小説を書く気分転換に小説を書く/目利きの力/自然美と人工美の微妙な出し入れ

Posted at 12/09/14

【小説を書く気分転換に別の小説を書く】

5日に書き始めた新しい短編、いちおう昨日で脱稿、ということにした。また友人に見てもらって修正するところもあるかもしれないが、これを一応決定稿ということにしておこう。

というわけで今日はあんまりいろいろはかどらず。6本の予定の短編連作が3本出来て、4作目にかかる前にちょっと一休みしたいなあという感じもあり、さてどんなふうにと考えた。考えていてウケたのは、気分転換に全然関係ない小説を書くというもの。これは大学受験のころに英語の勉強に疲れたら数学を、数学の勉強に疲れたら世界史をやる、みたいなことをしていたのと同じだなと思った。似たような頭の使い方をしているのでつかれるのだから、全然違うものを書けばいいという考え方はあるなと思う。多分多くの作家はそんな感じで小説に疲れたらエッセイを書いたりしてるんじゃないかと思う。村上春樹だったら翻訳をするとか。文章を大量生産している人たちってそのくらいやらないとあれだけの文章は書けないだろうなあと思う。

しかしまあ小説というものはまずはネタ出しが大変なので、マンガでいうネーム=絵コンテができたらあとは粛々と書くだけ、という感じになる。私の場合はネームが第一稿という感じでその時点ですでにだいたい形は出来ている。何を書きたいのかを心の中で見つけて、それをどんなふうに書けばいいのかの方法を探して。何に向けて、どう書くか。今回の短編集は友人の画家の個展に作品を置かないかという誘いを受けて霊感が生じたので、まあそういう意味でのきっかけみたいなものもけっこう大事だったりする。こういう企画であるならばそれにあわせて、という発想がばねになり支えになって創作を生む力を援助するということはある。

しかしそういうものが特にないときは自分の中で本当に書きたいものを見つけるという努力をすることになるが、けっこう自分の中でサーチするのは大変なので、午前中に車で出かけた。諏訪湖の南側にあるガラスの里美術館の売店でガラス製品を大量に見る。ここのところ感覚を突き詰めてしまっているので相当いいものでないと琴線に触れなくなっているなあと思う。ここは見に行ってヒントになることがけっこうあるのだが、今日は結局何も買わなかった。さてどうしようと思い、諏訪湖を一周して帰ろうと釜口水門の方へ車を走らせ、ついでにこの地域で一番大きい岡谷の書店に寄ることにした。ナビを見ながら車を走らせたら釜口橋を渡るとわりあいすぐ県道185号線に出て、それを右折し田中町一二丁目を左折したらすぐだということが分かり、思ったより早く到着。


【目利きの力/自然美と人工美の微妙な出し入れ】

中国と 茶碗と 日本と
彭丹
小学館

いくつか本を立ち読みしたが、結局彭丹『中国と茶碗と日本と』(小学館、2012)を買った。著者は四川省出身の中国人。日本文化の中にある中国、というようなことが研究テーマのようだ。中国人にありがちな自然な中華思想が時折鼻につくが、日本の中にある、特に陶磁器の中にある中国というものについて再認識させられるところがある。読んでいて思ったのは結局日本人が見立てた中国陶磁器の魅力というものは結局日本人の眼力の産物であるということ。耀変天目の茶碗は現存する三点すべてが日本にあり、国宝に指定されている。これらはすべて中国では評価されなかったものであり、日本人の目利き力によって生き残ったものだ。日本はものづくりの国だというけど、それ以前に目利きの国であって、おそらくはそれがなければすべては始まらない。美しいもの、善いもの、価値のあるものを見抜く目こそが養うべきもので、白洲正子や小林秀雄の言っていることはそういうことだろう。

読んでいてやはり、青磁の茶碗に緑色のお茶が底の方に鎮まっている風景が想像されて、断崖の下の深い淵のしんとした水の色が思い浮かんでぞくぞくした。アートの魅力というものはいろいろあるけど、人の作ったものがそのまま自然そのものになってしまうというのが工芸の一つの魅力だなと思う。自然と人為の調和というか、自然の持つ崇高美と人間がつくる人工美の微妙な出し入れみたいなものが私が本当に好きなものなんだなと思った。たとえばロートレックのマルセルをはじめて見たとき、塗られた背景だと思っていたバックの茶色が本当は紙の色そのままだったということを知った時の衝撃に共通する。借景を前提に作られた庭とか、素材の味を引き出す料理とか、そういうものと同じことだろう。ナチュラルメイクが一番難しいというけれど、そういう意味ではすっぴんできれいなのが究極の化粧だということにもなる。すっぴんであっても手を加えていないとは限らないのだし。整形という意味ではなく、念入りな肌の手入れやストレスのかからない生活を心がけることなど、実はものすごく困難な背景を持っているとか、そういう意味で。

ああ何かいろいろ考えていると楽しい。この本の方はまだ50/301ページまでしか読んでないのだが。

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by Luke Peterson

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