ニューヨークの石岡瑛子/『最後の国民作家 宮崎駿』/etc.
Posted at 11/02/15 PermaLink» Tweet
昨日。午後友人と少し話をして、3時過ぎに出かけた。そのときは少し雨が降っていて、傘を持って出かけた。地下鉄に乗って日本橋に出る。とりあえず買うものはモーニングページ用のノートとコーヒーのペーパーフィルター。丸善の地下でノートを買い、本を物色したけど買わず。最近読んでない本がだいぶ溜まっている。地上を散歩してコレドの地下のプレッセへ。サラダとかフィルターとか夕食の買い物とかしてまた地下鉄に乗って帰宅。少し空模様が怪しい感じはしたのだが。帰ってきて早めの夕食。本を読んだり。そういえば書いていないけど、最近マインスイーパよりもスパイダソリティアをやっている時間が長くなった。なかなか完成しないが。そんなことで時間を潰すのは勿体無いのだけど。
何冊もの本を並行して読んで、面白いと思いつつそんなに没頭も出来ずに読んでいたのだが、なんとなく見た『プロフェッショナル』の石岡瑛子の回がとても面白く、途中から録画した。これはツイッターで茂木健一郎自身がプッシュしていて、私も舞台美術(衣裳)という表現者の回なので興味を持ってなんとなく見ていた。originalで、revolutionaryで、そしてtimeless。その三つの言葉をマントラのように唱えながらものを作っていくのだという。なるほど。その結果がどういうものを生み出すかは人それぞれだけど、それは作っていく人が心しなければならないことだと思った。特にtimelessというのは忘れがちだけど、いつまでも色あせないものを作るのは大事なことだと思う。
最後の国民作家 宮崎駿 (文春新書) | |
酒井 信 | |
文藝春秋 |
その影響なのか、見終わった後急に集中が入ってしまい、一気に酒井信『最後の国民作家 宮崎駿』を読了し、さらに宮崎駿『風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡』もかなり読み進んだ。気がついたら読むのをやめたくないと思っている自分がいた。そう思ったのは久しぶり。ゆっくり冷静に読まないとダメだと思っている一方で、熱を入れてとにかく読みきるぞ、と肚を決めて読むことによってボッと火がつくこともあり、久々に「読書に熱中する」という感じになった。しかしそのせいで気がついたら1時半。ぱっと読むのをやめて風呂に入ってネタが、どうも興奮が冷めてなくて、3時に一度、5時半にもう一度起きてトイレに行くことになり、結局二度目にもう起きた。二度寝のあとの気持ち悪さが残ったので、それなら一度目に起きたときにもう起きてしまってまた眠くなったら寝たらよかったなとも思った。
『最後の国民作家』は、私に宮崎作品を考える上での、また宮崎の発言を考える上での一つの枠組を提供してくれたなと思う。今までジブリコーナーなどで立ち読みした『ユリイカ』の特集などはみな主観性が強すぎて、好きか嫌いかという話になってしまっているのが多く、そんなもの読まされてもこっちは何の意味もないという感じがしていたのだが、この本は「宮崎アニメを熱烈に支持した最初の子どもであり、国民的な存在になったときに思春期を迎えた最初の青年だったという世代」の作者が「なぜ宮崎アニメは国民的な存在になったか」を考察していく客観性に満ちた本で、そこに展開される分析がすべて妥当なものかどうかはともかく、一つの仮説としての理解の枠組を提供してくれているのは大変ありがたいと思った。宮崎は作品を分析されるだけの存在ではなく、それを受け入れた日本社会とのかかわりの中で考察されるべき部分がやはりあるのだと思う。そして、宮崎自身がそういう日本社会とか日本の自然とかにすごく目を向けていてさまざまな意見を現に発信している存在でもあるということもすごく大きい。オーソドックスな意味で彼はある意味社会を「導いて」いる、つまり指導者の一角にいる部分がある。本人は強く否定するだろうけど、思想を発信するということは必然的にそういうことになる。
しかしその発信される思想はディズニーのようにストーリー先行ではなく、また他の多くの日本のアニメのようにキャラクター先行でもなく、むしろその背景に描かれている「もの」であり人々の「仕事」であり、「風景」であるというのが酒井の主張で、これは宮崎やジブリの作品の本質をよくつかんでいると思う。っていうか言われてみればあまりにその通りの素直な受け取り方だなと思うのだけど。ものがどういうものとして存在するか、人が人としてどういう営為をするか、そして自然と人間のぶつかり合いとして生まれるところ、その最前線の戦いの場である「郊外」を中心とした風景とかがどうあるかということが、「存在」「営為」「自然と人間のせめぎあいの場」と行ったことがそのまま宮崎のテーゼとして提出されているといっていい。
一番うーんと思ったのが、宮崎が高畑勲の『おもひでぽろぽろ』における農村の描き方を批判しているところで、「農村の風景は百姓が作った」という言葉を、「日本共産党の宣伝カットみたいだ」と切って捨てているところだった。文明と自然は容易に和解出来ない、という認識を宮崎は強く持っていて、それは『ナウシカ』にも『もののけ姫』にも強く現れている。でもその通路を設けることは出来るんじゃないか、ということが希望として描かれているわけで、それをどうとらえるかというのは思想の問題だけでなく実感の問題でもあるからそれを考えること自体が一つのテーマになるようなことだなと思った。
風の帰る場所―ナウシカから千尋までの軌跡 | |
宮崎 駿 | |
ロッキング・オン |
『風の帰る場所』を読んでいると、宮崎の言うことはハチャメチャで一貫性に欠けるように見えることも多々あるが、でもそこに一貫性があると思って読めばいろいろなことが見えてくるというような人だなと思う。それはバルテュスのインタビューを読んだときも思ったことだ。友人と話していてバルテュスが自分のために、自分の表現のために書いた作品は一枚もないと言ってるよ、と言ったら「それはどうかな」という反応だったのだけど、でも作家の言うことは作家の言うこととして一度その通りに受け取ってみるのがいいと思う。そう受け取ってみるときわどいものとしか見えない少女の絵が別の光が当てられて見えてくるわけで、私は少なくともそういうふうに見たほうが面白いと思う。それはまあ、どう受け取るのが自分にとって面白いか、生産的かというだけのことなので、自由に受け取ってそれを自分の作品作りに生かして行けばいいのだと思う。すくなくとも、言葉の額面どおりに受け取った方がバルテュスの作品は陰影深く味わえると思う。
宮崎の作品も、昨年一気に全作品を読破というか観破というかしたときには本人のコメントも他の人のコメントも余計なものではあったけど、その後より深く見ようとして行くとさまざまな解釈や本人のコメントがいろいろな光の当て方を提示してそれで陰影深く見えてくるということはある。まあそれもそう見なければいけないということではないのだけど、そんなふうにいろいろ見たほうが自分の作品作りには生きてくるなと思うからということなのだ。
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