『ブレイブ・ストーリー』上巻読了/磯崎憲一郎の面白さは何だろう/磯崎作品と自分の作品
Posted at 11/09/03 PermaLink» Tweet
【「ブレイブ・ストーリー」上巻読了】
今日は朝からずっと雨。いろいろ気にかかることもあって気分がくさくさしていたりして、ぱっとしないんだけど宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー』、上巻は読了した。最初はどうなるかと思っていたけど、だいぶ面白くなってきた。でも現実世界から幻想世界へ行く必然性が強すぎてなんか胸が痛い。そこまでやるのがいいのかどうかと思うと同時に、必然性が強すぎると逆にそこでスタティックな構造になって発展性がなくなってしまうのではないかということも考えたりする。私はナルニアみたいに偶然そっちへいってしまったけど実は意味があったんだよ、というような柔らかいファンタジーの方が好きなのだが。でも知っている子供たちでも結構『ブレイブ・ストーリー』は読んでいる子がいるみたいで、現実世界の離婚とか子殺しとかいじめや暴力の問題とか、多分子供は逆にあんまり深刻に受け止めないのかもしれないなあという気はする。自分が子供の頃、離婚なんてなんだかよくわからなかった。自分の親に起こりそうにはなかったし。大人になって自分が離婚を経験してみると、私には子供はいなかったけどもうあんまり経験したくない経験ではあったから、慮れるだけに重くて辛くて困ったのだけど。多分子どもはそうでもないんだろうな、自分の身に起こった経験がある子以外は。
【磯崎憲一郎の面白さは何だろう】
私は磯崎憲一郎は芥川賞をとったときにそれまで出ている作品は全部読んで、このあたりに感想を書いているのだけど、昨日こちらの文章を読んでとらえ方が全然違っていて面白かった。私のとらえ方は、「”われわれの世代”の感覚」が切り取る世界の面白さという感じなのだけど、Howard Hoax(ホワホアと読むのか?)氏はもっと世界文学史的な大きな流れの中でとらえていて、小説の「あらゆる対象を言語化するアナーキーさ」を極北まで発揮させたもの、という感じのとらえ方をしている。まあ私は基本的に何でも感覚でとらえてしまうが、まあ美術とか音楽とかを考えてみると油絵は全てを油絵の具で均質化するし音楽は全てを音で均質化するわけだから一体何が違うのかどうも私にはよくわからない。いやこれは批判ではなくて、本当によくわからないのだ。
もちろん絵画も古くは物語を表現するものであったし、音楽もまたそうだ。しかし現代絵画は必ずしもそういうものではないし、タッチのみを見せる作品もあれば、音楽では沈黙を聞かせる作品だってあるわけで、そのアナーキーさの本質と小説のアナーキーさの違いというものがどうも腑に落ちない。
まあそれはそれとしてそう考えてるんだなあと思って先を読むと、「言語によって表現された全てが融解して一元化する光景こそ、磯崎憲一郎の小説における特権的な瞬間である。」というくだりが出てくる。この表現を読んで私が思い出したのはモネの『印象・日の出』であって、そう考えてしまうと何が新しいのかよくわからない。それがわからないから何が面白いのか、何が魅力的なのかもよくわからない。
まあ大体私は『赤毛のアン』のどこがいいのかよくわからない人なので、(その大半の理由はほとんどまともに読んでないからだろう、中学校のときに国語の教科書に出てきたもの以外ちゃんと読んだ記憶がない。少年少女文学全集モノで多少は読んだことがあるはずなのだが)文学系の人たちが感心することってぴんと来ないことが多いから、なんかピントを外してるんだろうと思うのだけど、磯崎憲一郎は面白い、ということを認めている以上の共通点がない。
【磯崎作品と自分の作品】
というのはまあ私のブログを読んで磯崎を読んだ人から全く面白くなかったという苦情をもらったことがあるからで、まあこれは正直そう言われても困るのだが、私は面白かったとしかいいようがない。ただその人から私のとある作品(当時は『使命』と題をつけたが今は『コクーン』と改題してある)が『終の住処』にすごく似ているといわれたことがあるので磯崎のことはずっと気になってはいる。時期的には私の作品の方が早いのだけど、中途半端な長さであるのと誰に読ませてもあんまり好評ではなかった(面白いと思う人もいるのではないかとは思うが、という評)のでお蔵入りにしてある。まあ多分視点はぜんぜん違うのだけど、まあそういう磯崎方面の文体で書くことは多分そんなに難しくない。今は子ども向けのファンタジー方面に作品の方向性が向いているが、これを読んで磯崎的なものもまた書いてみようかなというふうに思った。多分そういう方が自分にとって自然に書けるとは思う。ただ面白くないといわれると何を求めて書いたらいいのかわからなくなってしまって自分なりの基準がもてないでいるのだ。
このブログの文章の文体で、「言葉が思いに食い込み、思いが言葉に食い込む」的な方向で書いてみるのもいいかなとは思った。でも今書いた通り、何が実現されるのかがよくわからないので、自分でその作品の良し悪しが測れる自信がない。まあでも何度もトライしてみて、やはり感覚的な話になるけど、より「面白い」と感じる表現を取っていくしかないんだろうなと思う。
ファンタジーは書いていて楽しいし、明るい気分になれるから好きなのだけど、なかなかネタが出てこないというのも事実。まあしょうがない、一発堂々巡りの、何の救いもない話でも書いてみようかな。でもなんだか笑ってしまうようなモノを目指して。
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