大澤信亮『神的批評』:宮澤賢治の過剰さ
Posted at 11/02/25 PermaLink» Tweet
今日は午前中松本に出かけ、体を見てもらう。いつも母と私で出かけ、私が先に見て貰っていたが、母から先に見て貰うように変えてもらった。丁寧に見て貰って、肩がこるのは頭ら緩んでないせいですかと聞いたらそうだと言われ、「少し気が急いてます」と言われてしまった。頭を掻く。そうだなあ。文字通り短気になっている面もあったしなあ。行きは国道で塩尻峠を走って、帰りは高速で帰って来た。昼食は湖岸の近くの中華料理屋で半チャンラーメン。こういうものを食べるのは久しぶり。
帰ってきて少し休んだのだが、操法のあとはいつもそうなのだけど、けだるくて何かをやる気になれない。これは以前、カイロプラクティックを受けていたときもいつもそうだった。
神的批評 | |
大澤 信亮 | |
新潮社 |
創作も手につかないので、少し本でも読もうと、大澤信亮『神的批評』を少し読み始めた。最初はまず「宮澤賢治の暴力」。宮澤賢治と暴力という組み合わせがまず第一に挑戦的というか論争的なテーゼの置き方だ。そういう引っ掛かりを読み手に持たせて話を始める。宮澤賢治は極端である、彼の内部には不自然な過剰さがある、という主題から話がはじまっているが、これはちょっと唸らされた。それは私も無意識のうちに宮澤賢治に感じていたものだからだ。そしてそれを問題にしたものは、さまざまな評論においても、見た覚えがなかった。賢治という存在を一つの絵とすると、色のトーンとか描写の濃淡とかそういうものを論じたものは多いと思うけれども、コントラストの強さとか筆致の過剰の力とかについて論じたものがなかった、という気がする。私が読んでないだけかもしれないのだけど。
そしてその過剰さが、戦時下においてや満洲国において戦意高揚に使われたという事例を上げ、そこに潜む「暴力」との親和性について示唆した後で、その理由についてこう述べている。
「彼の作品には読み手の「熱情」を焚きつける何かがある。それは彼の一章を真っ直ぐに貫くあの過剰さとどこかでつながっている。」
そして彼の作品に関わることのある種の危険についてこういう。
「その燃える炎への距離を都合よく調節する限りで、人は時に心を温め、ときに熱くなれる。しかし、彼を批評するとは、その炎に身を焼かれる覚悟で、彼を内部から批評することである。」
一般に、賢治は前者のように読まれているだろう。しかし私などは、『よだかの星』などをなぜ絵本にして子どもに読ませるのか、全然わからないという気持ちを持っていた。私などはあまり炎への距離を器用に調節できる方ではないので、正直熱そうなものにはなるべく近寄らないようにしていた面がある。そしてその熱の正体について、知りたいという気持ちはなくはなかったけれども、何となく後回しになっていた。宮崎駿が宮澤賢治を尊敬してるというのも、あの巨大なパッションがやはり巨大なパッションに魅かれたということなのかもしれないと思う。まだ本の最初を読み始めただけだけど、その多いなる謎に迫る行程には期待が持てるなと思った。11/240ページ。
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