今日は友引/畑村洋太郎『未曽有と想定外』/書評は何を目指すべきか
Posted at 11/07/27 PermaLink» Tweet
【今日は友引】
何となく涼しい日が続く。曇ったり雨が降ったり。昨日は10時まで仕事。今朝は草刈りをしてたら近所のおばさんに話しかけられて少し仕事ができたり、家の方の用事があったり銀行に行ったり何やかやと仕事があった。帰ってきて一休みしてぼーっと考えていると小説の断片的なものが少しずつ出てきたりはしたのだけど、これで一本書ける、というような輪郭のはっきりしたものはまだまだこれから。ただ題名としていいなというのは思いついたので、それが使えるかどうか。長いものを書くとアイデアもしばらく出てきにくくなったりするけど、何となく心の中にみずみずしいものが戻って来たのでそういうものがいろいろなものを集めてきてくれるといいなと思う。今日は友引。仕事だとか近所のおばさんだとかそういうものも引きつけてしまっているのだけど、小説のアイディアも何となく磁石のように集まってきていて、面白い日だと思う。
昨日はビックコミック、今日はスーパージャンプを買った。どちらもだんだんある種の傾向が出てきて、読みたい雑誌の範疇から外れて行っている感じがするのだけど、でも読みたい作品は載っているので、どうしたものかなと思う。単行本で買おうというほどのものはスーパージャンプの「バーテンダー」と「王様の仕立て屋」「ごっこ」くらいで、まあ「ちゃりこちんぷい」は買うかもしれない。でもまともに読んでない作品がどちらも結構多くて、ちょっとお金も雑誌を置いておくスペースももったいない感があって考えてしまう。
【畑村洋太郎『未曽有と想定外』】
最近買った本について書いてなかった。月曜日に買ったのが畑村洋太郎『未曽有と想定外』(講談社現代新書、2011)。これはまだ読んでいない。ただ、失敗学という視点はこれからの科学・技術にはなくてはならない視点ではないかと思っている。実際に彼がどういう視点なのかは読んでみないと分からないのだけど。
未曾有と想定外─東日本大震災に学ぶ (講談社現代新書) | |
畑村洋太郎 | |
講談社 |
【書評は何を目指すべきか】
もう一冊が火曜日に買った豊崎由美『ニッポンの書評』(光文社新書、2011)。この本は36/210ページまで読んだ。しかしどうも、書評というものについての考え方がどうも私とは合わない感じがする。この人の文章とか発言というのはどうも自分の琴線には触れて来ないのだけど、でもなんとなくあちこちに書いているので一つのメジャーな考え方なのかなと思って理解しようとするのだけど、どうも肌に合わない感じがしてしまう。どこが合わないのかまだよくわからないのでうまく書けないのだけど、またその辺は分かったら書こうと思う。
ニッポンの書評 (光文社新書) | |
豊崎由美 | |
光文社 |
一つ言えるのは、私は書評というのは基本的には面白い必要はない、と言えばいいのか、知識をひけらかす必要もないし、ふざけて調子に乗った文章を書く必要もない、と思う。その本を読んだ人がこの本のどこに感銘を受けたのか、この本を読んで何を得たのか、そういうことが正直に書かれていれば十分だと思う。つまり、この本を読んだら何が得られるのか、ということが分かればいいということだ。
しかしそういう書評では商売にならない、という主張もあるだろう。プロにとってみたら読んで面白くなかった本だって書評は書かなければいけないかもしれないし、自分が得たものがレベルの低い下々の読者たちには理解できないだろーなーとか思うこともあるかもしれない。プロにはプロなりの苦心というのがあるだろうというのは分からないことはない。
しかし読み手にとってみれば、そんな浮世の義理とかしがらみみたいなことは全く関係のないことなのだ。この本を自分が読む必要が、読む価値があるかどうかを知りたい。それだけが書評に求められることなのだから、余計な芸とかはある必要がない。必要があるとしたらそれは熱であって、その熱によって自分の持っている技をすべて披露せずにはいられないというような書評であれば、その書評は素晴らしいと思う。
私が読んだ中で一番印象に残っている書評は、呉智英の『読書家の新技術』に引用されていた足立巻一『やちまた』の朝日新聞の書評で、呉智英はその書評を読んですぐにこの本を買ったというが、私もそれを読んですぐに買って、ものすごく面白かった。この地味な感じの本をどのように手に取らせるかということに、作者は自分の持っている芸のすべてを費やしているのがよくわかる文章で、そういうものなら芸をみたいものだと思う。そうでないところで変な芸を見せられても読む方の時間の無駄だ。
インターネットの書評が大流行りで、一方では新聞や雑誌にもさまざまな書評が掲載されているが、どちらの方が役に立つかというと、それは必ずしも限らない。それは、書評の読み手の側が必要とする情報が千差万別であるからで、むしろネットの素人書評の方がその人の望んでいるものにジャストである場合は少なくないからだ。この場合の素人というのはその書評でお金を得ていないという意味に過ぎず、けっこうその筋の専門家だったり幅広い読書家だったりするから当然書いていることも的を射ていたりする。また、特に匿名書評であれば遠慮なく書けるし、読みたくない本の書評を書いたりする必要もないわけだからいつも読みたい本を読んでいる喜びをその書評から感じることさえできるわけで、そういう意味では必ずしも読みたくない本を読んで媒体にさまざまな制限をくわえられて書いているプロの書評よりも面白いことがあっても全然おかしくない。
私などが書いているのは感想文だか書評だかよくわからない文章で、自分が思ったことしか書いてないし、読んで面白いと思ったことしか書いてない。その辺プロの書評とは全然違うけれども、一応自分という人間がこういうところを面白いと思い、こういうところに感動したということが書かれていれば、なるほどそうかと思って読んでみようと思ってくださる方もいるようで、そういう意味では作者の役にも読者の役にも立っている部分もあるのかなあと思っている。
最も肝心な情報は、「この本が面白いか面白くないか」だ。そこをはっきり書けないのが逆に言えばプロの書評の一番の弱点でもあり、膨大なネット書評の強みでもある。プロの側は「面白か面白くないかを書くのはルール違反だ」というかもしれないが、そんなものは正直言って「出版ムラのルール」であって、「美味しいと言えないテレビのグルメ番組」よりも正直な感想が書かれた「ぐるなび」とかの方が頼りにされてしまうのと同じことだ。そういうことを考えると、これだけネット書評が全盛の今、プロアマ問わず書評がこれからどこへ行くべきかというのはかなりシビアな問題なのかもしれない。
書評というものは、絶対に必要だと思う。読書家は、目を皿のようにして面白い本を探している。その時、頼りになるナビゲーターは間違いなく書評であって、書評家の面白い本を見抜く眼力やそれを紹介するテクニックはこれからも重要であることに違いはないだろうと思う。
だから問題は、書評をめぐる制度にあるのかもしれない。その制度が変わらないのであれば、プロの書く書評はますます独りよがりのものになり、自由なネットの書評の方がはるかに役立つものになってしまう可能性がある。ネットの書評は、明らかに無償の情熱に支えられている。その無償の情熱に勝てる技を存分に発揮しうるためには制度の問題は大きいのではないかと思う。まあそうなると書評の問題だけではなく、出版全体を視野に入れたもっと大きな話になって行くのだろうと思うけれども。
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