総選挙の結果を当選議員・落選議員の面から見直してみる

Posted at 12/12/18

【総選挙の結果を当選議員・落選議員の面から見直してみる】

今回の総選挙について、人的に何か面白さがあるかなと思ったのだが、こういうのは基本的に常識外のことが起こって面白かった、というようなことであるものだから、今回はすでに「選挙の常識」みたいなことが完全に崩壊しきっているために、面白がるための枠組み自体が崩壊している感がある。そんなことを面白がってる前に原発にしろTPPにしろ復興にしろ景気対策にしろ子育て支援にしろもっとまじめに政策課題を議論し、憲法改正だの選挙制度改革だの大きな枠組みを見直さないといけない、みたいなきわめてまじめでまっとうな議論が横行、もとい先行していて、いや全くその通りではあるのだけど、そんな余裕のないことで新しい日本を楽しく豊かな国にして行けるのかなみたいな感じはする。まあなんというか、維新の会だの未来の党だのもう今現在に期待は持てないからとにかく今は耐えがたきを耐え忍びがたきをしのんで未来に希望を持つべきだ的な幕末維新期の精神状態がデフォルトになりつつあり、文化文政天保期のバブル時代を過ごした身には肩身が狭い印象になってきている。ここで総選挙トリビアみたいなことを書いてもあんまりおもしろくないというか盛り上がらないみたいな感じはないではない。

しかしまあそんなことを書いているうちに河竹黙阿弥ではないが江戸の粋みたいに敢えて時代に背を向けて刹那的に選挙を面白がって見るのもまたいいのかもしれないという気もしないでもなく、まあちょっと新聞でも読みつつ注目すべき当選議員や落選議員をちょっと見てみようかなと思う。

北海道9区で自民党から当選した堀井学。リレハンメルで銅メダルを取ったスキンヘッドの元スケート選手。鳩山元首相の選挙区から当選だが、どうせなら鳩山さんと戦ってほしかった気はする。そのほか12区の松木謙公が落選したが、この人はそういえば菅おろしの中心人物の一人だった。もうはるか昔のことのような気がするが。だいたいその菅自体がぎりぎりの復活当選で、民主党内の権力争いってほんともう夢幻のように無意味なことになってしまっているからなあ。

こういうことを書いていて面白くないもう一つの原因は、与野党とも大物がどんどん引退して世襲になり、なんだか印象として毒にも薬にもならない二世議員がどんどん増えているということもある気がする。やはりその中では小泉進次郎は頭一つ抜けた存在ではあるが。

あとは、未来の党の小沢流選挙の落下傘候補がことごとく失敗しているのもこの選挙の印象を暗くしているような気がする。特にそれはないだろうと思ったのは、これはおそらく小沢というよりは未来の党内の権力闘争の結果だろうと思うのだが、近畿比例区の福田衣里子。この人は薬害裁判の元原告として、政治の場に携わる必然性が公共的な意味からもあった人だと思うのに、比例区の最下位候補にされていて、これを観たときに未来の党には全く未来が感じられないなと思った。国会の議席というのはもっとも公共のためになるように使われるべきだろう。これは中国比例区で代表代行の飯田哲也を上位に押し込んだために起こった捻じれらしく、そのために未来が名簿提出が期限ぎりぎりになったというドタバタもあったが、飯田自身が落選して何をか言わんという感じではあった。未来の党の小選挙区当選議員が小沢一郎と亀井静香だけというのは一体何のための党だったのかと思う。民主離党組の結果が1勝70敗、その1勝が小沢だったということのようだ。

宮城5区では民主党の安住幹事長代行が自民新人に二倍以上の差をつけて当選。ちょっとこれは注目。この強さはどういう理由があるのだろうか。山形では民主党の大物鹿野道彦が落選しているが、自民党の大物加藤紘一も落選していて、加藤は惜敗率がかなり高いのに重複立候補していないために落選になっている。この辺の経緯も本当はドラマがあるのだろうけど、ほとんど触れられていないのでわからない。どういうことなんだろう。福島では玄葉外相が自民新人に二倍以上の差をつけて当選だが、まあこれはわかる気がする。いや、雰囲気でということだが。

茨城では丹羽元厚相がダブルスコアで復活、中村喜四郎が相変わらずの強さ。この辺は昭和がまだ続いているような錯覚を覚える。栃木で船田元が復活当選、群馬の小渕優子は得票率77パーセントで時点の社会党候補の6倍以上の得票。印象としては猪瀬直樹新都知事の433万票というのに近いものがあった。千葉4区の野田首相が16万票以上取って自民新人の二倍以上。地元では根強い支持があったようだ。刺客に送られた未来の党の三宅雪子は3万票足らずで選挙って残酷だなと思う。なんかそういうところが暗いんだよな未来の党は。あとは神奈川16区の衆院鞍替えで出たヤンキー先生義家弘介が当選しているのも目を引くことは引く。そういえば今回中島政希さんは出てないんだな。

東京では7区のミスター年金長妻元厚相が強かった。8区の山本太郎は…まあノーコメント。やはり注目は12区未来の党の青木愛で、公明党の太田の半分以下ながら比例区で復活当選。この人ある意味何か持ってるのではないか。19区元杉並区長の維新の山田宏が小選挙区3位で比例で復活当選というのもなんとなくどうなんだ。

静岡5区の細野豪志が得票率59%で強さを発揮。次の民主党代表はこの人当たりなんだろうな。っていうかこの人当たりにしないと民主党は本当にダメダメだろう。7区の城内実も強い。郵政選挙の落選がうそのようだ。三重3区の岡田元民主党代表も得票率64%で、今回も実際、個人的に評価の高い議員は民主党でも圧勝している人はいる。結局風に乗った類の泡沫候補が全部落ちたということで、しっかりした議員は当選しているということだろう。まあ日本のリーダーとしてしっかりしているかはともかく議員としては、だが。
滋賀県に未来の党の公認候補が誰も立ってないというのもどうなんだという気がする。嘉田知事は県内に基盤が全くないということなのか。関西は維新が強いのはまあわかるが、なんか知らない人ばかりであんまりおもしろくない。藤村官房長官は手堅い印象なのにあの失言で落選したのはまあ仕方ないだろうなと思う。

中国四国は徳島1区で仙石由人元官房長官の落選が印象に残る。石破自民党幹事長は得票率84.5%。やはりお化けみたいな強さ。安倍新首相(多分)も得票率78.2%ではあるが。

比例区では北海道で小沢裁判に連座して有罪になった石川知裕が新党大地から当選していて驚いたが、この人は去年すでに新党大地に入っていたようだ。近畿で維新から東国原、というかそのまんま東が出ているのは知っていたが西村真悟がさくっと比例区2位で当選していたのはちょっと驚いた。

議員よりも社民党の当選者が2人というのはもう党として完全に終わったということだろうか。参院4人も含めて6人で、もう政党要件ぎりぎり。社民の当選者は沖縄の照屋寛徳と比例区九州で一人で、もう新党大地並みの地方政党。参院4人のうち又市征治は富山だが後の三人は九州沖縄出身で、本当に地方政党になってきているのかもしれない。

まあざっと書いてみたが、なんだかやはりあんまり面白い話題がない。本当にパッとしない選挙だった。やるだけやったけど力及ばず落選、みたいなさっぱり系の印象があまりなくて、なんだかじめじめした印象ばかりが残る選挙になった。

ただ一つ、よかったと思ったのは、安倍新首相(多分)が、潰瘍性大腸炎という難病から復帰して総裁選・総選挙を戦い抜き首相に返り咲きそうだということで、同じ難病に苦しむ人にとって、希望はあるんだというメッセージを送りたい、みたいなことを言ってたこと。そういう意味では頑張ってほしいとしみじみ思う。前回の総辞職の時は本当にがっかりしたので、もうあまり期待しないことにしていたのだが、この日本にとっての難局の時に、総理経験者が首相の座に復帰するということは、おそらくは天の配剤なのだと思う。安倍さんや当選した議員たち全員に、ぜひ頑張って日本をよくして行ってもらいたいと思う。

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