堀江貴文の面白さを初めて理解した/小説に対する見方が変わった/必敗のゲームに挑む彼への憧れ

Posted at 11/05/16

【堀江貴文の面白さを初めて理解した】

ブログを書こうとしてなんとなくウェブで自分のツイッター新聞を見ていたら堀江貴文に池田信夫がインタビューしている記事が出ていたのでそのサイトを見たら、なんかとても面白かった。堀江と池田が現代の日本の体制や状況についていろいろ文句を並べているところはまあいつもの調子なのだけど、これからの見通しとか堀江がやりたいことを述べているところがとても印象的だった。やりたいこととして宇宙へいきたいとかノマドになりたいとかそういう自分勝手なレベルのことをよく言う人だからそのあたりに全然関心がもてなかったのだけど、ライブドアをどういう会社にしたかったかというところで、予算をふんだんに使える科学者と技術者の楽園、戦前の理化学研究所のようなところにしたかったというところで始めてこの堀江という人の面白さを理解したと思った。技術革新が世の中を良くするということを彼は本気で信じていて、そのためには最高の環境を用意する。それがグーグルやアップルで出来ているのに日本で出来ないはずはない。そして日本には既に実例があるわけで、それが寺田寅彦や鈴木梅太郎が在籍し日本の科学をリードした戦前の理研だったわけで、朝永振一郎『科学者の自由な楽園』という本に書かれているし、『栄光なき天才たち』というマンガにも描かれていた。一つこれで堀江という人の一つの心底が見えた気がする。これから収監されるのがちょっと残念ではあるが、今後とも動向を注視していきたい人だと思った。

科学者の自由な楽園 (岩波文庫)
朝永振一郎
岩波書店


【小説に対する見方が変わった】

保坂和志『小説の自由』読了。何というか、小説に対する見方を大きく変える影響を受けた感じがする。自分がどんなものを書きたいのか、書いていくべきなのか、それを考えるにも保坂のいう小説的な方法が役に立つ気がする。何がどう面白いというよりも、自分がどういうふうに考えてどういうものを書いていくかの方が楽しみという感じだし、これから自分が書くものを自分で検証しつつ、保坂の書いていることのどこが有用でどこが面白かったのか、少しずつ見えてくるのではないかと思う。実に多岐に渡って書いてあるので、ここがよかったとひとことで言うのは難しい。明らかに自分とは考え方が違うなと思うところもあるのだけど、それが違いの意味というのは結構深いものがあって、そう簡単に書くことが出来ないところだなと思う。小説にしろ何にしろ、フィクションに類するものを書く人は一度読んでみると自分のやっていることがよりはっきりしてくるのではないかと思うし、逆に自分のやっていることがこれでいいのかと問い直す契機になるかもしれない。そしてそうやって行くことこそが小説的な書き方、考え方なんだということなんだなと思う。とか思った。

小説の自由 (中公文庫)
保坂和志
中央公論新社


【必敗のゲームに挑む彼への憧れ】

小路浩之『来世であいましょう』。なぜキノ君がこんなに面白い、こんなに魅力的だと感じるのかということを考えてみた。キノ君は女装少年で、好きなのはナウ君。でもナウ君にはかぴあちゃんという超かわいいがなかなか微妙な関係の子がいる。キノ君は最初ツンデレでナウ君に接していた。なぜそんなキノ君がナウ君に魅かれたかというと、ナウ君にかわいいといわれたことで敢えて男臭く振舞わなくていいと気づいたことがきっかけだったからというからいじらしい。しかしキノ君は「ボクはオレでなくてもいいけどワタシにはなれない」という根本的なことに気づく。つまり、モテないくせに筋金入りの女好き(?)のナウ君に好きになってもらうことは最初から不可能なのだ。だからナウ君に対してはわざと冷たく、あるいはからかって、ツンデレで接していた。しかしそこにかぴあちゃんが現れたことでそんなぬるま湯に漬かってはいられなくなる。

かぴあちゃんと結ばれたことで結局ナウ君を殺してしまったキノ君はせめてその肉体だけでも自分のものにしようと持ち去ろうとするが、そこに現れたかぴあちゃんと対決することになる。そして当然のようにキノ君も思いを遂げる前に死を迎える。キノ君は勝つことが不可能な戦いに挑んで、そして散って行ったわけだ。そしてそれが、どうしても憧れざるを得ない、羨ましくて仕方のないことなのだ。

負けると分かっている戦いに出て行くことは、現実に生きる自分たちにとっては許されないことなのだ。やはり生きている限り人間は勝たなければならない。勝ち続けなければならない。たとえ負けるにしてもリスクを減らしたり、捲土重来を期したりしなければならない。だから、負けると分かっている戦いを挑めるマンガの中のキャラクターに心の底から憧れる。考えてみると私の真のヒーローは白虎隊だったり、特攻隊員だったり、負けると分かっている戦いを挑んでいく人たちだった。しかし、現実に生きる自分には、それは許されないことなのだ。

とはいえ、そういう気質があるから私は必ずしも必敗の戦いを避けたわけではなくて、逆にそのために大変なことに何度も見舞われてきた。そして自分はやはりそういうお話の中のヒーローではなく、負ける戦いをしてはならないのだということをようやく理解して来た。本当にようやくだが。

だからこそ、愛に殉じて死んでいく、そういう勝てるはずのない戦いに挑んだキノ君が好きなんだなと思う。私たちは、負けるに決まっている戦いに挑む彼らを心の底から愛すると同時に、戦い続け、勝ち続け、あるいはそこまで行かなくても勝ちを目指して戦い続けなければならない。のだ。

来世であいましょう 2 (バーズコミックス)
小路浩之
幻冬舎コミックス

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by Luke Peterson

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