パラレルワールド/「手塚が描くと言ってるんだ!黙って待ってろ!」/ライフワーク

Posted at 11/12/12

【パラレルワールド】

昨日。朝は信州。起きてからモーニングページを書き、しばらくものを考えたり休んだり。ブログにうまく書けない、まとめられない種類のことを考えているとそれを十分に表現できなくてフラストレーションがたまる。前夜は弟が来ていて、空は満月で、皆既月蝕で、怪しげな赤黒い月が浮いていた。朝食は、前日の残りがあったのでご飯と味噌汁と豚肉とキャベツの炒め物。食べ過ぎてしまって、動く気になったのが10時過ぎ。iPhoneで特急の時間を調べたら11時半だった。会う約束があったので友人に連絡すると、2時半ごろ横浜でということに。朝食べ切れなかったものをタッパーに詰めてお弁当にして、少し足りなそうだから駅でおにぎりとヘルシア緑茶を買い、特急に乗る。最近、上りは日曜の昼間の電車に乗ることが多く、富士山がよく見える。そのかわり下りは月曜の夜になって何も見えない。

八王子で横浜線に乗り換え。車中、土井守・松原隆彦『宇宙のダークエネルギー』(光文社新書、2011)を読む。ダークエネルギーというのは今まで『宇宙項』と表現されていたものなのか、と納得。アインシュタインの一般相対性理論に表現されている斥力エネルギーの存在をアインシュタインが仮定していて、それが転変を経て現代に復活し、ダークエネルギーと表現されているのだそうだ。そういう話は面白い。もし高三の進路選択のときに天文学を選んでいたら、今頃こんなことで頭を悩ませていたのかなあと思うとパラレルワールド。

宇宙のダークエネルギー 「未知なる力」の謎を解く (光文社新書)
土居 守, 松原 隆彦
光文社

快速だったので割合早く、とはいっても八王子―横浜間は50分くらいかな。やっぱり長いといえば長い。2時に横浜に着き、ルミネの有隣堂で本を物色。『このマンガがすごい!2012』(宝島社、2011)、『夜想bis+ 新房監督マル秘インタビュー番外編』、諌山創『進撃の巨人』6(講談社、2011)の三冊を買う。

このマンガがすごい! 2012
宝島社
夜想bis+―特集 新房監督マル秘インタビュー番外篇
クリエーター情報なし
ステュディオ・パラボリカ
進撃の巨人(6) (講談社コミックス)
諌山創
講談社

2時半にアフタヌーンティーで待ち合わせ。例によって行列だが、思ったよりは待たなかった。友人が東京ミネラルショーで仕入れてきた紫水晶を見せてもらう。三つのうち一つがすごく色が深くて、とても気に入った。場所を変えてベイクォーターのオーガニックカフェへ。そこでいろいろ創作に関する話をし、欲しいアメジストを買うことにした。また場所を変えてハワイアンダイナーへ。月蝕の話をしたら残念がっていた。みなとみらいの方向に見える引込み線に、影の濃い貨物列車の列が移動していって、幻想のような。あれはどこからどこへ行く荷物なのだろう。湾を渡る道路の歩道をジョギングする人。ビルの真下から出て行く車、入っていく車。十六夜月。ここにも何かのパラレルワールドがある気がした。起こってしまったことが起こってなければ、今は今と同じ今ではなかったわけだし。ビッグウェーブと、ハートランドを飲んだ。

それからヨドバシカメラに加湿器を買いに行くのに付き合って、横浜駅でサヨナラ。10時ごろ。東海道線で東京駅に出て、日本橋に出て、東西線で帰った。


【「手塚が描くと言ってるんだ!黙って待ってろ!」】

ブラック・ジャック創作秘話~手?治虫の仕事場から~ (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ)
宮崎克・吉本浩二
秋田書店

今朝は7時ごろ起床。少し食べ過ぎたせいか、体が重い。モーニングページを書いて、いろいろ考える。きのう創作についてこれからの方針を相談したことを思い出したりしながら、いろいろ考える。まとまらない。ツイッターをしたり、ネットを見たり、本を読んだり、考えたり。11時過ぎになって、少し歩くと考えが進むかと思い、食事を買いに行くついでに郵便局で用事を済ませようと通帳や令書を持って出かける。お金を下ろし、振り込もうとしたら振込先を控えていた紙を持ってなかった。住民税を払おうとしたが、待ち時間が長そうなのに痺れを切らし、結局区役所まで歩いた。5階に上って住民税を支払い、降りてきてまたまいばすけっとまで歩いて昼食を買う。帰ってきて食事をして、またいろいろ考えるがまとまらず。ネットで見ていたスタジオジブリの広報誌『熱風』が欲しくなり、また出かけることにした。今度はちゃんと振込先を控えて、駅前の郵便局の本局で振り込む。そのあと文教堂へ行って少し本を見て、『このマンガがすごい!』の男編1位になっていた『ブラックジャック創作秘話』が山積みになっていた。買おうと思ったがこれからもっと大きな書店へ行くのでそこで買えばいいやと思い、買わずに出る。

花のズボラ飯
久住昌之・水沢悦子
秋田書店

東西線で大手町に出、丸善本店へ。PR誌がどこにおいてあるのか分からず3階のカウンターで聞くとある場所に案内してくれた。『熱風』を一部もらう。2階に下りて、『このマンガがすごい!』女編一位の久住昌之・水沢悦子『花のズボラ飯』(秋田書店、2011)を買う。『ブラックジャック・・・』は品切れだった。何故に?と思うがないものはない。地下に降りて神戸屋でパンとマンゴープリンを買って東西線に乗る。結局地元の文教堂に戻って『ブラックジャック創作秘話』を買って帰宅。

帰ってきてブログを書きながら、『ズボラ飯』と『ブラックジャック』の最初を読む。『ズボラ飯』でくすくす笑い、『ブラックジャック…』で、……いきなり泣かされた。オーソドックスだがこれは泣かされる。天才といわれた手塚治虫が、背中を丸め、汗だくで、原稿に目をこすりつけるようにして、落とすぎりぎりの、というかとっくに落ちていたはずの原稿を徹夜で仕上げる。そして編集長は印刷所に電話をかけ、「何い落とせだと?手前誰に向かって言ってんだ!ブッ殺すぞ!手塚が描くと言ってるんだ!黙って待ってろ!」と怒鳴る。このエピソードはどこかで読んだが、知っていても泣く。凄まじい。どんなに無理を通してでも納得のいくマンガを載せようとする手塚と編集者。その鬼気迫る様。そして原稿を渡すときのにこっとした笑顔。あの笑顔があるから許せてしまう、という。その後を読んでももう正直、体が震えるような感動。少年のころ、手塚治虫の作品を一本でも読んだことがあったら、このマンガは絶対に感動すると思う。読んでしまうのが惜しい。


【ライフワーク】

いろいろ考える。考えがまとまるのは、机に向かって悶々としていたりソファーに寝そべって虚空をにらんだりしているときよりも、歩いているときの方が多い。今日も歩きながらいろいろ考えていた。何をやりたいのかと考えていて、考えれば考えるほど具体性を欠いて行くことに気がついて呆然としたり。やる、行動するというのはすごく具体的なことのはずなのに、考えれば考えるほど夢幻的な感じになってくる。これはもっと具体的な次元におろして考えないとだめだなと思う。

具体的にやりたいことと考えてもうまく言葉にならないので、具体的にどうしていたいのか、どうなりたいのか考えていると、つまりは生理的に快かったらいい、というところが自分はすごく強いということに気がつく。これは欲望というのとはまた違って、おいしいものを食べたいとかいい女と付き合いたいとか言うのと全然重ならないわけでもないけどやはり欲望というよりは生理的に快い状態を保っていられたら満足なんだなということに思い当たる。これは多分、整体で私が「いい身体をしている」といわれることと無縁ではないんだろうな、と思う。欲望よりも快さ。アナスタシアか?もちろん飲んだり食べたりいろいろしてそのバランスをときに崩し、またそれが回復していく感じも楽しかったりはするので無理をするのは悪いことではないのだけど、無理しっぱなしだとあまり快くないのでそれは避けたい。そういう快さを保っていたいと思う。

しかしやはりそれだけでは物足りない、人間として生まれてきた理由というか、存在証明というか、「生きた証」を残したいという渇望が私にはある。川島雄三が「人間生まれてきたからには大地に爪跡を残さなくてはいけない」といったのと同じように。それは究極の自己満足かもしれないが、ただの自己満足ではなくて、それはみんなの役に立つものでなければ、自分自身が満足できないから、そういうものを残したいと思う。

まあそういうわけで、私という人間は、徹頭徹尾自分勝手というか、わがままな人間なんだなと思った。いつもは生理的に快い状態にいて、だから多分先に生活の足場を築くことを無意識に、というか生理に支配されて選択してしまって、創作が後回しになってしまっているんだろうなと思う。かといって悠々自適になってそのあと創作に専念する、というような余裕があるわけもなく、やるべきことは今からやらないと絶対に死ぬまでに間に合わないという切迫感もある。だから残したいのは生きた証であって、それ以上でもそれ以下でもない。多分それはギボンが『ローマ盛衰史』を書いたのと同じような動機なのだと思う。つまりライフワーク。ギボンはある日ふらっと『ローマ盛衰史』を書き始めたという話があるが、多分彼にとって、自分の人生と『ローマ盛衰史』には境目がなかったんだろう。

そういう書き方がいいのかどうかは分からないが、多分私がやりたいのはそういうことなんだろうと思う。これが書けて、自分が生きた証だと胸が張れるようなものを書けるように、最後までがんばりたいと思う。

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by Luke Peterson

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