情景描写の力/行動的で裸族/諏訪と鎌倉
Posted at 11/10/21 PermaLink» Tweet
【情景描写の力】
毎日思考や執筆の資源を創作の方につぎ込んでいるためにブログの方はなかなか書けないのが現状なのだが、なんだかんだ言ってもブログは読む人を意識するその意識の仕方が創作とは違うので両立するのは難しい。ということでしばらくは生活記録の域を出ないような記述が続くことになりそう。
創作のことを考え始めると本当にすぐ時間が経ってしまう。ブログを書くのもけっこう時間がかかるが、創作の方は書きだすと時間が10分単位で矢のように走り去って行ってしまう。いま30分くらいあるからちょっと書こうと思っても、情景描写を考えて少し書いたら終了、という感じになる。逆に言えば書いている自分としては相当充実しているということになるんだろうけど。最近時間が経つのが早い。逆に疲れたなと思ってふっとひと寝入りして慌てて起きたら10分しか経ってなかったとか、そういうこともよくある。創作をはじめると時間の流れと自分の意識の流れが遮断される傾向はあるようだ。大人になってから、時計をにらみながら仕事をすることが多くなったので意識の流れはたいてい時間をどこかでフォローしていることが多かったし、そこから切り離されてしまうことにある種の恐怖を感じるようになっていたのだけど、創作のときはふっと別の流れに乗れるし、それにこわくない。何か不思議なものだが、創作している時自分はこの世の流れの中にないんだなと思う。
書きあぐねている人のための小説入門 (中公文庫) | |
保坂和志 | |
中央公論新社 |
設定はたくさん考えたのだけどなかなかストーリーが思い浮かばず、いくつかのストーリーを候補にしてまず書き始めることにした。それなりに煮詰まっていたのか情景は書けて行く。場所が設定できたのがよかったのだろう。いい場所が決まると、その情景描写の力でその「小説」が立ちあがってくる。保坂和志が『書きあぐねている人の小説入門』で書いていたことが、読んだ当時はよくわからなかったのだけど、最近はよくわかる。志賀直哉について書いた本を読んだとき、彼を絶賛する気持ちも、つまりは情景描写の楽しさ、その力を彼ほど持っている人はなかなかいないという点で、分からなくはないと思った。徹底して情景描写を練習する、というのはそういう意味で小説を書く上では絶対力になると思う。そして情景描写というものには本当に個性が出るんだよなあ。今思い浮かぶのは『きことわ』なんだけど、あれなんかはうまいとは思うが何かもたもたしていて、私の読みの生理的な部分にあまり素直に入って来ない。ただそれでも描写自体にすごく感動的なところがあって、縦のものを横にするというか、空間的広がりの描写を文章という時系列に従属するもので表現するそのことにやはりある意味文章芸術のすごく大きなポイントがあるという保坂の主張を自分が書きながら確かめている感じがする。
きことわ | |
朝吹真理子 | |
新潮社 |
【行動的で裸族】
GIANT KILLING(21) (モーニングKC) | |
ツジトモ | |
講談社 |
10時過ぎに出かけて書店へ行って本を物色していたら『ジャイキリ』の21巻が出ていたので手にしたら、すぐ隣に鶴田謙二の新作が並んでいて、まあ一も二もなく買った。五十嵐大介の線に似ているかな、とちょっと思ったけどやはり鶴田謙二は鶴田謙二だ。主人公は例によってエマノンみたいな美少女で、行動的で裸族的だ。裸のときのおなかの線や背中の線を描くのが好きなのかなあ、といつも思うのだけど、この人の絵はいい。寡作で知られているこの人が講談社から本を出していて驚いたのだが、アフタヌーンに掲載された作品らしく、確かにアフタヌーンぽいと言えなくはないなと思った。『冒険エレキテ島』第1巻。ジャイキリもこれも一気に読了した。面白い。
冒険エレキテ島(1) (KCデラックス) | |
鶴田謙二 | |
講談社 |
【諏訪と鎌倉】
書店を出たあとまた諏訪大社上社前宮に参拝。今日は落ち着いたたたずまいだった。お宮の前を通っている鎌倉道というのを少し歩いてみる。鎌倉時代、諏訪大社の大祝は鎌倉幕府の御家人でもあり、幕府に仕えたあと諏訪に戻って大祝になる、という形だったと読んだことがある。関東にはあちこちに鎌倉街道や鎌倉道があり、「いざ鎌倉」の言葉の通り一朝ことあったらその道を騎馬で御家人たちが鎌倉に駆けつけたわけだ。幕府の御家人で北条氏の御内人でもあった。得宗被官として権力の中枢にいたこともある。そうしたあとの諏訪の地に帰って神官になったわけだから、諏訪と鎌倉の結びつきは現代思われているよりもはるかに強かったわけだ。牽強付会になるかもしれないが、諏訪出身の私が鎌倉にどこか心ひかれるものがあるのは、そういう地や土地の力なのかもしれないと思った。
ああ、生活記録のみと書いたわりには書いたな。こういう小説論的なことは思ってることがだんだん溜まって来るので書くことはあるかもしれないな。
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