フェリーニと生態系的世界
Posted at 12/03/25 PermaLink» Tweet
【フェリーニと生態系的世界】
最近自分がやりたかったことは全部やったという感じがあって、じゃあさてこれから何をやっていったらいいんだろうという感じになっていたみたいだなと思う。やりたかったことが完全に実現したわけではないけど、たとえば小説を本にはできなかったけど電子書籍の形で公開はしたし、父の本もできたし、仕事もそれなりに軌道に乗っている。だからそれはそれとしてもっとほかのことに展開していきたいという感じが多分最近あるのだなと思った。いろいろな本を読んだりしているのだけど、どうも自分の感じにぴったりと合ったものがなくてなんだかなあと思っていた感じがする。
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今日、このところ懸案になっていた『デラシネマ』の単行本を探しに出かけて、丸の内の丸善にもないし神保町に行って書泉ブックマートや三省堂、コミック高岡やすずらん書店、東京堂ふくろう店などを探したが全然なくて、結局神保町の路上でiPhoneからamazonに注文した。どうもめちゃくちゃ少部数しか出してないようだ。講談社は何を考えている、とぶつぶつ言っていたら、目の前にスヰートポーヅが開店しててあんまり混んでないのに気付き、久しぶりに餃子ライスを食べた。この店に初めて入ったのは考えてみたら1982年、ちょうど30年前のことになる。ゼミで仲良くなった女の子(付き合ってはなかったけど)と岩波ホールに『熊座の淡き星影』を見に来て、彼女が教えてくれてこの店に入ったのが初めてだった。それ以来この店にはよく食べに来て、最近では数年に一度になったけど、時々昔の友達とばったり会ったりしてなんとなくそんなことを期待したり誰かに会ったりするんじゃないかとドキドキしながら入る店の一つだった。
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店を出てからそんなことを考えて、なんとなく昔の感覚を取り戻してゆっくりすずらん通りを歩き、久々にボヘミアンギルドを覗いたら、店頭に『フェデリコ・フェリーニ全作品』という本があり、値段を見たら300円で、これは買うしかないと思い、ついでにそこにあった19世紀の版画を一枚買って(こっちは1000円した)ほくほくして店を出た。なんか急に世の中が色がついてきたように思えたから、私にとってフェリーニって本当に特別な作家なんだなと思う。それからマザーズに戻って大福と夜用の弁当を買い、ガイアまで歩いてパンとフェアトレードのチョコレートを買って帰った。
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フェリーニの作品が初期から97年まで出ているのだけど、私は最初の作品は『青春群像』だと思っていたがそれ以前に『寄席の脚光』『白い酋長』という二本の作品があるということを知った。私はフェリーニが好きなんだけど実はあんまり見てないなということに気付いたのだけど、結局とにかく『甘い生活』が好きで、後の作品は自分にとっておまけみたいなものなんだなと思う。ロードショーで見たのは『そして船は行く』と『インテルビスタ』だけだし、ビデオで見たのも『道』と『8か2分の1』だけで、後者はほとんど覚えてない。『甘い生活』って自分の中で完璧な作品なんだよな。『全作品』を読むとほんとにごく一部しか見てないのにフェリーニについて知ってる気になってることに気が付いていや若気の至りだなと思ったのだけど、でもやっぱり『甘い生活』を知ってればいいんだよ、という気もした。
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もちろん『道』は気になっていて、実際何度かビデオで見たけど、これがいい映画であることは間違いないし、何しろジュリエッタ・マシーナが出ている映画をちゃんと見ないとだめだということがあって、いやこの本を読んでてもやっぱりジュリエッタ・マシーナっていい役者だなと思う。もちろんマルチェロ・マストロヤンニは自分の中では神様みたいな役者で、カトリーヌ・ドヌーブのファッションブックを読んで改めていいなあと思ったけど、この本の中ではフェリーニがあまりに存在感がすごいためにやはりジュリエッタやアニタ・エグバーグの存在感に負けてしまっている。っていうかフェリーニってある種の化け物だな。特に若い時、というか40前後の。年取ったイメージしかなかったのであんまり気が付かなかったけど、ジュリエッタと映ってる写真とか本当にいい。
帰ってきて、なんというかこれをやるぞというものがないからか、今日は余裕をもっていろいろなものが見られた感じがして、久しぶりにじっくり相撲を見て、鶴竜と豪栄道の一番の観衆の歓声とか聞いて、ああ、やっぱり相撲はいいなあと思ったりした。それから『平清盛』もちゃんと見たし、『N響アワー』の最終回も見た。『サンデースポーツ』で梨田と落合の開幕予想も見たし、ツイッターを覗いてたら前田敦子のAKB卒業だとかアントニオ・タブッキの死去だとか猫ひろしがカンボジア代表になったとかいろいろなニュースが飛び込んできてめまぐるしかった。
久しぶりにフェリーニを画像で見て、なんかほんとごちゃごちゃしたいやげな世界だけど、私はこういうのが好きだなあと思った。なんで好きなのかなあと思うと、たぶん、こういう世界にはこういう世界として、私が普段生きているのとは違う意味での秩序というか生態系があり、そういう生態系性に魅かれているんだろうなあと思った。私は着る物とか家具調度とかはどちらかというとアメリカっぽいものの方に魅かれるし実際持っているのだけど、人間の生き方とか映画とかではアメリカのものはあんまりどうでもいい感じがする。彼らには意志はあるけど生態系がなくて、なんていうか人間としてあるいは社会として国家として単純すぎるんだよなあと思う。それは今日N響アワーでチャイコフスキーを聞いて感じたことと似てる。なんか単純すぎるというか泥臭いというか大衆的すぎるという感じがすると言えばいいんだろうか。わかりやすすぎると言えばいいか。私が好きだと思うのは、あるいは生きたいと思う世界は、もっと複雑でごちゃごちゃした生態系的な世界なんだなと思ったのだった。40代のフェリーニみたいな、得体のしれない怪しげな親父として世の中を生きれたらきっと楽しいだろうなと思うし、そういう生き方ができる世界にいられたらいいなと思ってみたりした。
なんかそういう方向性でこれから自分のしたいことを考えてみるのもいいんじゃないかと思った。先日、自分に影響を与えた本ということで自分の人生を三つの時期に区切り、子供時代、青年時代、退職以後という区切りで考えたけど、18歳から37歳までの20年間を区切りとしたこの時期を、もう一度ちゃんと振り返って本当に自分の好きなものについてもう少し考えてみたほうがいいんじゃないかと思った。その中でフェリーには絶対重要な位置にいるはずで、その辺の軸から自分の捜索の方向性についてもまた考えてみるといいんじゃないかと思った。
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