「かなり貧しい精神的なゲーム」
Posted at 11/02/09 PermaLink» Tweet
昨日帰郷。いろいろな本を読んでいるけれども、ここ数日のブログに書いているように、基本的にはバルテュスにはまっている。バルテュスという画家は本当に魅力的だし、また言っていることがいちいち鋭くて驚く。
リルケとの関係も興味深いが、リルケはパリに住んでいたのに第一次世界大戦でパリに帰れなくなり、また敵性外国人としてパリにあった彼の財産が勝手に処分され、草稿まで散逸してしまったのだという。また彼はオーストリアで召集され、その時の体験もまたかなり心に傷を残したらしい。バルテュスの母親・バラディーヌとともに住むようになったのはこの時期にあたることになる。そのリルケがバルテュスの才能にほれ込み、ついにはみずから序文を寄せて11歳のバルテュスの画集を発刊してしまう。その画集を図書館で借りてきた。
ミツ―バルテュスによる四十枚の絵 | |
バルテュス,ライナー・マリア リルケ | |
泰流社 |
猫がやってきて共に過ごし、そしていなくなってしまう。もちろん素朴ではあるけれども、バルテュスらしい不穏な雰囲気、不安な形象がすでに現れていて興味深い。
リルケについても何か読んでみようと思い、塚越聡『リルケの文学世界』(理想社、1969)も借りてみたのだが、バラディーヌはほとんど出て来ないか、恋人というより「女友達」として出てくる。その微妙さがリルケ崇拝の有る無しに関わるのだろう。
リルケの文学世界 (1969年) | |
塚越 敏 | |
理想社 |
こちらのサイトで見つけたいくつかの言葉。
「彼の絵は、当時流行していたシュールレアリスムの絵画と解釈されましたが、バルテュスはこれを否定しました。彼はシュールレアリスムは、かなり貧しい精神的なゲームにすぎず、絵画運動としては凡庸だと考えていたからです。」
「少女とは生成の受肉化である。これから何かになろうとしているが、まだなりきってはいない。要するに少女はこのうえなく完璧な美の象徴なのだ。成人した女性 がすでに座を占めた存在であるのに対して、思春期の少女[アドレサン](この言 葉はラテン語の「アドレスケレ」=「成長する」から来ている)は、まだ自分の居 場所を見つけていない。…でも、わたしの作品をエロティックと評するのは馬鹿げている。少女たちは神聖で、厳かで、天使のような存在なのだから。結局のところ、わたしとあの哀れなナボコフに共通点があるとしたら、それはユーモアのセンスだけだ。」
「主に少女の絵を描くことで世間から誤解されてきたバルテュスだが、それについては「最近の精神分析の隆盛の弊害だ」と一蹴する。」
バルテュスは、シュルレアリスムもその背景にあるフロイト主義も否定していたということなんだろうな。そしてそのあたりが精神分析の流行した20世紀を超えてそれに疑問符がつきつけられた今、再びの光を感じる理由なのかもしれない。
「少女とは『生成』の受肉化である。」生成しつつある何か。何かになろうとしているもの。種村季弘はそれをグレゴール・ザムザのような、と表現しているが、確かに彼女らが足を組み、スカートからにゅっと足がつき出ているさまは、変態しつつある昆虫類にたとえられるかもしれない、とも思う。でもこの種村の言葉も、その不安や恐れは表現していても、美しさは表現しえてない。
***
今日は午前中、松本に出かけて体をみてもらう。少しおなかの動きが悪かったとのこと。そうだよなあ。帰りに久しぶりに塩尻のワイン直売所に立ち寄ってパンとかソーセージとかを買った。行きは岡谷から塩尻北まで、帰りは塩尻から岡谷まで高速に乗って、下諏訪で裾上げのできたズボンを受け取って帰宅。昼食後、一休みしてから銀行と郵便局、コンビニによってスーパージャンプを買って電気代を払い、図書館に行った。
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