ロングホームルーム/因習・低俗への怒り
Posted at 11/07/02 PermaLink» Tweet
【ロングホームルーム】
トンビがピンヨロロと鳴いている。川の流れる音が聞こえる。昨日降った雨の名残で水量が多いのだろう。池の水は減っていた。川からの取水口での水の取り入れの量が減らされたのだろう。昨日庭を掃除する人が来て、池の泥も浚ってもらったから、それで水かさが減ったように見えるんだろうなと思う。
今朝は、なぜかロングホームルームの夢を見た。クラスは教員を辞めたときの最後のクラスという設定だった気がするが、実際のクラスではない。知っている生徒が一人も出て来ない。つまり教室に行って出席を取ろうとしたものの、座席表もないし教務手帳(いわゆる閻魔帳)もないし生徒の顔も名前も分からない。今その風景を思い出してみても、実際の教室とは違う、なんか浮世離れした感じがあった。そこで出席を取ろうとするのだけど、名前も顔も全然わからない。それでも自分の担任のクラスなので知ってるふりをして空いている席を見て「ココ誰だ?」と周りの生徒に聞いたりしている。でも聞いた相手の生徒の顔も名前も思い出せない。生徒はみんなにこにこしている。男子も女子もいた。出席を取りながら、夢の中で実際の自分の教員時代に考えていたようなことを思い出してきて、担任のクラスなのに生徒の顔も名前も覚えてないなんてまずいとか、自分のクラスなら必ず座席表を貼ってあるはずだとか、そういうリアリティのなさのようなものも感じて、やはりどこか夢の中のような非現実さを薄々は感じていたように思う。
なかなか出席が取れないというのは変な夢なのだけど、でも実際私の勤めていた底辺校などでは、生徒を統制する力のない先生のクラスではそんなことはよくあることだった。私は基本的に恐怖政治かでなければ語りかけ路線で他のクラスの生徒が私のホームルームをのぞいて「宗教みたい」と言われたことがあるがとにかく取りあえず教室の中くらいは生徒をある程度は統御はしていたけど、夢の中では全然統制不能になっていて、こっちがこの席誰だっけ?と言っている間に生徒たちが勝手に机の上に椅子を積み上げて車座になって話していたり、勝手に教室を出て行って勝手に入ってきたりしているのだけど、なぜか私は全然怒る気にならなくて、そういう生徒たちを観察しながら「この席誰だっけ?」とか「君はなんていう名前だっけ?」とやっているのだ。で、気がついたら本当はショートホームルームだったはずなのに時計を見たら9時20分になっていて、まあ今日はロングということにしておこう、帰りのショートは簡単に終わらせるからねと言って教室を引きあげたら目が覚めた。生徒の名前も顔も、夢の中に出てきた連中は一人も分からなかった。
夢から覚めた後に思ったのは、きっと私が昨日から17歳を主人公にした話、特に進路選択をテーマにした話を書こうとしていたことと関係があるんだろうということだ。話はもちろん、私が17歳の立場のときにどういうことを考えたかな、ということが中心だったのだけど、いろいろな登場人物について考えているうちに、作者としての自分が担任の先生としての自分とすり替わったのかもしれない。考えてみれば、たくさんの登場人物、キャラクターをみている作者というのは担任の先生みたいなところがあるかもしれない。でも教員をやってたときは生徒たちが何をしでかしてくれるかドキドキハラハラで、せめて教室の中だけでも統制しようと一生懸命だったのだけど、作者はまあ自由にキャラクターを暴れさせればいいわけで、キャラクターの本音も引き出しやすい立場だなと思った。生徒は先生にはなかなか本当のことは言わないからね。
自分の性質としては、生徒のやりたいこと、生徒の無軌道さを抑制しなければならない教員という立場より、キャラクターが暴れるのを見て面白がっていればいい作者の立場の方がよっぽど自分の性に合っている。それに自分の夢の中に出て来るくらいの連中だから、どうも実際の生徒たちよりやることが面白い感じがした。みんなにこにこしていて気持ちいいし。
【因襲・低俗への怒り】
と、ここまで書いてから車で出かけた。昨日は岡谷のヤマダ電機に行ったがこれというPCが見つからなかったため、ステーションパークのエイデンにも行こうと思って。その前に綿半に何かあるかと思って立ち寄ったが、ここにはサプライ品はあるが本体は売ってなかった。まあそうだろうと思ったけど一応確認。それからさらに足を延ばして、平安堂に立ち寄る。ここで二三雑誌を立ち読み。『楽園』の6号が出ていた。それから『JUMPχ(カイ)』と『コミックリュウ』など。結局買わず。それからさらに足を延ばしてエイデンに行って、PCを見る。ノートはやはり10万円を超えているものしかない。しかしここでは本体とモニタとの別売りもあって、ストアブランドでかなり安いものもあった。DVDドライブがついてWindows7が入っていて3万円台という条件をクリアしているものもあり。Officeは入ってないがまあ何とかなるだろう。ここにあるならノジマ電機とかを探せば東京でも近所で見つけられるかもしれない。ちょっと希望が出てきた。
車の中でアシュケナージのピアノを聞く。最初はモーツァルトのピアノソナタK.448を聴くつもりでかけたのだけどそのあとショパンになり、チャイコフスキーになり、スクリヤビンになってぐっと心をとらえられた。スクリヤビンのピアノソナタ5番嬰ヘ長調。今も部屋のラジカセで聴いているが、これはすごくいい。アシュケナージって今まで主にショパンで聴いてたけど、やはりルービンシュタインとかポリーニに比べるとやはり何となく面白くなくて、正確でバイタリティのあるピアニスト、くらいにしか思えなかったのだけど、このスクリヤビンはとてもいい。つまり彼は19世紀音楽というより、現代音楽の方が全然いいということなのだと思った。何というか、ショパンなどではほとんど感じられないのだけど、この曲ではまさに曲と一体化している感じがする。曲の中にあるいろいろな感情が彼のピアノによってふうっと顔を出す。しかしその感情表現がクリアで知的なのだ。
ショパンの曲はどうしてもベタなので、ルービンシュタイン見たいにあんまり難しいことを考えてないんだろうなと思う人の方がいいピアノになる。でもスクリヤビンとかラフマニノフになるとそうはいかない。
聞きながら、心がすごくすうっとして行く感じがあった。今日の朝、実は隣家のおじさんとちょっと言い合いになり、捨て台詞的に言われたことをちょっと心にふつふつと思うところが残っていたので、そういういらいらがあったのだ。考えてみれば、教員をやっていたころもこういう前衛的なものを好んでいた感じがする。あのころは心のひだに届くようなものより、もっと知的なアヴァンギャルドなものの方が好きで、それはなぜだろうと思うと、つまらないことをつまらない人間に言われたり、馬鹿げた機構を変えられない官僚的な学校の内部制度に腹を立てたり、そういうことに常にいらいらしていて、そういうものと対極にある知的でアヴァンギャルドな世界というものにすごく安らぎを感じていたからなんだと思った。
逆に言えば、作曲家やピアニストも、周囲の因襲的なさまざまなこと、低俗さへの怒り、みたいなものをさまざまに抱えていて、それを作曲や演奏にぶつけていたのではないかと思ったのだ。考えてみればアートもそうだし、おそらくはカフカとかにもそういうものがあるのではないかという気がする。だからそういうコミュニティが成立し、そういう世界が形成されて行ったのだろうなと思った。
不満とか怒りとかから始まったものは最後にカタルシスを必要とする。それも、…そうだ、ダンテの『神曲』以来、多くの優れた作品がそういう構造をもっている。どこにどういうカタルシスを仕掛けるのか、スクリヤビンは、ラフマニノフもそうだが、メロディの美しさだな。美しさを味わうことは、圧倒的なカタルシスなのだ。
『アッシャー家の崩壊』や『阿部一族』のように全て崩れ去ってしまうと言うのもある。滅びか、再生か、ストーリー的なカタルシスだとそのどちらかになるが、ただ圧倒的な美しさを見せて終わると言う話もある。マーラーの第9交響曲は圧倒的な救済かもしくは最終的な滅亡かどちらかになっていたが、二十世紀的なものはそこに出口がなくまた繰り返す、みたいな感じのものが多かった気がする。
まあとにかく、そう言う作品でのカタルシスはある種のユートピアだ。どこにもない場所。ノープレイス。しかしそこから現実に帰ってきて戦う力になるのか。そのあたりはやや疑問に感じる面もある。
ああ、途中で書くのを中断したら印象が散漫になってしまった。蒙御免。
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