ものを売るための工夫/夢を売るという仕事/前向き族

Posted at 12/03/01

今日は久しぶりにのんびりして、朝から『ランドリオール』や『ジャイアントキリング』の単行本や掲載雑誌をずっと読み返したりしていた。物語に没入できるというのはやはり至上の快楽の一つだと思う。ティム・バートンは「人生には現実とファンタジーが同じ量だけ必要だ」と言ったそうだ。私は彼の作品は一つも見ていないが、この言葉に関してはおおいに同意する。世の中の潤いというのはファンタジーで出来ているんだな。そのファンタジーを打ち壊して現実を見ろよというのが流行りではあるのだけど、それでは何も解決しないんだよな、多分。

昨日は大雪だったが、今日は天気が良くて空が青かった。雪は一気に融けて、屋根から雪どけ水がぼたぼたと降り注いで、まるで雨みたいで、そこらじゅうぬかるんで水たまりになっていた。でも暖かいのは嬉しい。そんな空を見上げながら、自分の仕事の本質は何なんだろうな、とかそんなことを考えていた。

世の中の人はみんな生きてるし、生きなければならないわけだけど、その人その人で持っている仕事は違う。多分、大きく分けて何かをつくる仕事と、何かを売る・広める・教える仕事と二つあるんだろうなと思う。簡単にいえばものを相手にする仕事と人を相手にする仕事。もちろん多かれ少なかれ人は両方やらなければいけないんだけど。

最近人と話していてすごく感心したことがあって、つまりはこの地域、長野県の諏訪地域だけど、それをものづくりで活性化するにはどうしたらいいか、という話を聞いたのだった。私よりずっと若い人の話だったのだけど、それには三つの方向があると。一つ目は、コストを下げること。コスト重視で安く売ることで需要を掘り起こすということだ。二つ目は品質を上げること。他に真似のできない技術を生かして、他と差別化された高品質の製品をつくりだすということだ。三つ目は、新しい製品を開発するということ。高度な技術があってもそれだけでは差別化は難しいから、それを生かして今までなかったものをつくりだして行くという方向で、この話はわりとすごく感心したのだった。

考えてみたらものを売るための工夫というのは結局この三つに集約されるわけだ。値段を下げるか、品質を上げるか、新しいものを生みだすか。自分がやってる仕事でいえば、値段を下げることはしていないが、コストはかからないようにはしている。品質を上げるという点でも、きめ細やかな工夫はしてはいるが、その両方があってまあ何とか利益を上げているという感じだ。新しいもの、というのはそうはないが、内容面の更新くらいはしている。経営上のいろいろな局面で要求されることはそれぞれ違うのだけど、結局どんな仕事でも言い換えたらこの三つに収斂されると言っていいのだと思う。

でまあ、私の仕事、というか関心事がどこにつよくあるかというと、もちろん作るということは重要なことではあるが、どのようにして売るかというところに強い関心があって、これはつまり私がものづくりのスキルよりも対人スキルによって生き残ってきたということなんだろうなと思ったのあった。まあ正直言って私はつくるということに関しては不器用だし大雑把だ。いいものを使うのは好きだけど、セルフメイドマンということはない。誰かがやってくれる、誰かがつくってくれるならそれでいい。

まあ根本的に自分勝手でわがままな人間なんだけど、だからこそどこまで押していいのかとかこういう場合は引いた方がいいのか押した方がいいのかとか、相手にしなければいけない人間と相手にしない方がいい人間の見分け方とか、つまりはわがままだからこそどうやったら人とうまく付き合っていけるのかということを考えてきたし、いつも他の人のことをこの人はどういう人間で、どう付き合っていくのがいいのかということを考えていたし、たとえばどんな人でも笑顔でこたえられると悪い気がしないとか、そういう当たり前のことでもそれを理解したら積極的に笑顔で応対したり進んで挨拶したりもまあやればできるようになってきて、でけっこうそういうことって対人スキルの上で重要なんだということを理解できるようになってきたのだと思う。

自分が売りたくないものは売れないから何でも売れると豪語するセールスの達人とは違うけど、やっぱり自分が売りたいものは何となく買ってくれる人が増えてはいるし、買ってくれると正直言って単純にうれしい。まあたぶんそれはお金の問題ではなくて、自分が「これはいいよ」と言ったときに同意してそう行動してくれる人がいる、ということがうれしいんだと思う。だからその人がちゃんと得をするようにこちらもしようと思うし、まあ作る方はそう得意ではないのでいつも完璧とは行かなくても、でも何となく買い続けてくれたりして、すごくありがたいことなのだしお客さんに恵まれているということではあるのだけど、やはり自分のいうことを信用してくれる/信用されるということが本当の意味での対人スキルなんだと思う。

で、自分の仕事の本質ってなんだろうと考えた、という話に戻るのだが、私の仕事の本質というのは、「夢を売る」ことなんだなと思ったのだった。夢を売ると言ってもいろいろな解釈のされ方があると思うけど、ものとしての夢というよりも、夢を実現するための力を育てるという意味での「夢を売る」ということ、なんだなと思う。それは文章でもそうで、結局は私の書いたものを読むことで何か気づいたり、力づけられたり、やる気になったり、後ろ向きな姿勢が転換したりしたらいいなと思う。まああんまりちゃんとそいう言うことを意識して書いているとは限らないので「ほんとかよ」と思われるかもしれないが、でも少なくとも、そういうことを拾いだして読んでくれるといいなと思っている。まあ書いてみて思ったが、私の文章もやはり基本的にわがままで大雑把で不器用なんだな。でもまあちょっとでも伝わればいいかと思ってごちゃごちゃ書いているんだけど。

まあそんなブログでも毎日何百人もの人が読みに来てくれて、いろいろな会話が図れるというのは楽しいことだなと思う。なんか小説にしても他の文章にしても、もっとそういう方向で作り込んで行けばいいんだなとは思う。だいたい私の小説の読み方ってそういうもので、たぶんそれは正統的な小説読みとは違うんだよなと思う。ツイッターでも書いたのだけど、私は結局根本的には「前向き族」なんだなと思う。前向きになれなかった時代というのは、なんというか自分の仕事が人の生きる力になってるとはとても思えなかった仕事をしていた時なんだなと思った。で、小説の醍醐味ってほんとは前向きになることだけじゃないのは分かってるからね。でもそういうの、つまり小説の「毒」というのは自分にとってはスパイス以上の意味は持たないんだな、現実問題として。だから香辛料の利きすぎたものは受け入れられないということになる。けっこうそういう意味で人間に対しても作品に対しても受け入れ幅は狭いんだろうと思う。

でもまあ一定程度の人が前向きに生きてないと世の中大変なことになるわけだし、そういう意味で自分のしているのはそういう人を相手の商売なんだと思う。万人が相手の商売じゃないね。


年収が10倍になる!魔法の自己紹介
松野恵介
フォレスト出版

今日は昼前に本屋に出かけてのんびりと本を探して、買うものがないなあと思いながら探して、目についた松野恵介『年収が10倍になる!魔法の自己紹介』(フォレスト出版、2012)という本を買った。何というか最初の書き方を読んでいるとある種の情報商材みたいな感じのするところもあったのだけど、まあ使える部分だけしか使えないというかそういう意味ではビジネス書というのもある意味紙に印刷はされてるけど本質的には情報商材なんだなと思う。買った値段だけのリターンがあれば十分なわけだし。

まあ年収うんぬんはともかく、自己紹介をこれだけ掘り下げてあるものをいままで読んだことがなかったので、なかなか面白い。いわれるままにいろいろ書いてみたけど、まず自己認識という点で勉強になるし、自分を売り込むという点ですごく参考になる。ああそういえば、自分の仕事の本質は「夢を売る」ことだなと思ったのも、この本を読んで「あなたの職業はなんですか?あなたの「仕事」はなんですか?」という問いかけに対する自分の答えとして出てきたものだったんだな。いま130/213ページだけど、この本が役に立つという人はけっこう多いのではないかと思った。ということでお勧めしておきたいと思います。年収が10倍になったら少しおすそわけをお願いします。(笑)

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by Luke Peterson

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