美しさというものはこんなにも多様なものか
Posted at 12/05/25 PermaLink» Tweet
【美しさというものはこんなにも多様なものか】
美しいものについて考える。今年、一番美しいと感じているものは『進撃の巨人』と『平清盛』だ。両者とも世間的には汚いもの、怖いものとして知られているのだが、今美しいものと問われたら、その両者を私は答えたい。
進撃の巨人 コミック 1-7巻 セット (講談社コミックス) | |
諌山創 | |
講談社 |
『進撃の巨人』は初めて読んだのは2011年の1月だが、その時はまだ単行本は3巻までしか出ていなかった。今は7巻まで出て、さらに別冊マガジンの連載も読むようになったので2話分進んでいる。だいぶ物語世界の見晴らしがよくなってきて、いろいろ考えやすくなってきた。
ここのところ毎日ずっと、『進撃の巨人』の単行本を読み返していて、1コマ1コマ何度も確認しながら読んでいる。どのエピソードがどこで出てきたとか、この登場人物のここでの振る舞いと現在の展開での振る舞いには矛盾があるんじゃないかとか、相当細かいところまで読みこんできた。構成としてはかなり回想シーンが多くて最初は前後関係がつかみにくかったのだけど、最近ではその辺も迷わず読めるようになっている。逆にいえば最初のころに感じたわけのわからない不安みたいなものはあまり強くなくなってきて、「理解できる」世界になってきているのは、まあこれだけ読んでいれば当然と言えば当然だが、なんだかもったいない気もする。『進撃の巨人』でこのブログ内の検索をかけてみるとこれだけの記事が出て来るのだが、初期のログが面白くて、自分の文章ながらじっくり読んでしまった。やはり最初はとにかく巨人が人間を食うシーンが衝撃的で、正視できない怖さとおぞましさを強く感じていたわけだけど、最近ではもう何というか巨人がかわいいというか愛らしいとまで感じる感性が自分の中に潜んでいることを知り、「ハンジ分隊長」(作中の登場人物)みたいだと苦笑したりするのだった。それでもいまだに読んでいると不意に感動に襲われることがある。設定として合理性がないなと思うところは多々あるのだけど、全然それでOKというか、むしろそういう合理性を超越したところにこの物語世界の世界観が感じられたりもするので、こういう描き方もあるんだなとむしろ感心するだけなのだった。
だからこの作品の美しさというのは本当に一筋縄ではいかない。人間の気高さ、ということをブログに書いたときもあるのだけど、やはりミカサの思いつめ方とかが愛らしいと感じさせられたり、人間の限界が晒された時に光って見える美しさというものもあったりして、美しさというものはこんなにも多様なのかと感じさせられる。今の時点では、そういうところにこの『進撃の巨人』の美しさを感じている、と書けるなと思った。
平 清盛 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー) | |
NHK出版 |
『平清盛』の美しさも結局は同じところだろうか。この話は平安末期を舞台にした人間の怪物性のようなものを描いているのだと思う。出て来るキャラ出て来るキャラみんな怪物的で、いい人はすぐ早死にしてしまう。そういう異形のものたちが運命の糸に操られてあるいは生き、あるいは死ぬ。歴史とは本質的にそういうものだなと感じさせられ、またその怪物性の造形がやはり美しいとしか言いようのないものなのだ。
画面が汚いとは兵庫県知事の言葉だが、何を見てそう言っているのか私には見当がつかない。というか、本当に表面しか見られない人の発言なんだなと思う。アイドルの演技にはまあちょっと苦笑いせざるを得ないところもあるのだけど、ゴリゴリの男たちのゴリゴリの演技の一歩も引かなさはすごい。
『進撃の巨人』が少年たちの戦いの絵巻であるのに対し、『平清盛』は大人たちのどろどろの剥き出しの権力闘争であるけれども、やはりそこには結局はとびぬけた造形の美しさがあるのだと思う。世の中にはいろいろな表現があるものだと感心させられる。こんな大河ドラマは、実は初めてではないかという気がする。
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