橘玲『(日本人)』:さまざまな思考が一つに束ねられて行く/いま読んでいて面白い本など/やはりこれが自分なのか

Posted at 12/07/19

【橘玲『(日本人)』:さまざまな思考が一つに束ねられて行く】

(日本人)
橘玲
幻冬舎

橘玲『(日本人)』をようやく読了。さまざまな思考が一つに束ねられて行く感覚がすごく新鮮だった。一つ一つの考え方には疑問があるところもあるけれども、これはそういうことよりもこの人の世界観のようなものがこういう一つ一つのものを有機的に統合して行くことによって出来たのだということが感じられるところがよいのだと思う。そして驚きだったのは、この著者が私より年上であったこと。こういう斬新な考え方を提出するのはもっと若手だという先入観があった。また、人文とか評論畑から出てきた人でなく、『金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』といったいわば成功本、ビジネス本の系統から出てきた人だということだった。読んでいてこれを論拠にするのは少しきついんじゃないかと思うような本が少しあったのは、そういう業界的な慣習のようなものと少し離れたところにいる人だからなんだなというふうに思ったり、実際のところそういうものにあまりとらわれない大胆さが面白いというふうにも思った。論争になった時に突っ込みどころになってしまうからまあ弱点ではあろうと思うけど、たとえば自分の人生を考える上で、私にとってはある人の業績が学問的であるかどうかというのはそんなに大きいことではないので、そういう点で十分OKだとは思う。思えない人もまたいるだろうとは思う、ということだ。

進化心理学をはじめとして自分の知らなかった知見が駆使されているというところも面白かったし、現代が否応なく自分探しをせざるを得ない時代だという話もすごく想像力をかきたてられるのだけど、何か発酵したものが自分の中から出て来る段階ではまだないので、何かの機会にまたそういうことについては書きたいと思う。

進化論的な考え方で自分が違和感を覚えるところを一つ書いておけば、それは自然選択説、あるいは自然淘汰説の考え方だ。適者生存と言ってもいいけれども、何かあまりにも○×主義的な考え方でどうも自然てそんなものかなと思ってしまう。生存戦略のようなものも自然の選択に選ばれるために変化するならそれはどこか今西進化論的な部分もあり、何か二者択一的な思考で全部収まるというところが不自然な感じがする。しかしこのあたりのところは十分考えてないので違和感を感じると書いておくだけにしたい。


【いま読んでいて面白い本など】

郵便配達と夜の国
大庭賢哉
青土社

そのほか、最近面白い本が多すぎて困るのだけど、『看板学部と看板倒れ学部』はまだ読みかけ。往来堂で買った大庭賢哉『郵便配達と夜の国』は読了。これは大変当たりだった。普段児童書の挿絵を描いている作者が描きためて来たマンガで、子どもの目から見た世界、これは子どもが主人公だけど必ずしも子どものために描かれたとは言い難いもの。青土社という出版元も渋い。「お引っ越し」という作品で、幼稚園に通う子どもが好きな幼稚園の先生が、夜には別の子どものお母さんであるという事実を発見した子どもが、「ボクのお母さん、ボクがいないときには一体誰なの?」と思うという話。これはちょっと怖かったりするが、いいところをついているなあと思った。また、お遊戯会の狐の役になりきった女の子が四つん這いで歩いているとタヌキの群れにあって、タヌキを感心させたりするが手を地面から離して万歳した途端に人間であることがばれてしまうという「きつねしばい」という作品も面白かった。抒情的な作品もあるのだが、こういう子ども独自の明快な論理みたいなものが現れている作品がよいと思った。

ガズリング 1 (芳文社コミックス)
才谷ウメタロウ
芳文社

それから才谷ウメタロウ『ガズリング』。バドミントンに熱中する女子高生=ガズリング(ガチョウの子)たちのスポーツ青春もの。この作者はもともとお色気系の作風のようだけど、この作品世界にすごく絵があっていると思う。まずマンガ的な意味で絵がすごくうまいということもある。ストップモーションの多用とか、演劇的な呼吸もうまく使っていて、読んでいてリズムがある。青木幸子『茶柱倶楽部』を目当てに買っていた「週刊漫画タイムズ」ではじめて読んだ作品なのだけど、単行本も連載誌も何度も読み返していて、今とても楽しみにしている作品の一つだということができる。


【やはりこれが自分なのか】

そういうものに触発されて、少しずつ少年ものの作品をまた書き始めた。いろいろトライしてみたけど、結局私は少年ものが自分の書きたいものなのだなと思う。自分の中の少年の目で世界を見ると世界は楽しいものに満ち溢れているのだ。それは、実際の少年時代がむしろそう明るくはなくて、早く大人になりたい、大人になることだけが現在の自分の置かれている境遇から脱出する唯一の出口だと思っていたから、少年らしさのようなものを何かそこにおき忘れてきてしまっていることなのかもしれないと思った。そういう意味で私は永遠に子どもの世界に閉じ込められているというようなところがあるのかもしれないと思う。

しかしまあ、それはそれでいいのかもしれないと思うこともある。それが自分の使命であるならば。もしそうであるならば、私は少年の目で世界を見て、面白いものを探さなければならないし、そしてそれを表現して行かなければならないのだと思う。と感じている旧暦6月1日。

朝のうちにコンビニに出かけてモーニングを買う。「ピアノの森」がうーんなるほどと思う展開。しかしある意味「まど☆マギ」でマミさんが仲間が出来たという多幸感で浮ついてしまいお菓子の魔女にやられるという感じのフラグが立ちまくっていて怖い怖い。この先どういう展開があるのか。「グラゼニ」の新キャラもなかなか面白い。そして夏之介絶好調。「デラシネマ」は来ると思ったが来てしまったという展開。うわあああ。「犬神もっこす」犬神くんの地というか欲望がだいぶ現れてきて面白そうな展開。「へうげもの」は俵屋宗達と有楽斎の息子・左門が初登場。「リメンバー」は最終回。ちょっと難しかったな。「ライスショルダー」は家族会議。なんか今週号は全体に観念的な展開が多かった気がするな。

月刊 COMIC (コミック) リュウ 2012年 09月号 [雑誌]
徳間書店

10時半ごろひと段落ついたので車で出かけていくつか雑誌を物色。コミックリュウの9月号を買った。巻頭カラーのふみふみこ「ぼくらのへんたい」面白い。かわいい人、優しい人。そういう男の娘たち。それに比べてぼくはなんて汚いんだろう。という少年の純粋さ。そんなふうには思いつめられなかったことを思い出すとなんだか愛おしいという作品。そのほかさまざまな作品が読んでないものも含めて面白いなあと思う。

Cut (カット) 2012年 08月号 [雑誌]
ロッキング・オン

もう1冊買ったのが「Cut」8月号。巻頭は庵野秀明のインタビュー。この雑誌、ときどき宮崎駿のインタビューが載るのでどういう雑誌かと思っていたらロッキンオンが出してる「インターナショナルインタビューマガジン」なのだった。これはちょっと面白いかも。なるべく頻繁にチェックしてみようと思ったのだった。中身はまだ未読。

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