心に芯を入れる/小川剛生『足利義満』/読書とインスピレーション
Posted at 12/09/21 PermaLink» Tweet
【心に芯を入れる】
火曜日の帰郷の際、特急の中が寒かったせいかどうも呼吸器系の調子を崩してしまい、ここ数日鼻風邪のような症状が続いていて集中できないこともあり、なかなかブログを書くことができなかった。モーニングページは毎日書いていたけれども、書くのはそれで限界という感じだった。ようやく今日、新しい小説のアイデアを少しずつ書いて、これが上手くはまれば一本の小説になるかなというようなものが出てきたのだけど、時間的にかなり遅くなっていたのでそれ以上は展開していない。しかしやはり書きたいもの、書こうとするものがあると自分は気持ちが元気になる。ここ数日ちょっとテンションが下がるような話がいくつかあって自分の軌道を戻すのが大変だったのだけど、このあたりを足がかりにして心に芯を入れて前に進みたい。
【小川剛生『足利義満』】
足利義満 - 公武に君臨した室町将軍 (中公新書) | |
小川剛生 | |
中央公論新社 |
水曜日に書店に出かけて二冊購入。一冊は小川剛生『足利義満』(中公新書、2012)。平清盛と同じく毀誉褒貶の多い公家と武家の両方の性格を持ったこの人物に、公家の側からのアプローチを中心にして描こうというもので読んでいていろいろと刺激的だ。特に、義満の人物像の成立にとって摂関家の二条良基がいかに重要な役割を演じたかということについては全然知らなかったので非常に興味深かった。
ちょうど今まで読んでいて(中断中)の彭丹『中国と茶碗と日本と』と共通するテーマ、「唐物」の日本文化における位置、というようなことについて重なるところがあって、「大陸の文物は日本にはいれば「唐物」として和様化される」という指摘が一番ぴったりくると思った。彭丹の著作は中国文化圏に日本文化を位置づけようという意気込みが感じられて違和感があるのだが、小川はそれを独自性=辺境性と称していてこれもまあどうかと思う。まあこういう文化論はすぐれて政治的な性格もあり、日本を中国の周辺国と位置付けたい勢力がやはりいるんだなという気がするが、日本文明はチベットなどと同様独自文明だと考えた方がいい。彭丹が言うように、「天」の思想がない日本を中国文明の辺境と位置付けるのは牽強付会に過ぎると思う。
日本は手に入りにくい舶来ものをステータスとするところはあるが、それは基本的にはエキゾチズムであると思う。日本文化というのは何というか、常にどこかしらアヴァンギャルドなところがある気がする。それが正統を気取っていたりするから変な感じがしてくるのだけど。
そのほか「守護大名」という概念への疑問符、「守護大名の連合体としての室町幕府」という認識への疑問符など、分かりにくいこの時代の権力構造理解を問い直すような問いかけもあり、最近の中世史研究のある種の成果の一つが現れているのではないかと思った。私の日本中世史の理解も網野善彦―今谷明あたりで、つまり90年代前半の研究で止まっているので、さらに徹底して史料読解が進められ、アプローチの角度も変わってきている最近の研究を読むのは面白いのだが、何というかだんだん「私自身との共通語=共通理解=共通認識」が減ってきている感じがして読みにくい部分もあるなあと思う。194/282ページ。
【読書とインスピレーション】
その他大勢から抜け出すただ1つの方法 | |
ダウンズ | |
きこ書房 |
もう一冊はダウンズ『その他大勢から抜け出すただ一つの方法』(きこ書房、2012)。だいたい普段考えているようなことを書いているのだけど、読んでいてヒントになるようなことが多いなと思う。この手の本は自分にとって読みやすい、受け入れやすい、あるいは示唆的、喚起的であるかどうかというようなことが大きいなと思う。特に、自分の得意なこと、情熱を持って取り組めることに集中する、というところは思うところがあって、たとえば小説作品を書いていてどうもテーマ的に面白くないなあと思いながら話が何となくできて行ってしまい、これを書くのはどうも気が進まないなあと思いながら考えているうち、とんでもない展開を思い付いてそれがすごく自分の書いてみたいわくわくする感じのことに結び付いて行くということがあったのでなるほどそういうことかなと思ったりしたのだった。書いてある内容がインスピレーションと結びつくような本が、もっとも自分にとって意味のある本だなと思う。64/157ページ。
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