レディ・ガガと徹子の部屋/佐渡裕『僕はいかにして指揮者になったか』/「ライフ・キャン・ビー・ビューティフルや!」
Posted at 11/07/12 PermaLink» Tweet
【レディ・ガガと徹子の部屋】
ボーン・ディス・ウェイ (スペシャル・エディション(2CD)) | |
レディ・ガガ | |
ユニバーサルインターナショナル |
昨日はなんだかんだといろいろ落ち着かない感じがあった。今思い出したけど、ブログを書いた後少し町に出かけて銀行を回ったりお昼を買ったりしたのだった。昼過ぎに『徹子の部屋』を見る。昨日のお客さんはレディ・ガガ。ネットではずいぶん前から反響を呼び、私も録画をセットしてさらに放送時間にも見るという念の入れよう。あの服装と靴などは事前にネットでも話題になっていたのでことさら驚いたわけではないが、筋の通った表現者だなと思った。後でネットでまとめを見てみて、印象に残ったのが劇団ひとりの徹子とガガを見てると、俺達の言ってる個性って何だろうって思うよ。もっとやっていいんだな。。。というツイート。ほんとそうだなと思う。これは芸人だけでなく、一般の人にとっても、もっと自分を表現するということを考えるチャンスなのではないかと思った。
それから画像職人たちの仕事が速いこと。特にこちらの画像は私も気に入ったし大人気。レディ・ガガが人気があるのは、こういうキッチュなものを喜ぶ日本人的な感性にもあるよなあと思う。
また、彼女の髪の染め方という話題も面白く、ブロンドを基本にしてその上に色を乗せ、グリーンブロンドやパープルブロンドにするという話だった。そういう色のカラーリングはどうも日本のアニメの影響を強く受けているようだ。自分の持っているものをベースにさまざまな可能性を積み上げていく、その姿勢がいいなあと思う。
PV映像やコンサートの映像もYouTubeではかなり見たけど実際にテレビで見ると細かいところまでいろいろ見えてやはりいいなと思う。2年前は1200人なんて小ホールでやってたんだなあと思うと感慨深い。あまりに動きが早すぎて十分に自分のやりたい親密なファンとの関係とかが築けないというのが目下の悩みらしく、ネット時代の申し子というか、従来のプロモーションとはぜんぜん違うところから出てきた人だなと改めて思う。日本でもこういう人出てこないかな。
【佐渡裕『僕はいかにして指揮者になったか』】
元気な時代、それは山口百恵です 31日間の現在写真論 | |
篠山紀信 | |
講談社 |
そのあとしばらく考えたりネットをみたり本を読んだりして、大相撲を少し見た後、銀座に出かける。山野楽器でCDを見ていてそういえば朝日の書評欄でいつか見た佐渡裕の自伝本を買いたかったんだということを思い出す。教文館に行くが見つからず、ブックファーストへ。そこでも見つからなかったけど店員に頼んだら持ってきてくれた。それから写真集など見て、篠山紀信のエッセイ写真集が面白そうだったが、とりあえず買わず。ジョンとヨーコのダブルファンタジーのジャケット写真、篠山が撮ったんだとはじめて知った。
それから向かいのユニクロをちょっとのぞき、半袖の白いパーカーが気に入って買った。本当はもうひとつ、てろっとした素材のポロシャツが目に付いたのだけど、LとXLしかなかったので残念。昔なら買ったかもしれないが、最近はなるべくジャストサイズのものを買うように心がけている。昔から来ているものがオーバーサイズのものが多く、着る気がしなくなって困っている。
久しぶりにカフェ・ド・ルトンでワッフルが食べたいなと思い、行ってみるとお客は少なく、私のそばの席で出勤前のいわゆる「銀座の女」風の人がコーヒーを飲んでいたのが印象的。私は佐渡裕を読み始める。ワッフルもコーヒーも相変わらずおいしかったけど、何しろこの本がすごく面白かった。
僕はいかにして指揮者になったのか (新潮文庫) | |
佐渡裕 | |
新潮社 |
佐渡裕という人は1961年生まれだから私よりひとつ上。京都の堀川高校の出身だという。指揮科を出ずに、フルート科を卒業したのはある人のお告げ?みたいなものによるという話も面白いし、小沢征爾やバーンスタインとの出会い、ブザンソン音楽コンクールでの優勝と、駆け上がっていくところがすごく面白かった。途中で吹奏楽の指導をしていた女子高のコンクールでの評価が納得できずに審査員の顔にかばんを投げつけたというから熱血だ。このあたりの話はマジで面白い。現在184/260ページ。
印象に残ったところを書いておこう。ボルドーでアリシア・デ・ラローチャという70歳くらいのピアニストがモーツァルトのコンチェルトを引いたとき、「最初の音がポンと出た瞬間、その音があまりにも悲しく聴こえ、ポロッと涙が出てしまった。たった一音で感動したのだ。その音は、あまりにも美しく、あまりにも哀しかった。」のだという。このエピソードなど、佐渡の感性というものをすごくよく感じさせるとともに、実際そういうことってあるよなあと思う。その一音の美しさ。絵を見ていて、ある1はけのタッチに動けなくなるほど感動してしまうことと同じように、最初の一音にすごく感動してしまう。芸術というものの持っている全体的な力のすごさが、その一点に凝縮してしまうのだ。あまりに完璧な、天上の音楽のような一音。私も小説を書いていて、このフレーズはいいなと自分でしびれるときがあるのだけど、そういう時は最後までそのテンションが維持できずに困ったことになってしまうことが多い。ペース配分のようなこともあるし、村上春樹の言うように作家は体力をつけないといけないということもあるんだろうなと思う。まして音楽家は生で演奏するわけだからごまかしがきかない。
才能を確かめるために二年間勉強するという話に続いて、何かにこだわるより常に昨日までの自分の枠を取り外すことができるかを考えて行動するのが大切だという話が出てくる。どんなに地道に築き上げたことがあっても、いつもその世界からひとつ上の世界へと上がっていけるかどうか。このことについては私も最近いつも考える。自分の力をわきまえた上で、今までの作品でできなかったことに常にチャレンジしていく姿勢。それが生きることの喜びであり、音楽の喜びであるという。なるほどなあと思う。
ブザンソンの決選の前、うまくいかずに荒れていたとき、「本来の目的はコンクールで優勝することではなく、音楽をすることで、コンクール優勝に向けて目隠しなどせず、しっかり音楽をしいや」、という言葉を思い出し、それから音楽に真正面に取り組みなおして、オケのメンバーが佐渡のためにと必死になってくれたのだという。このあたり、「お前のために一肌脱いでやりたい」という人が次々現れる佐渡の人間的な魅力、音楽家としてのスケールの大きさというものを感じさせられていいなと思う。
【ライフ・キャン・ビー・ビューティフルや!】
それからバーンスタインの自家用ジェットに同乗したとき、バーンスタインが言ったという言葉も忘れられない。「すごいやろ、オレの人生は。でもな、…お前が、もし今のオレのような生活を自分もしたいと思うんなら、お前の人生も絶対に美しくなるで。大事なことは、それをお前が望むかどうかや。オレは、お金にはちょっとも興味あれへんけど、こういう環境の中で生きていきたいという欲求は人一倍強く持ってきたんや。ライフ・キャン・ビー・ビューティフルや!」
この話は本当にいい話だと思う。私も、何をしたいということよりも、どういう環境で生きていきたいということのほうが明確にイメージしやすい。何をしたいかということは、そのときによっていろいろあるから、今イメージしても仕方がない感じがする。でもどういう環境で生きていきたいか、ということはイメージできる。というか、バーンスタインのように生きられるとそりゃ最高だなあと思う。考えてみたらそういうことっていろいろ今まで読んだことがあったけど、もうひとつ具体的にイメージできたことがなかった。そのイメージを明確にしてそれに向かって努力していけたら、それは楽しいなと思った。
Life can be beautiful.座右の銘にしたいような言葉だと思った。
彼の経歴を考えてみたら、本当に雑草のようなもので、それが今年ついに最高峰、ベルリンフィルの指揮者を勤めたのだから本当に人生は美しくできるんや!という感じだなと思う。『題名のない音楽会』の司会をしていることくらいしか今まで知らなかったけど、注目していきたいなと思った。
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