『柳井正の希望を持とう』読了
Posted at 12/05/01 PermaLink» Comment(1)» Tweet
『柳井正の希望を持とう』(朝日新書、2011)読了。面白かった。何点か。
柳井正の希望を持とう (朝日新書) | |
柳井正 | |
朝日新聞出版 |
一つ目は日本の企業のグローバル化の問題点として、「ものづくり」精神だけで解決しようという傾向があること。現実問題としてその通りだと思うのは、ユニクロほどの販売戦略ができている日本企業がほかに見当たらない、ということはそうだと思う。職人気質だけでなく商人の目線が必要だという。具体的にはマーチャンダイジング、マーケティング、サプライチェーンの三者の構築だというのだが、この辺になるとやや専門的でピンとは来ない。ただ、『売る』という姿勢が大事だということで、この三つは商品を売るための仕組みの構築だと考えればいいだろう。マーチャンダイジングは商品政策と訳され「仕入れ、販売、管理」のマネジメント、マーケティングは何を売るべきかをつかむための調査、サプライチェーンは生産から流通、小売りまでの供給線の確保ということだろう。日本が弱いのはこの中では「何を売るべきか」という点なんだろうなと思う。ユニクロがすごいのは、たぶんそのあたりがすごいのだと思う。この辺は、私は小売りを経験したことがほとんどないので想像しているだけなのだけど。職人気質だけでなく商人気質を、と。
二つ目。ハロルド・ジェニーン『プロフェッショナルマネジャー』からの引用で、「現実の延長線上をゴールにしてはいけない」という指摘。現実問題として、経営者はなかなか現実からは飛翔できない、というのは私の乏しい経験からもわかる。現実をきちんと構築しつつ、目標へ向けて確実にステップを踏んでいくこと。目標を追求する面白さと、そこに現れるリスクをどうコントロールするか。そこに経営の醍醐味があるということなのだろう。また人生の目標の立て方としても、今できることの延長線上に見えることだけではワクワクしないじゃないか、ということでもあると思う。こういうことができたらワクワクするよね、ということを見つけて目標を設定するといい、ということだと思う。
三つ目。ユニクロの服の定義。流行を追うものではなく、ベーシックで質がよく、価格がリーズナブルなもの。いろいろ書いてあるが、「世界中のあらゆる人のための服、という意味で究極の服である」というところを読んで、この人はすごいことを考える人だと思った。でも多分、これはジョブズがiPhoneやiPadを「あらゆる人のためのツール」だと考えて作っていたのと同じことなのだと思う。確かにありそうでなかった、究極的な考え方だ。もちろんその服だけしか着ないのではつまらないが、全然服装に気を使わない人でもユニクロの服を着ればなんとなくこざっぱりして見られなくなくなる、というのはある意味画期的なことだ。それがユニクロにとって「売るべきもの」だというわけだ。
四つ目。売れない経験が人を育てる、ということ。これは負けたとき、失敗したときにこそ成長のチャンスがある、という話と同じで、間違えた点、よくなかった点がどこだったのかを一つ一つ確認して、それをできるようにする、問題点は解決する、ということをするチャンスだ、という話だ。自分では気が付かなかったことがそこにある、という新鮮な発見をすることが多い。あるいはそれを解決するために考えているうちに斬新なやり方を思いついたりする。言われないとなかなかやれないことではあるのだけど、言われなくてもできるようになれば、十分自分で成長していく力が身についたと言えるわけだ。
五つ目。機構上の問題。本部と現場(ユニクロの場合は店舗)の関係は常に対等であるということ。これは全くその通りだと思うのだけど、本部の方が偉いと思う権威主義が日本でははびこっている。私も現場にいるときに本庁に問い合わせてあまりの尊大さに驚いたことがあるが、「勘違いしている人」というのはすごく多い。同じようなことだが、機構が大きくなってくると何かを達成するための仕事ではなく、「仕事のための仕事」に生きがいを見出す人が増えてくるというこれはかなり構造的な問題がある。こういうことも言われてみれば問題には感じていたけれども、どこにでも起こることなんだなあと言われてみて思った。組織を常に流動的に、活性化させ、動ける組織であるようにするということは大事なことだと思う。
まあ、動かない組織にいることが不毛であることも思い出したが、動ける組織にいることもまた、面白さと大変さと、両方があるよなあと書きながら思った。私のように自分のペースでやりたい人間は、やっぱり組織って大変だなと思うところはある。
まあ、最後の方は自分の読み方になった部分もあるが、組織で働いている方にとっても、「組織」にしろ「売ること」にしろ「商品」にしろ、「理想」というものについて考えるうえで参考になる話が多いと思う。まあ読んでて妙に煽られてる感じはないことはなかったが、うまく自分の現実や思考に落とし込んで生かせるといいんじゃないかと思った。
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"『柳井正の希望を持とう』読了"へのコメント
CommentData » Posted by 短時間睡眠法に挑戦中 at 13/02/26
『柳井正の希望を持とう』は、朝日新聞土曜版「be」に連載されたコラムをベースにしているだけあって、中身が濃い割にはとても読みやすい印象を受けました。