新しいPCは静かだ/哲学は不幸な病気/能とは女の子の部屋で身の上話を聞くこと/ステージに立ち続けることを選んだ人たちへの憧れ
Posted at 11/07/04 PermaLink» Tweet
【新しいPCは静かだ】
昨日はなんだかんだと夜中までいろいろやってとりあえずネット関係のことは大体できるようにした。今使っているIO-DATAの20インチのモニタと昨日買ったAcerのマシンを合わせて5万円をちょいでるくらい。やはりデスクトップは安いな。最近量販店でもなかなか見なくなってしまったけど、まだまだノートには換えがたい。それにこのAcerのマシン、異常に静かだ。ノートよりも静かなくらい。今までDVDとか見ててもマシンの発する音が気になっていたけど、今回はそういうことはなさそう。ただ気をつけないと、つけっぱなしにしていても気がつかないこともありそうだ。
【哲学は不幸な病気:木田元『反哲学入門』】
反哲学入門 (新潮文庫) | |
木田元 | |
新潮社 |
昨日は夕方になってブログを書いたあと一息ついて丸の内に出かける。書こうというテーマについて考えながら、何か入ってくるものを求めて。丸善でマンガを見たり、新書のコーナーへいったり。まず最初に手にしたのが木田元『反哲学入門』(新潮文庫、2010)。数学と文学と哲学は頭の中から純粋に生まれ出るもの、というテーゼから、もう一度哲学というものを見直してみようかなと思っていたのでその材料になるかと。現在29/302ページ。
哲学というのは自分を自然の外の位置においてすべての存在とはどんなものかについて考える、きわめて西欧的で自分の存在を「特別な存在」と見る不自然・反自然的なスタンスだという彼の主張は、わかりやすいところとわかりにくいところがある。まあそういう意味で言えば先に述べた数学・文学・哲学はどれもある意味自分を自然の外におくところがある。特に文学では、一人称文学はまだ世界の中から書いているが、三人称文学になるとより神に近い視点から見ることになっている。
キリスト教はプラトン主義を大衆化したものだという見方はふうんと思いながら読んでいてまだよくわからない。ただ、自然を生命としてではなく、一個の物理的対象としてみるところが哲学、ないしはキリスト教にはあり、超自然的原理がそれを支配することによって自然が生命を失ったことが西欧文明の危機の原因だと考えたのがニーチェで、それがゆえにニーチェは「超自然的原理」=神を否定し、「神は死んだ」と叫んで生の哲学を唱えた、というストーリ-はよくわかった。
この超自然原理による創造的世界観に対抗するのが古事記に出てくるすべてのものは萌えいずるもの、「天地(あめつち)初めて発(ひら)けしとき」という初発的世界観だなと私も思っていたのだけど、そのあたりは彼も肯定している。そうした古事記的世界観を彼は「洗練されたアニミズム」と呼んでいて、まあその解釈もなるほどという感じだと思った。まあとりあえずぼちぼち読もう。作者の主張も自分の考えに合うところ、あわないところ、作者の考えをじっくり聞かせてもらわなきゃなと思うところ、いろいろあって、読み応えはありそう。作者の意見を聞くことで、より自分の考えもはっきりさせられそうな感じがする。そういう読書がある種の理想なんだろうなと思う。
【能とは女の子の部屋で身の上話を聞くこと】
異界を旅する能 ワキという存在 (ちくま文庫) | |
安田登 | |
筑摩書房 |
それから丸善の三階を移動して美術書のコーナーから舞台芸術のほうへ。これも立ち読みした安田登『異界を旅する能』(ちくま文庫、2011)を手にする。これはお能のワキ方の著者が「ワキ」の立場からさまざまなものに出会っていくというちょっと面白い視点。正直言って能を見ているとき、ワキに注目することは今までなかった。やはり見たいのはシテであり、前ジテで述べられる異界の人物の物語と、後ジテでの本性を現しての狂乱というその組み合わせが能の魅力だと思っていたのだけど、確かにワキはそのシテ=異界なるものを呼び出すある種の霊媒、霊能者的な側面がある。この感覚というのは時々自分がある種の物語の観客なのではないかと錯覚した経験とシンクロするのだが、女の子の部屋でその子の身の上話を聞いたりするときの感覚に似ている。ファミレスや居酒屋で聞くのもそれはそれなりに面白いけれども、そういう場では語り手のほうにもある種の客観化が起こっていることが普通だ。でも自分の親しいテリトリーで(能でもシテが現れるのはその人ゆかりの場所だから、まあ言えば「女の子の部屋」みたいなものだ)自分のことを語るというのはある意味自分のことを語りつくさないではいられないところがあるし、逆に聞いている側もその部屋のたたずまいとか、玄関に並んだ靴とか、洗面所に置かれた歯ブラシの様子なども含めてその人がどういう人なのか感じないようにしていても感じてしまう、みたいなところがある。そして語っているうちに語り手のほうでもある種の変容が起こってくる。語り疲れて眠りに落ちてしまう場合もあれば、語っているうちに興奮してくるのか精神的にバランスを欠いてくることもある。また語り手の感情と聞き手の感情が完全にシンクロして「すべてを分かり合った」みたいな感覚が生じることもある。これは私もそう何度も経験したことではないけど、二人の間のすべての隔壁がなくなって自分という存在の中身と相手の存在の中身がただそこに一緒にいるという感覚が生じたことがあった。これもまた、ある種の異界なのだろう。まだ22/269ページ。
【ステージに立ち続けることを選んだ人たちへの憧れ】
MIYAKO バレリーナ吉田都ものがたり (ETOILE COMICS) | |
くりた陸 | |
新書館 |
それからバレエのところを見ていたら吉田都の伝記マンガがあった。立ち読みして面白い、というか本物のシンデレラストーリーなのでやはり持っておこうと思い買ってみた。これは読了したけれども、こういう人が存在するということ自体が何かうれしい。そういう人って時々いるなあと思う。
こういうものを読みながら、私は書くことを選択したけれども、やはりステージに立つことを選んだ人たちへの憧れというものはまだまだ強く心の中にあるんだなあと思った。道は違っても、そういう人たちへの憧憬と共感というものは強くある。集団の持つ因襲性とか、面倒な現実に左右されてしまう面もあってそういうところはやはり勘弁という感じはあるのだけど、そのなかで自分のやりたいこと、あるいは自分が感じずにはいられない世界を広げていくことができている人たちに対してのオマージュが書けたらいいなと思った。次の作品になるか、またその次の作品になるかはわからないが、そういうものも書いていけたらいいなと思う。
あ、今日はアメリカ独立記念日だ。235回目だね。
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