人は「いい人でありたい」と思うだろうか
Posted at 12/09/01 PermaLink» Tweet
人は、「いい人」でありたいと思うだろうか。この問題提起は、私にとって割合虚をついたものだったので、ちょっと考えてみた。
これはつまり、どういう人間になりたいかという問題でもある。いい人・悪い人という判断軸でいえば、どんな人間だって良い面もあり、悪い面もあるが、いい人になりたい人であれば、いい面を増やし、悪い面を減らしたいと思うだろう。昔は思っていたこともあるような気はしないでもないけど、もう忘れてしまった。多分そういうときもあっただろう。いま、いい面を増やして悪い面を減らしたいとは思ってないなということをさっき考えていて思った。そういえばソクラテスは「ただ生きることが重要なのではなく、よく生きることが重要なのだ」と言っている。よく生きるとは、いい人として生きることだろうか。ソクラテスはあんまり普通の意味でいい人だとは思えない部分があるし、たぶんそういうことではないだろう。
つまり、いい人でありたいという人は、いいか悪いかで判断したい人、つまり倫理的思考が思考の中心にある人ということだろう。そういうふうに考えてみると他にも基準はあるわけであり、たとえば人間の価値観に真善美があるとすると、真実を追求することがしたい人ならより自分に嘘をつかないこと、自分にとって本当に見えることを追求していくはずで、それは時に「いい人」であることを否定しなければならないことだってあるだろう。あるいは「美しい人」であることを目指すなら、その中には「かっこいい人」や「面白い人」であることも含めていいと思うけど、やはり必ずしも「いい人」であることと両立しないこともあるだろうと思う。
もちろん私もなるべく「いい人」でありたいとは思うけれども、自分にとって一番大事なことは「いい人」であることではないなと思う。いい人というのは、「愛に生きる人」だろうか。いつかも書いたが私はどうも愛というものとの付き合い方が下手で、暴走しがちだからいつも愛というものには慎みというものをセットにしないといけないと思っている。まあでも暴走していた時の方がある意味楽しかった気はしなくはない。滅茶苦茶だったけど。
いまはまあ愛は慎んでいるので不満もある、というかパートナーや子どもへの思いを語る人の記述を見るとやはり羨ましいし、いつかはという思いはあるのだけど、暴走していた頃には見えなかった様々なことが見えるようになってそれは嬉しいとは思うし、第一平和ではある。
自分にとってやはり愛というものは真実というものに従属するものだと感じている面がある、というか現在の自分という人間を成り立たせている機構はそういう構造を持っているように思う。吉田松陰みたいな「かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂」みたいな感じにはならない。そういう人たちは嫌いではないが、暴走するのが自分の本意ではないなあと思う。
まあ私も女性への愛が暴走したこともあったし、教育環境への愛が暴走したこともあったし、日本への愛が暴走したこともあったし、まあすごくいろいろなんだけど、基本的には何が一番自分で納得できるかということが自分にとっては一番大事で、つまりは何が自分から見て本当なのかという真実を大事にしたいといつも思っている。もちろんそれは常に「自分から見て」という保留がついていることは大事なのだけど、しかし自分以外に自分の判断に関われる人間は本来いないので、必要なら学べばいいと思っている。
真実を重視する人間というのは、いろいろな意味で不器用な人間が多いんじゃないかな。人から見て何でそんなことを、というようなことにこだわったりする。私などはまあことによったらこちらの方が利があるというドライな判断をすることも多いが、まあその利は理に裏付けられていないと信用できない。大欲は無欲に似たりというけれども、たとえば脱原発なんかは本来それで、設備なんか無駄にした方が最終的にはプラスになると思う。国際関係なんかはやはり人間関係のアナロジーで見た方がいい(それだけじゃないけど)部分もあって、やはり争いを避けるためには譲歩すればいいというだけでは済まないところもあるという自覚は必要だと思う。っていうかそういうのは専門家の方々でなるべく片付けてもらいたいとは思うけど。
何が本当か、何が大事か、何に心を引かれるか、そういうことを訪ねて行くのが自分の道なんだろうなと思うし、それは多分いい人になること、いい人であることと両立しないときはあると思うんだけど、それはそれで仕方がないことだなと思う。
と考えていると、やはり父もそういう人間だったんだなと思う。私は子どものころ、いや大人になってからも、自分たちのことを考えてくれてないということに不満を持っていたのだけど、つまり私も父に「いい人」であること、「いい父」であることを求めていたんだなと思った。まあ周りの人にとってはともかく、自分にとってはかなり「仕方のない人」であり「あんまりいいとはいえない父」であったけれども、やっぱり尊敬しているところはあって、それは私とは基準が違うけれども、自分の正しいと信じていることに忠実であったことだ。
私は子どものころの経験からか、自分を利用しようとする人とか、自分を操ろうとする人に対して、ものすごく警戒心を持ち、嫌うところがある。その一方で人につい同情してしまったり、人をすごいなあと思ってしまったりするところがあり、その同情心や感嘆心に付け込んで私を利用したり、そういう形で操ろうとする人という人に煩わされたりすることも多い。だから心の動き方がよくないときは、すごくこの人は自分を利用しようとしているんじゃないかとか、自分の何を目当てに近づいているんだろうとか、そういうことを考えてしまい、疑いが疑いを呼ぶみたいな形になることもよくある。
ただまあ、正直言ってちゃんと自分のやりたいことをやっているときはそういうことはどうでもいいことであって、あんまり変な人は寄って来ないし、お互いに高め合う関係の人が来る。だから無根拠に疑い深くなっているようなときは、自分を見なおして、自分のやりたいこと、つまりするべきことをちゃんとしているかどうか点検しなければと思っている。
まあ結論からいえば、私にとって「いい人」であることは一番大事なことではない。だからそれが一番大事な人からは嫌がられることはあるだろう。まあそれが理解されなければそれはそれで仕方ないと思う。たとえば、日本にとって正しいと思う主張をすれば、それは韓国の人をどこかしら傷つけるのはある意味やむを得ないところはある。利害関係というものは感情的なものを全く伴わないのは無理だし、そこは割り切らざるを得ないだろう。戦争になって人が血を流すよりは全然そっちの方がましだし、クラウゼヴィッツの言うように戦争は政治の延長であるから、政治の技術を尽くして何とかするしかない。
まあ私は、自分にとって本当だと思える何かを描こうとし、いいなと感じてもらえるようなものを作り、自分の心が引かれるようなことをやって行くしかないと思う。でもまあ私にも「いい人でありたい」欲望はやはりかなり強くあるみたいで、仕事の上ではどうすればその人がその人にとって一番その人らしい人生を送れるかということを考えてやっている。仕事の上でそういう「いい人でありたい」欲望がかなり解消はされてるんだろうなと思う。まあそれが今の私なりのバランスみたいだ。
なんだか分かったような分からないような文章になってしまったが。
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