知らないということに焦りを感じるわけ/3月に読んだ本、というかまともに読めてない
Posted at 11/04/28 PermaLink» Tweet
引き続いて三月に読んだ本。の前に生活記録を少々。
昨日は朝、スーパージャンプを買いに行ったらモーニングも出ていたので二冊買った。連休でほかの雑誌の発売日がおして来ているから一日早めたということだろうか。午前中、会計事務の話など少ししてから車で松本に出かける。体を見て貰って帰りは高速。母も忙しいとのことで中華料理屋で炒飯と餃子で昼食を済ませ、母を途中でおろして帰宅。一休みしてから職場に出て給与事務などして銀行に出かけ、用事を済ませる。それから仕事は10時前まで。帰宅すると両親の友人が遠くから来ていて、話をしながら夕食を取るが、こちらが疲れていてうつらうつらしてしまった。雨はかなり強く、入浴して就寝。風呂で寝るのはよくないと言われたので寝ないように気をつけた。
今朝は6時起床。モーニングページを書く。また気が急いていると言われたのでゆっくり目の生活を心がける。職場の不燃物を出しに散歩を兼ねて歩く。帰ってきて朝食。鯉に餌をやって自室に戻り、考え事をしながら思いついたことをつらつら書く。自分が、わけがわからないものに囲まれて暮らしているという考え方を少し変えた方がいいかもと思った。つまり、自分の周りの世界の認識がアバウトになりすぎているということ。ということは世界との接し方が雑になっているということ。身の回りのことをもう少し知ろうとすること。そんなことを考える。
自分がどうして気が急いているのだろうということを考えると、常に自分が焦りを感じているということだなと思う。なにに焦りを感じているのかと言うと、つまりは世の中には自分が知らないことがたくさんあるということに対してだ。もちろんそれは当たり前のことなのだが、その中には知らなくてもいい(仕方がない、もしくは知らない方がよりよい)こともあるけれども、知った方がいいこともたくさんあるなあと思うからだ。昨日も書いたけれども、その知らなくて焦っていることの一つは現代社会についてだ。現代社会を私は、分かってないなあと思うことがよくあって、でもそれは知らなければならないような気がして、だから無意識のうちにそういうものを知ろうとする(現代社会の何を知ろうとしているのかが無意識に本の題名に反映していると思われる)のだなあと思った。知ろうとすればするほどある種の幻想が広がる感じがするのだが、それはそれとして。
考えてみると、人生の節目節目での選択というのが、そういう「この世界を知りたい」というようなことに突き動かされている面がある気がする。大学というところを知りたいとか、学問の世界を知りたいとか、身体の世界を知りたいとか、アートの世界を知りたいとか、市民社会を知りたいとか、教育というものについて会得したいとか。そういう動機というのはある種不純なのかもしれない。学校生活とか職業生活とか結婚生活とかがあまりはかばかしくなかったことを振り返ってみると、そういう動機の弱さというか斜め上みたいな動機のせいだったのかもしれないなという気もする。ま、そんな単純に割り切れるようなものではもちろんないのだけど。
しかしまあ、何かを知っているとか何かについて考えを持っているとか、そういうことが生きて行く元手、そういうものを資源として生きている人たちというのはあるわけで、そういうものを広義の知識人階級と言っていいのではないかと思う。人の知らないこと、人が考えを持っていないことについて明確に述べることができることは十分重要な資源だ。だからそういう知識や経験や技術について、その価値を高めるように振る舞う癖がついている。それは例えば職人の技術などに比べると、比較の問題ではあるが「虚」の側面、虚の要素が強いからだろうと思う。
現代においては特にネットの発達によって、情報そのものの値段、価値はかなり下落してきている。だから本当に重要な情報はネットにあげないようになってきているのではないかという気もする。本当に重要な情報はネットで伝えられる文字や映像や音によっては伝えられないものであるということもあるけれども。
しかしたとえば私たちが学生だった頃にはその情報を得るのに海外に本を注文して何か月もまたなければならなかったようなことが、3分で手に入るということだって珍しくはなくなったわけで、特に海外に対する知見のタイムラグに自分の地位を保全する役割をさせていた知識の輸入業者の人たちにとっては生活の存立基盤が危うくなりつつある状況はないでもないだろうと思う。
まあそれはそれとして、知識人階級が生きて行く上での重要な資源は知識であることは間違いないし、だからこそ「知る」ということは彼らにとっての「業」でもあり、「生活」そのものでもあるわけである。「知らない」ということはプライドに関わる問題だけではなく、ひいてはその生活、その存在意義そのものに関わる問題になっていく可能性があるわけだ。
まあ私もそういう意味では知識人階級の末席、はしくれに位置してるということなんだなあと思う。だから「知らない」ということについては激しい焦りを感じるわけである。まあそういう構造上の問題もある。
まあしかし実際問題としてどんな人間にも知らないことはある。それはどんな職人にもできないことがあるし、どんな政治家にも解決できない問題があるのと同じことだ。いくらプロとは言え、それはアマチュアと比較して卓越した存在でなければならないけれども、万能ではないのだから。
なんてことを考えて、自分が常に焦りを感じる理由も分かった気がしたのだけど、まあ実際問題焦っても仕方がないわけで、それが本当に知らなければならないことなのかとか、知りたいこと、やりたいことの方を優先すべきではないかとか、まあそういうことも考えたりする。人から紹介されたことにもそう簡単に関心を持てずにがっかりされることが多いのだけど、知るということは何かものすごくたいへんなことなのだそういう意味では。でも知りたいという本能があったからこそこういう人間になっているということもあるわけで、その辺の思いを上手にコントロールして行くことが長生きの秘訣なんだろうなとも思う。(まあ焦っているのは自分の思い通りに物が書けてないということも大きいのだけど)
朝散歩をしながらそんなことを考えていた。そして朝食後、そんなことをつらつら書いていたのだけど、ふと何かを読んでみようと思い、車で出かけることにした。発車してからそういえば新しいセブンイレブンがきょうオープンだったなということに気がつき、国道沿いのセブンイレブンに立ち寄る。オープン初日らしくかなり熱心だが、まあご祝儀だと思い『コミック乱』6月号と飲み物を一つ買った。車を飛ばして上川沿いの土手道に入る。ここは土手に桜が植わっていて、今満開の盛りを過ぎつつあるところ。桜吹雪がきれいだ。花を見ながら土手道を走り、書店に行く。
四十婚 アラフォーではじめての幸せ結婚式 (BANBOO ESSAY SELECTION) | |
尾形未紀 | |
竹書房 |
結局尾形未紀『四十婚』(竹書房、2011)というのを買った。40代同士で結婚した漫画家がこんな感じだったよというエッセイマンガ。私はバツイチ(一度目は31歳だった)なので結構経験したこともあるけれども、へえっと思うことも多い。まあ私にもまたそういう機会が来るといいなと思うが、人の話を読むのも面白い。それからまた土手道を走って家に戻り、いろいろ読んで考えて物を書いて、何て事をしてからはっとそういえば今日はゼロサムの発売日だったというのを思い出し、再び車を飛ばして蔦屋に行って帰ってきて、『ランドリオール』だけ読んで昼ご飯を食べた。そんなこんなの連休前。
コミックZERO-SUM2011年6月号 | |
一迅社 |
ということで3月に読んだ本。11日までは2月の延長でいろいろなことを考えながらでもなかなか読めないなあと思いながら読んでいた感じ。しかし11日の震災で大きなショックを受けて、しばらく本が読めなくなってしまった。あの津波の映像や被災地の写真を見ていると、現実感を喪失して、本が読めなくなったんだなと思う。地下鉄サリンのあと、阪神大震災の後、911のあと、そういうときにはどうだったんだろうと思う。911のころにはウェブ日記を書いていたからそのあたり調べれば多少はわかると思うが、こちらのPCにはその過去ログがないのでよくわからない。ウェブ上からは既に削除してしまっているし。
2月から引き続いて大澤信亮『神的批評』を読んでいたのだが、震災で決定的に中断した。二週間ほどたった26日の記録にようやく続きを読みだしたとある。その間はショーソンの交響曲を何度も聞いたり、あとはマンガがほとんどだ。振り返ってみて驚いたが、小説は一冊も読んでいない。前月から引き続いて読んでいた『神的批評』と『マンガの経済学』をのぞけば、まともに読んだものはマンガとジブリ関係以外では小山登美夫『現代アートビジネス』だけだ。
現代アートビジネス (アスキー新書 61) | |
小山登美夫 | |
アスキー・メディアワークス |
しかしこの本は面白かった。現代アートというものをいかに回していくか。その裏方、仕組みの話。小山氏がサポートしている若手のアーティストについての情報を仕入れられたのもよかったし、村上隆・奈良美智という現代では意識せざるを得ない二人のアーチストの活動ぶりについて読めたのもよかった。関連して『The☆Geisai アートを発見する場所』も目を通す。3月13日にGeisaiが開催される予定で、行こうと思っていたのに震災の影響で結局中止になってしまったのも残念。
あとはアニメージュの記録を追った『スタジオジブリの軌跡』と、録画で見たテレビの『スタジオジブリ物語』。後者は高畑勲と宮崎駿の協同と相克の話が興味深かった。話はだいたい2001年の『千と千尋』で終わっていたが、ジブリが出来る前の東映動画の時代からの話がかなり長くて、それはそれで興味深かった。
ごっこ 1 (ジャンプコミックスデラックス) | |
小路啓之 | |
集英社 |
マンガでは『ピアノの森』『へうげもの』『宇宙兄弟』などなど以前から読んでいるものを読み返すことが多かったが、新たに読むようになったのが小路啓之。最初に読んだのはスーパージャンプで連載されている『ごっこ』だが、『小路啓之作品集』1・2と『来世で会いましょう』1~3も購入。変幻自在な作風と絵の描き方も興味深いが、やはり現代の若者の心に映った世界、というのがポイントになるのだろう。『ごっこ』は虐待されている女の子を誘拐したロリコン男が年金偽装で死んだ父親の年金を受け取りつつ親子として暮らしていくという話でこれもまた現代の一様相を切り取ったような話。親子とは何だろうとか、そういうことへの問いかけがあって考えさせられる。『作品集』『来世で会いましょう』は重いところもあり、まだ全部は読めていない。
これですべてなのだから、3月はいかに自分が震災に影響を受けたのかということに改めて驚かされる。4月も振り返ってみてはいるのだけど、4月9日ころにようやく思い出したようにたくさん本を読み始めていて、やはり震災のショックから立ち直るのにほぼ一月かかったということなんだなと思う。
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