あまり気にしなくてよかったらしい/『ききみみ図鑑』古風な魅力の作品集

Posted at 11/05/07

昨日はここのところ心に引っ掛かっていた懸案が一つ、まああまり気にしないでいいということが分かったので、やはり肩から少し荷が降りたような感じがあったようで、夜は爆睡して朝は少し寝坊をしてしまった。普段は6時ごろ起きる、特にここのところのように早く明るくなるときは5時台に起きるのだけど、今朝は起きたら7時50分。大寝坊である。

人生なんて夢だけど
やなせたかし
フレーベル館

やなせたかし『人生なんて夢だけど』は欲しいなと思うのだが、amazonでも中古品しか手に入らないということのようなので、どうしようか。アンパンマンショップにでも行ってみようかな。子どもの洪水だろうな。たまにはそういうのもいいかもしれないけど。

ききみみ図鑑 (ビームコミックス)
富田紘次
エンターブレイン

富田紘次『ききみみ図鑑』(エンターブレイン、2010)読了。普通の佳品という感じだろうか。悪くはないんだけど、すごくいいというほどでもないというか。「音」をめぐる8本+αの短編集で、第一話の「視える音」が立ち読みできるようになっていて(@丸善丸の内本店)とてもよく、それで買ってみたのだけどそれを超える短編はなかったかな。好きだと思ったのは第2話「奪われた歌」と番外編「視える音リプライズ」。とにかく、「音が見える」というアイディアは私はとても好きだ。自分に合う楽器を探し求めて音が小鳥となって現れたカリンバ(アフリカの親指ピアノ)を選んでしまうとか、そういうのがいい。「奪われた歌」は、囚われの歌姫が実は古の楽器だったというストーリーで、これは岡野玲子『陰陽師』に出て来る玄象みたいな感じで好きだった。

ただ、ほかの作品もいろいろ思うことはある。「空っぽの音」は、普段あまり会わない死の床にあるひいおじいちゃんと少し世の中を斜に見かかっている年頃の少女の話で、その人の死を悲しむことができるか、というある意味苦い思いが作品を貫いているのだけど、そういう思いは自分が小学生のときに感じたことがあって、それは分からなくはない。それを自分がどうとらえるか、作者もかなり心をめぐらした感じがあるのだけど、それが今の自分に共感できるかと言うと少し遠い感じがした。「凪の音」は耳を失った後の耳なし芳一、というテーマ。盲であるために音で世界をとらえることに誇りを持って生きてきた芳一が音を失ったらどうなるか、という話で、ちょっと話の作り方が唐突の感がある。言いたいことはわかるんだけどという感じ。

全体に、せりふよりも絵によって話を進めて行きたい人なんだなと思う。ただ少なくともこの作品の時点では、完全にはそれを使いこなせていないんじゃないかなと思う。ただ、自分にこの絵が描けたらどんなストーリーを作るだろうか、と思わせるところがあって、少し夢が膨らむ。いい話を描いてくれると嬉しいなと思う。

***

つけたし。この作者のいったいどこが魅力的なんだろうかと思ったのだけど、要するに古風なんだな。取り上げるテーマも、絵柄にしても、今の流行というのとは少し違う。それが懐かしい感じの理由でもあり、もう一つ垢抜けきれない理由でもあるんだろう。ただ、このよさを失わないで描いて行ってほしいなと思うのは、40代後半の一読者の勝手な思い入れではある。

月別アーカイブ

Powered by Movable Type

Template by MTテンプレートDB

Supported by Movable Type入門

Title background photography
by Luke Peterson

スポンサードリンク













ブログパーツ
total
since 13/04/2009
today
yesterday