山川賢一『成熟という檻 魔法少女まどか☆マギカ論』/沼田やすひろ『「面白い映画」と「つまらない映画」の見分け方』
Posted at 11/09/28 PermaLink» Tweet
【山川賢一『成熟という檻 魔法少女まどか☆マギカ論』/沼田やすひろ『「面白い映画」と「つまらない映画」の見分け方』】
昨日帰郷。少し自重して、バスに乗って駅に出た。普段は団地の中を横切って行くのでバス通りを通らないので、久しぶりにバス通りの景色を見ていたら、運転免許試験場の交差点のところにローソンができていた。最近新しいコンビニが多い。それも小規模な店が多い気がする。小規模多店舗展開になったのだろうか。たまにはバスに乗ってみるのも発見がある。
成熟という檻 『魔法少女まどか☆マギカ』論 | |
山川賢一 | |
キネマ旬報社 |
少し早めに大手町について、丸の内丸善で本を物色。紹介されていた山川賢一『成熟という檻』(キネマ旬報社、2011)と、amazonのサイトで「これも買ってます」欄に出ていた沼田やすひろ『「面白い映画」と「つまらない映画」の見分け方』(キネマ旬報社、2011)の二冊を買った。特急の中で『成熟という檻』を少し読み、帰ってから『見分け方』を一気に読んで、今朝は『成熟という檻』を一気に読了した。
Comic ZERO-SUM (コミック ゼロサム) 2011年 11月号 | |
一迅社 |
読み終わってから車で出かけて『コミックZeroSum』を買いに行き、帰ってきて読む。この号は巻頭カラーの「拝み屋横丁顛末記」がまず面白い。それから「Landreaall」を読んだが、またまた傑作。スレイファン卿との王位および継承権放棄についての会話も面白いが、花冠の乙女をめぐる騒動が勃発しそうな勢い。婚約者のいる(DXは知らない)ディアに対する思いの背中を押すのがDXが一番苦手な竜葵だというのも可笑しいし、全く次回への期待は大だ。毎月、読み終わったらすぐ次号を読みたくなる。子どもの頃、小学館の『小学2年生』とかの連載マンガに思った思いとおんなじだ。これはホントによくできてるなと思う。
キネ旬総研エンタメ叢書 「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方 | |
沼田やすひろ | |
キネマ旬報社 |
以下、まど☆マギに関する評論二本について。いちおう物語の核心に関わりがあることも書くので未見の方はご注意。メインページをご覧の方はこの先はRead Moreをクリックしてください。
『見分け方』は映画を、というより「物語」のあるものは何でもを、分析する上での基準を示していて、とても参考になる。私はドラマ作りにおいてこういう教科書的なものを今までちゃんと読んだことがない(「小説の書き方」的な本はけっこう読んだ)ので、こういう「型の力」みたいなものを示してくれる本はたいへんありがたい。自分の作ってきた物語をそれに当てはめて考えてみると、なるほどこういうところが足りないのだなとか、こういう指摘はその通りなんだなということがよくわかる。また、『千と千尋の神隠し』や『魔法少女まどか☆マギカ』の構造分析などもしていて、見落としていた側面などをフォローアップしてくれているのでだいぶ理解も進んだように思う。1話を実質20分として12話では全部で240分、4時間ということになるか。そんなにすごく長くは感じなかったけど、取りあえず『風とともに去りぬ』を全部見直すくらいの時間はかかる。自分が次に物語を作るときにこの法則に従うかどうかはともかく、この観点から見たらどのような内容になるのか、考えてブラッシュアップするのには使えるなと思った。この本に関してはまた何か書くかもしれない。
『成熟という檻』は『魔法少女まどか☆マギカ』を作者の視点からさまざまな先行する作品群の中から読み解こうという試み。『見分け方』でも70~80年代SFへのオマージュとしての「まど☆マギ」という視点で読んでいて見事に納得させられる一面があるのだが、一方で象徴表現からの読み取りが多く、特に最終回などは自分がだいぶ見落としがあるなと言うことを気付かされたのだが、『成熟という檻』での結論の付け方はかなりきれいに決まっていて、(理の存在であるきゅぅべえを肩に、正義の人であるまどかのリボンをし、まどかの武器である弓矢を用いて、愛の人であるほむらが戦うという三位一体の成立)なるほどと思わされるところがある。
なるほど、暁美ほむらというのはあかつきの美、つまり明けの明星であり美と愛の女神でもあるビーナスと、愛の炎を表した名前なのかもしれないと思った。鹿目まどかは円環の理と、物語の要(かなめ)ということを表しているんだろうけど。弓矢だからアルテミスと関係があるかな。まあその辺はもっとちゃんと分析しないと何とも言えないけど、そんなに厳密でもないかもしれない。
ただ私に印象的だったのはそういう読み解きの際に引用されて出て来るさまざまな先行作品たち、小説や映画やアニメなどの解釈も含めてで、特に私は90年代以降はほとんど映画もエンターテイメント小説もアニメも見ていないので作者の紹介するようにしか理解はしていないのだけど、たとえば最終回のまどかの選択を『新世紀エヴァンゲリオン』でのシンジの選択とそしてラスト二回の物語自体の崩壊とともに論じているところで、「権力者」である父によって「強いられた選択」であったものがシンジにとっての「自発的な選択」になることを嘘くさいと感じて物語を壊してしまったエヴァと、「権力者」であるインキュベーターによって強いられた「魔法少女になる」という選択を「希望を呪いで終わらせない」というインキュベーターたちの枠組みさえ超えた、世界を変える選択をしたまどかという形で対比していることで、なるほどそういう物語であるならばどうにも嫌いで見ることができなかったエヴァも見る見方が自分の中にできそうだなということを感じたのだった。
考えてみれば、何かを嫌うということは、そこに何かの理由があるはずなのだ。理由、というか、もう一歩踏み込んで言えば何か私自身の「問題」があるはずなのだと思う。ということはそこに創作の源泉もあり、あるいは考えて行くべき、ないしは越えて行くべき何かがそこにあるということでもある。それは魔女を倒して得られるグリーフシードのようなものかもしれない。それによって得たもので自分の中のたましいの濁りを浄化する。ソウルジェムの輝きが取り戻される、ということかもしれない。霊肉二元論で言えばもともと人間は魔法少女のようなものとも言えなくもない。
私がエヴァンゲリオンを嫌いなのはそこに父との間の問題があるからであり、また安室奈美恵が嫌いなのはそこに男女関係上の問題があるからであり、尾崎豊が嫌いなのはそこに友人関係上の問題があるからなのかもしれないなと思った。その分析はまだ全然してないので思ったことを書いているだけなのだけど。
あ、この文章未完成だな。でも時間がないのでちょっと中途半端だけど今日はここで。
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