丸の内SATND Tにて/五十嵐大介『海獣の子供』その2
Posted at 11/08/02 PermaLink» Tweet
【丸の内STAND Tにて】
昨夜、寝たのは多分2時半くらいなのだけど、今朝は6時前に目が覚めて、それでもかなりしゃきっとしている。十分寝た感じがする。でも今暖かめの風呂に入れば、きっとぐでっとしてしまうのだろうなと思い、風呂に入る前にブログを書いている。モーニングページは6枚ほど書いた。書こうと思えば書くことは多分もっとたくさんあるのだけど、書くというレベルでないところの記憶が多く、いつか思い出したら断片的に書けばいいやとも思う。
昨日は結局夕方まで出かけないでさてどうしようかと思っていたところにお誘いがあり、丸の内に出かけた。丸善カフェで軽くジントニックでもと思ったが混んでいたので新丸ビルのSTAND Tでビールということに。普段ネットでやり取りしている方ということもあり、最初から割りと突っ込んだ話に。楽しい話になってあっという間に3時間以上たち、10時半まで話し込んだ。丸善カフェへ行っていたら9時終了だったから結果的にはこちらにしてよかったかなと思う。東京駅で遅くまで混んでいるところなんてあまり知らなかったし、いつもここに寄るときは軽くビール一杯飲んですぐ帰るというパターンだったので、こんな時間まで結構たくさんの人が来るんだということを知らず、それも面白かった。周りには結構外人とかもいたし、東京の真ん中っぽくてよかった。東京の真ん中なんだけど。
本当にいろいろな話をして、ふうんとかへえっとか思いながらずっと話をしていた。私は割りと普段では焦って自分の話しをすることが多いのだけど、ネットで知り合った人と会うときは大概このブログを読んでくれている人なので、こっちの話はそんなにしなくていいやあという気持ちになれるから、余裕を持って話を聞ける。なんと言うか私は昔から聞き役に回ることの多いタイプで、だから飲みながら話をしていても自分の言いたいことが言い切れなかったとあとでフラストレーションがたまることが多く、でもだからこそ多分こんな膨大なブログを書く下地が形成されたのだと思うけど、だからこういう部分を読んでもらっているということは自分で話さなくてもまあいいだろうと思ってそのときそのときの関係性に身を委ねて話を聞いたりしたりできるので楽だなと思う。いやネットがなければこんな風に話を聞けたりしなかったかもしれないし、なんかありがたいなと思う。
私とは1世代違う方だったので、同時代的な感覚の違いというのがやはり面白いと思ったのだけど、ひとつ例を挙げるとチェルノブイリの認識で、あれは私が24歳のときのことだったから自分にとって原発というのは明らかに危険なものであったし、それに依存した生活を送るということはある意味「板子一枚下は地獄」的なものだと思いつつみんな平気そうだしまあいいのかな的な感じで思っていたから、福島のことも起こるべくして起こったというか、ああ起こっちゃったよ的な感じが半分はあったのだが、考えてみるとチェルノブイリも四半世紀前のことで、みなが同じ感覚を共有しているわけじゃないんだなと改めて思った。25年って過ぎてしまうとあっという間なんだけど、誰にも同じ意味を持つ年月ではない。24歳からの25年と、12歳からの25年ではぜんぜん違うんだよなと思った。当然、60歳からの25年もまたぜんぜん違うわけで、同じ出来事でもその消化の仕方とか風化の仕方とかが本当に人それぞれで、まあ理解を共有するとか言うこと自体がある種の絵空事だなとは思うのだけど、でもやっぱり絵に描いた餅は餅として必要なんだしなとか、まあそのときはそこまで考えなかったけど、でもまあ世界ってだからこそポリフォニックで面白いともいえる。永遠の輪唱、永遠に続く変奏曲。
なんというか話していて、異界に対する感性がみずみずしくてすごくいいなあと思った。『海獣の子供』をお勧めいただいて読んでいるのだけど、すごくその世界と直列になった世界が見えてきて、とても気持ちのいいものを感じる。文学に対してもすごく広がりのある感じ方がああこんな感じ方なんだなあとその感性を味あわせていただいた感じがする。
というか、私は人と話しをするときって結局そういうところにしか焦点があってないんだなと思った。その人にはその人にしか感じられない世界があって、私はその感じを感じるのがすごく好きなんだなと。だからそういうところの感性を開放していない人と話しているとだんだん鬱屈してくるというか、もっと違う人生の送り方があるんじゃないのという気がしてくるのだなと思う。
いろいろ話をしたことのイメージがすごく鮮明に残っていて、でも記憶とか言葉とかそういうものとしてであるかどうかはよくわからない。なんというか感性を開いて話を聞いていたのである意味反応が鈍かったりしたんじゃないかと思うけど、開いて入ってくる光を自分の中で反射させてみて、その全体としてその人のイメージを受け取っているんだなと思った。深い井戸の底にいると昼間でも星が見えるというけれども、多分そんな感じなんだと思う。
ま、いろいろ書いたが、本当に大事なことは心の中にしまっておくわけですが。楽しい時間でした。
【五十嵐大介『海獣の子供』その2】
海獣の子供 2 (IKKI COMIX) | |
五十嵐大介 | |
小学館 |
第二巻読了。世界が深まってきて、世界中の海のどこへでも通じている、深層大循環に入ったような感じ。これは物語というものなのか、もっとほかのものなのか、確かに語られてはいるから物語なのだろうけど、普通の意味のストーリーというには本質論過ぎる感じもする。なぞを探っていくという意味ではある種のミステリーなのかもしれないし、突き動かされる何か、突き動かす何かと主人公の琉花が同化していき、世界そのものとして呼吸しているような感じがする。
Wikipediaによると、五十嵐は常に少女・女性を主人公にし、想定読者は常に女性だと言っていて、へえっと思うのだけど、すごくそう思って読むと読みやすいというか入って来やすい話だなと思う。私はなかなか女性が主人公というか、主人公はともかく語り手が女性という話は難しくてうまく書けないのだけど、やっぱり男に見えている世界と女に見えている世界は違う感じがするし、女を主人公にすることによってしか見えてこない世界というのはあるよなと思う。『トトロ』とか『千尋』とかでも少女が主人公だからこそ見えてくる世界だなと思うしなあ。一度そういうものが書けるようになったら、きっと面白くて仕方ないんだろうなと思う。
でもだからこそ『ラピュタ』が貴重なんだろうなと思う。普通の男の子が主人公、あるいはその視点から書かれている話はラピュタとポニョくらいしかないが、ポニョはまあエキセントリックというかイデオロギー性が強すぎるというかなので、男の子の冒険を形にしたのはラピュタだけだろう。世界を感じられるのは女の子を主人公にした方だと思うけど、世界を変えられるのはむしろ男の子を主人公にした方になるんじゃないかな。いや、世界を救うなら『ナウシカ』かもしれないけど。話が宮崎化したが、まあでも女の子を主人公にして書けるというのはうらやましくもあり、えい、という感じだ。
もうひとつああいいなと思ったのは、隕石を飲み込んだ琉花の首筋に蕁麻疹のような吹き出物ができて、「心でも体でも受け止め切れない過剰な分が、そういう形で吹き出している」というくだり。こういう身体性って普段感じていることなのに、ストーリーの中には生かせてなかったなって思って、私も書かなきゃ、って思った。
ああでもこういうことを考えているとどうしても昨日の夜の会話のことを思い出してしまうのだけど、私より血や肉に近いところになんだか名づけようのないものを持っている人と話していると、あるいはそのことを思い出していると、自分の中から吹き出てくるものがあって、楽しい。今3巻の197ページ。最後まで読んだら、発行中のIKKIを毎月読むようになるのかもしれないなあ。
海獣の子供 3 (IKKI COMIX) | |
五十嵐大介 | |
小学館 |
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