私の思春期/私と思春期/執筆と準備と買い物
Posted at 11/11/04 PermaLink» Tweet
【私の思春期/私と思春期】
鈴木敏夫『ジブリの哲学』読了。面白かった。こういう作品作りの第一線にいる人の話は読んでいて元気が出る。意外に自分の影響を受けたものと重なる話しもある。映画『旅の重さ』の主題歌、よしだたくろうの「今日までそして明日から」を聞いて青春が終わったと思ったとか、まあ私は思春期真っただ中という感じだったけど。それから寺山修司。短歌もエッセイも演劇もとにかく畏敬の念を持っていた。あまりに言葉が切れすぎて、でも論理的に繋がってない、という指摘はなるほどと思ったけど、私が論理軽視になったのは寺山や唐十郎や別役実や、あの時代の劇作家たちの論理を超越した作品作りの影響が大きいので、そう言われりゃそうだなと思った。
ジブリの哲学――変わるものと変わらないもの | |
鈴木敏夫 | |
岩波書店 |
特に今回読んで自分にとって重要だなと思ったのは「思春期」というテーマだった。12歳ぐらいの子どもを主人公にした話は書けるのだけど、中学生になると書けない。そうか、それはその時期が「思春期」だからだったんだ、と思う。自分にとって中学生時代は暗黒時代だったから、思春期について考えようとすると自分の闇黒の扉を開けないわけにはいかない。なぜ書けないのか考えていろいろ試行錯誤をしていたのだけど、「思春期」と言われてようやく分かった。鈴木は思春期を「価値観が定まらない時期」と言っていて、まさに親にお仕着せされていた親の価値観から脱皮して、自分なりの価値観を形作っていく第一歩である中学生の時代が自分の人生にいかに大きな影響を与えているかについてちゃんと考えなければいけないと思った。それで今朝、「ぼくは囚人だった(仮)」という題名で小説を書き始めてみたのだが、小説なんだか告白なんだか分からなくなって、だんだんヒートアップはしてくるものの作品の体裁が取れるようなものではなくなってしまった。まあ囚人、というのがあの当時の自己認識としては一番あってる気がする。囚人状態に戻りたくない、というのが私の不安の根源で、私自身が一番大事な価値だと思っているのが自由だというのも、その時期の自分への痛恨と悔恨の念、つまり「恨み」「ハン?」の感情がまだまだリアルにあるということに気づいた。いやもう36年前のことですが。
まあそういうわけで思春期について考えるにはやはり自分の思春期を材料にしないと書けないわけで、でも向かい合うのがいやだということがあって、この時期のことを書くのがすごく大きな葛藤があった。今日は割と素直にいろいろなことが書けたけど、自分がいやだと感じたことをちゃんと書いてみると、逆に自分が好きなものが何かということが浮かび上がってくる、ということはある。まあそういう違和感に根拠を置いてもなにも見えてこないよ、というのが『どうしてこんなに生きにくいのか』の説くところでそれはそうなんだが、あのころの自分が欲しかったもの、欲しくても得られなかったものを思い出してみるといまだに新鮮な気持ちになるからそんなものだなと思う。
自分が欲しくて得られなかった一番大きなものは自分を導いてくれる手だったけど、どうもそういうものについて自分にはそういうものは与えられないんだと諦めてしまった部分があるような気がする。いまでも身につけたいことについて誰かから指導を受けるということが苦手だし、手っ取り早く誰かから教えてもらえばもっと楽だったのにということも自分で調べて何とかしようとしてしまう。結局そういう自己流のやり方はそれなりに身に付きはするがやはりポイントを押さえ切れておらず、どこか中途半端になってしまう憾みがある。
ピアノの森(20) (モーニングKC) | |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
いまでも本質はそうなのだが、若い頃は本当にエネルギーが四方八方に発散して、一つのことに集中させるのが難しかった。それを上手に集中させて構築のエネルギーに結び付けるのがよい教師というものだと思う。『ピアノの森』でショパンのピアノソナタ3番を弾くときに、阿字野がカイの八方破れのピアノをじっと集中させて内なるエネルギーに変え、難曲に確固とした枠を与える構築性と力強さを付与する指導をして行く場面があるが、つまりはその構築性を成り立たせる根本になるのがピアノで言えば運指であり、絵で言えばタッチであり、数学で言えば計算であり、英語であれば文法であるわけだけど、文章で言えば文章を展開して行く上での形の作り方、つまりは文体ということなのだけど、書き方のプリンシプルというかディシプリンというか、そういうものを一つ一つ構築して行かなければならない。プリンシプルというのはつまりその文章を成り立たせている原理のようなもので、一つの作品がそのプリンシプルによって貫かれていなければならない。そういう意味で言えば文章というのはすべてプリンシプルの自己表現みたいなものだ。
そんなふうに考えると自分の文章の弱点も見えてくる。ブログのように始めも終わりもなく、どこを読み始めてもどこで終わってもいいような文章は割といくらでも書けるのだが、細部から全体まで一つのプリンシプルで貫かれた作品を作る力のようなものはまだ足りないなと思う。まあ文学賞というのは結局その力を見るためにあるのかもしれないなと思う。
まあ話が違う方にずれたが、私は幼稚園のころから計算は得意だったが、中学高校で英文法はからきしだめだった。これも小学生のころから変なオーラル英語でなくびしっと文法を一から教えてくれる人について勉強していたら抵抗なくいくらでもできるようになったのにと思うと本当に残念なのだけど、文章についてもしっかりとした構築力がある文章を書けるように指導してくれる人がいたら全然違ったなと思う。いや最後のものはさすがに求めること自体が困難だとは思うが。
というよりは、私は「地道な、意味のある練習」というものに飢えていたんだなと思う。入らざるを得なくて入った中学の部活は卓球部だったが、先生に教えられたことは一度もない。先輩にだって点数の数え方ぐらいだろうか。あとはただひたすら打ち合うだけ。いま思ったらひどい部活だ。先生が講堂(体育館はなかった。卓球部と剣道部が講堂を使っていた)に来ることはまずなかったのだから。
まあそういうわけで、私は自分が指導する立場になるときは本当にプリンシプルを愚直に徹底的にやることを勧める面倒な先生になっている。そして正直、それが一番効果が上がる。もともと「持っているもの」がかなり左右するのは確かなのだけど。
そういうわけで、私は「これをやらなければいけない」、たとえば小説を1000冊読む、とかが必要だ、というふうに思ったりすると元気が出て来るところがある。地道に、自分がやる気でやれば手が届く目標をもって、こつこつと積み上げて行くのは嫌いじゃない。計算とか文法とかと同じように自分で自分の文章をチェックし、直していく推敲も、実はけっこう好きだということは分かった。根本は同じなのだなと思う。
まあ思春期のことを書いていてもつい現在の課題に結び付いてしまうのは、けっこういまだに私自身が思春期を生きている部分があるからなんだろうと思う。つまり「価値観の定まらない時期」だ。それは鈴木敏夫も自分で言っている。
いま思えば、私は中学生のころからアートとともに生きて行きたいと思っていたし、ファンタジーとともに生きて行きたいと思っていた。野口整体に邂逅した(その後最近までは断続的にしか関係はなかったが)のも中学生の時だったが、身体の中に宇宙があることを知った(そんな洒落た言葉で表現するのは今が初めてだが)。あとで気づいたことで言えば世界は自然に生かされていることもそのころに知ったと言っていいのだと思う。そして誰かに理解され、誰かを理解することをある意味断念したのも中学生のころだったし、そうであっても、またそうであるからこそ他の人間との関係が必要であることの、理解の萌芽も芽生え始めていたとは思う。
そういう意味では、闇黒の中で自分という人間が形成されはじめ、価値観のかけらのようなものが生まれ始めていたことは確かだなと思う。問題はその価値観をどのように実現するかということで、それが結局今になるまでちゃんとは出来上がっていないんだなと思う。
つまりある意味、中学生の自分に言ってやりたいことというのが、今の自分にも直接響いて来てしまうのだ。自分というものが、そこで二重に反響する、割れた鍋のような感じがある。
ついでに「思春期」の話をもう少し書くと、考えてみれば大きな話題になった作品というのは、中学生が主人公であることが多いのだ。「天空の城ラピュタ」の主人公たちは14歳で、「魔女の宅急便」のキキは13歳。「新世紀エヴァンゲリオン」の主人公たちも14歳。そして「魔法少女まどか☆マギカ」の少女たちもみな中学生だ。脚本を書いた虚淵玄が『ユリイカ』の対談で言っていたが、高校生ならきゅうべえのインチキに騙されなかっただろう、という。確かにその、なにものかでありたいがなにものでもまだない、「価値観の定まらない」時期だからこそ騙される、そういう物語ではある。だから思春期ものというのは侮れない。逆に大ヒットを飛ばしたいなら中学生を主人公にすべきということはあるのかもしれないと思う。
ああ話が長くなった。ずいぶん力説したわりにはいつもの初めも終わりもよくわからない文章。
【執筆と準備と買い物】
昨日は祝日だったので仕事が早く終わり、9時20分頃には帰宅して久しぶりにNHKの9時のニュースが見られた。早めに食事して早めに入浴、早めに自室に戻って12時ころまで『ジブリの哲学』を読んだ。このくらいの感じならいいのだけど、なかなかそうも行かない。
今朝は目が覚めてから上に書いた「ぼくは囚人だった(仮)」を書いていて、7時半に朝食。職場に出て隣家との境にある銀杏の剪定を頼んだ人にこうしてくださいという話をする。隣家との隙間が狭いので結局家の中から作業をすることになり、枝を切って持って行ってもらったのはいいのだが職場の床が銀杏の葉っぱだらけになった。作業自体は40分で済んで作業終了のハンコを押したが、作業をする人が帰ったあと、葉っぱの片付けに40分かかってしまった。まあ銀杏の葉っぱの処理をするのも秋めいていて風情があると言ってみたりする。
自室に戻って「ぼくは囚人だった(仮)」の続きを書く。だんだんヒートアップしてきたが言いたいことのポイントがどんどんずれて行き全然一つの作品にはならなかった。12時まで書いて時計を買いに行く。量販店とセイコーと関係の深い(やや)高級店と両方で見たが、父の三回忌のときにする時計を買おうと思っていたのに、高級店でデザインがカッコイイのに出会ってしまい、ついそれを買ってしまった。そんなに高くはないけど。しかしライトブラウンの革のベルトなので法事には不向きだ。
郵便局でお金を下ろし食事に帰る。食事のあと、母と父の三回忌の段取りについて打ち合わせ。一周忌のときにかなり詳細な段取りを組んだのが残っていたのでそれを流用してやや軽くした感じでスケジュールが作れそうだった。去年の書式を流用して清書して、あとは喪主挨拶を考える。
話を済ませてから量販店に出かけ、デザインのシンプルな、法事にも使えそうなニュートラルなデザインの時計を買う。まあこれもたいした値段ではない。これで腕時計が5個になったな。出来心で買ったタケオキクチの手巻きの時計は8万くらいしたが、あとは全然安いのだけれど。ベルトの調整に少し時間をとったが、何とかつつがなく買い物は終わった。
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