村上隆『創造力なき日本』:たましいの最下層に降りて行く覚悟

Posted at 12/10/19

【村上隆『創造力なき日本』:たましいの最下層に降りて行く覚悟】

創造力なき日本 アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」 (角川oneテーマ21)
村上隆
角川書店(角川グループパブリッシング)

村上隆『創造力なき日本』を読んでいる。現在106/217ページ。ただ、176ページ以降の対談はもう読んであるので実質あと70ページ弱。3分の2は読んだことになるか。

最初のころ何を言っているのかつかみにくかったのだけど、だんだん自分にとってのヒントになることや、村上がどういう人でどういうことを言いたいのか自分が理解しやすいように整理できるようになってきてだいぶ読みやすくなってきた。

基本的にこの人は露悪的な表現をする人なのだ。現代美術家は「ご機嫌取り」をしなければだめだ、という表現は内容をよく読むと仕事相手に対し「もてなし」の精神で相対さなければならないということで、一期一会の覚悟で仕事相手にぶつかっていくことによってさらに世界が広がっていくという茶道的世界を述べていた。

また、「アーティストはヒエラルキーの最下層にあることを自覚しなければならない」という発言も、具体的な例としてはレディ・ガガのファンたちを「モンスター」と呼ぶ表現を上げていて、つまりはたましいの一番低いところ、ないしは卑しいところまで降りて行って表現を見つけて来る覚悟が必要だ、というようなことが多分その中には含まれているのだろうと思う。それに誇りを持つというのはある意味アートという営為においては当然のことだと思うのだけど、村上はそれを頭ごなしに叩きこもうという飯場の現場監督みたいなところがあるし、また同じような意味での人情みたいなものもある人だなと思った。確かに小手先でクルクルやって出来るような仕事でないことはまあ確かだ。しかしまあこの世界には明らかに天才という人たちがいて、ある意味小手先でクルクルやってもできちゃったりする人もいるのだけど、それはまた人が真似を出来るものではない。逆にいえば「たましいの最下層」まで降りて行くことは覚悟さえあれば誰でもできるんだ、ということを村上は言っているわけで、その覚悟が現代アートのアーティストとしてやっていくために必要なんだ、ということなんじゃないかなと思った。

またインスピレーションを得るためには徒労が重要だ、という表現。まあこれはよくわかる。インスピレーションを求める上では無駄なことや理不尽なことにぶつかるのも当然だと考えることが必要だと。まあものを作るということは毎日がこれとの戦いであることは確かだと思う。

それからこれは彼自身が言おうとしたこととは少し違うが、「形がなければ心は伝わらない」ということ。表現なしでは内容は伝わらない、と言ってもいい。私などは書いているうちに書かなくてもこの辺は伝わるだろう的な感覚に陥ることがよくあるので、それではだめなんで、どういう形にしてか伝えるための表現を用意しないといけないということはいちいち心しないといけないなあと思ったのだった。

この本はいろいろな意味であまり読みやすくはないのだが、読みやすくないところもまた伝えるための手段なのかもしれないと思わされるような書き方だなと思った。まだまだいろいろ吸収できそう。

直感力 (PHP新書)
羽生善治
PHP研究所

とはいえ今日は朝からなんだかぼうっとしてしまって活元運動をやってみたりいろいろなものを少しずつ読んでみたり疲れて横になってみたりしながら時間が過ぎて行った。昼前に車で書店に出かけて本を物色し、けっきょく羽生善治『直感力』(PHP新書、2012)を買った。村上の本の中で羽生の『決断力』が勧められていることもちょっと頭の中にあったのかもしれない。『決断力』は2005年の本で、私は以前から羽生の本をいろいろ読んでいるのですでに変化を感じていたのだが、今回の『直感力』はまた更なる進化を遂げている印象が(第一印象だが)あり、読むのが楽しみだ。

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