてまるでこの言葉を読ませるために何かがこの本に導いたのではないかと思えたほどだった。「Tropico」は間抜けな二人組が船を取られてマフィアの抗争に巻き込まれて無人島でうろうろしていたら残留日本兵がいてその複葉機で脱出したというような話で、私はこういう話が実はけっこう好きなので、よかったなあと思う。いずれにしてもこれはマンガとしてとても好きだなあと思った。

吉祥7-seven- 2巻 (ZERO-SUMコミックス)
天河藍
一迅社

今朝はばたばたいろいろあったのだがとりあえず10時ごろ車で荷物を職場に運んでガソリンスタンドまで走ってガソリンを入れ、それからTSUTAYAまで行って天河藍『吉祥7』2巻(一迅社、2013)を買った。どうも何となく活字の本も読みたかったので少し探したのだが、結局何となく曽野綾子『人間の基本』(新潮新書、2012)を買った。『吉祥7』は七福神が高校生になったら、というネタの話なので何となくめでたく、読んでるうちに状況が好転した電話が入ったので御利益があったのかもしれないと思ったり。


【半分立ち腐れた棒杭の姿に見とれる】

人間の基本 (新潮新書)
曽野綾子
新潮社

曽野綾子は短編集を読もうとして見て読みかけたけど読み切れなかったということがあって私には読みにくい人なのだけど、やはり(私の考える)普通とは違う意味でかなり反骨精神が強い人だし、なんていうか今はこの人の言葉に何か魅かれるものがあって読んでみようと思った。「足場というか、基本というのは、実に大切なものです。それがないと流されます。……私は卑怯者ですから、流れにさからうということもしないんです。それでもそういうときに、ふと流れの傍らに立って、半分立ち腐れのまま、川の中に立っている棒杭の姿に見とれることがあります。」というような文章を読むと、この人は何者だろうと思う。

「思想というものは自分自身の生活と体験によってしかがっちりと捕まえることはできませんし、知識だけで人生を渡って行くのは無理な話です。」というのは、何というかだんだん実感を持って分かって来る部分があるなあと思った。私はやはり書類を作ってもパソコン上だけで管理するのはどうも苦手で手で触れるものがほしい。ワープロが出現したとき、字が下手だった私にとってはものすごく大きな福音で、考えたスピードで文章を打てる機械ができたということがすごく有り難かったのだが、今では手書きで書いた文章を残す傾向がどんどん強くなっている。情報にしても本の重みとか雑誌のページの質感、わざわざ八幡山の大宅文庫まで調べに足を運んだことによる重みみたいなものが伴ってものとして認識できる、というようなことを強く思うようになった。お金の管理も結局複式簿記でノートに記入しているが、会計ソフトを使うことだってできるけど手書きで書いてかさばるノートの方が五感でお金を管理している感じになる。パソコンの画面では結局目から通した情報しか入って来ないので、目は疲れ、他の感覚が鈍る、というのがどうも嫌な理由なんだと思った。パソコンはどこまで行っても、認識手段は目だけしかない(耳もないとは言えないが)ものだから、結局目でしか見られないものはバーチャルでしかないということなんだなと思う。何かをがっちりつかまえるためには、なるべくパソコンに触れない方がいいのかもしれない。まだ読みかけたばかり。

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