弱冷房車を増やしてほしい/なりたい自分になるためには/才能ってなんだろう
Posted at 11/07/13 PermaLink» Tweet
【弱冷房車を増やしてほしい】
昨日帰郷。特急の中が寒くて死ぬかと思う。寒いのでじっとしていると余計寒くなるという感じだ。途中で一度トイレに立ったら、デッキの部分は冷房がきいてなくて、かなり助かった。最近鉄道会社は冷房温度を元の設定に戻しているらしいが、何とか頑張ってもっと冷房を弱いままにしておいてくれないかと思う。というかもし苦情が多いようなら、何とか弱冷房車を増やしてもらえないものか。熱中症被害が報道されるのもいたしかたないところだが、冷房をあまり必要としない人がいるということももっと声を大にして言っていいことではないかという気がする。
【なりたい自分になるためには】
僕はいかにして指揮者になったのか (新潮文庫) | |
佐渡 裕 | |
新潮社 |
佐渡裕『僕はいかにして指揮者になったのか』(新潮文庫、2010)読了。これは本当にいい本だった。声を大にして多くの人に薦めたいという感じ。佐渡という人の人間性も素晴らしいと思うし、チャンスをつかんで行くときの過程、その時の考え方、どれもきらきらしていて感動する。それも、誰にも真似できないとかそういうことではなくて、これをこうしてみたら自分も前向きにできるんじゃないかと思えるようなヒントがたくさんある感じがする。『僕はいかにして指揮者になったのか』という題もいい。人はなりたい自分になる、ことを目指して努力をするわけだけど、「指揮者」のところをその人のなりたいもの、あるいはなりたい状態に入れ替えてみれば、そうなるためにはどんなふうに考えればいいのかということが見えて来るように思う。
昨日読んだところ以後、印象に残った所。表現にはいろいろあるけれども、ある意味どれも共通している、と彼は言う。指揮者も画家もそれなりの技法は必要だが、「そこに音楽を愛する心、絵を愛する心があって初めて、哀しみや喜びを伝えることができるのだと思う。その意味で、音楽の中には指揮者の人間性が、絵の中には画家の人間性が現れてしまうのである。」これはあまりにストレートなことを言っているのだけど、それだけに唸らされる。小説を書けば、そこには作家の人間性が現れてしまうわけだな。心して書かなければいけないと心が引き締まる。
また彼を訪ねて来るファンにもいろいろな人がいて面白かった。演奏会が終わると必ず楽屋に立ち寄り、その日演奏された曲の譜面を持ってきて、「ここにサインしてください」と言うのだそうだ。ブラームスの1番を振ったとき、そのおじいさんの持ってきた譜面を開くと、譜面の至る所に今までブラームスを振った指揮者のサインがあったのだという。「僕は、こういう楽しみ方もあるんだなと感心したことを覚えている。」という。これは本当に上質な楽しみ方だなあと感心した。その譜面は、本当にその人の宝物になるだろうし、またすごく貴重な譜面にもなる。友達以外のステージで楽屋を訪ねたことはないけれども、こういうのはいいなあと思った。
【才能ってなんだろう】
進路を選ぶとか、将来の夢とか、そういうことについて考えていた。そういうことをテーマにした作品を書きたいと思っていたからなのだけど、いろいろ考えていて、それは結局なりたいものになる、なりたい自分になるためにはどうしたらいいかということかなと思うようになってきた。問題は、なりたい自分がどんな自分なのか、なりたいものが何なのか分からない、という状態、あるいは、なりたい自分になることをあきらめてしまっている状態であるけれども、まあそういうキャラクターもまた設定してみてもいいかなとか思う。
なりたい仕事につく、というときに問題になって来るのが、能力とか才能とかの問題だ。人には明らかに才能の差がある。どちらの方向の才能なのかとか、どの大きさの才能なのかとか、あるいは人間としての力量の大小とか、人によって全然違う。じゃあ才能ってなんだろうと考えてみる。私もそうだけど、本当にこの「才能」という答えの出ない問題について悩んだことのある人は多いと思う。いまそういうものについて作品を書くという観点から考えてみて、たとえばこんなふうに考えていいんじゃないかと思ったのは、才能=素質×教育(訓練)×情熱、と言えるのではないかということだ。と書いてみてまた思ったが、これは順番を入れ替えた方がいいかもしれない。才能=情熱×素質×訓練だと。つまり、もとになるのは情熱なんじゃないかということだ。それがあって初めて素質があり、そして教育がある。情熱というのはつまり、「それが好きだ」ということだろう。右カラムにある本でいえば、「ずっとやりたかったこと」つまり「やりたいと思い続けていたこと」あるいは「やりたくなくなったことがないこと」こそが「やるべきこと」、情熱がすべての原点なのではないかと思うのだ。
そしてそれに気がつくためには、まず「出会い」がある。子どものころから自然にそれに出会い、吸収して行き、大人になってもそれを続けるというのはひとつの幸福な理想だけれども、世の中そんな人ばかりではない。子どもで出会うこともあれば小学生のとき、あるいは中学生のときにはじめてであったサッカーに魅せられる人もいるし、高校のときに数学や歴史の面白さに目覚める人もいるだろう。大学で芝居にはまる人もいるし、就職してみて営業職や事務職が面白いと思う人もいるだろう。お金の運用をしてみてこれこそ自分の求めるものだと思う人もいれば、40になって俳句に出会ってこれこそが自分の情熱をぶつけられるものだと思う人もいるかもしれない。「出会い」はいくつでも遅すぎない。
まあ理想論と思われるだろうが、もしあらゆる人が自分が情熱をぶつけられることを仕事として取り組んでいる社会だったら、この社会はどんなに幸せだろうかと思う。またそういう人が増えたら、社会全体の雰囲気もよくなっていくのではないかなという気がする。
実際には「才能」とか「能力」という概念は魔物のようなもので、本当に多くの人を苦しめていると思う。でも結局、原点が「情熱」ということだとしたら、情熱がゼロの仕事をいくら努力しても成果が上がらないのは当たり前だということになる。改めて情熱をかきたてるか、違う仕事につくかしないと、壁を乗り越えることは難しいということになる。
ああ、考えること、いいたいことはいくらでも出て来るが、そんなまとめ方よりも作品の主調のようなものをどこかで見つけて来なくてはいけない。とにかくまあ、そんな感じのことを作品に書けたらいいなと思っているわけだ。
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