政局マニア/『ノルウェイの森』第4章まで
Posted at 11/01/06 PermaLink» Tweet
今朝は母が7時過ぎの特急で東京の病院に行くと言うので早く起きて送ることにしたのだが、窓を開けると昨日からの雪がうっすらと積もっていた。モーニングページを書いて部屋の灯油が切れたのでポリタンクを持って降りて行くと車には雪が積もっていてエンジンもかけてなかった。鍵を開けてエンジンをかけようとしたがなかなか開かない。何度か試みてようやく開いたのでエンジンをかけて暖房を入れ、竹箒を持って来て車の雪を払った。今に行くと母はまだ準備の途中で、「一本遅らせようかと思ってたら遅くなった」と言っている。結局予定通りの特急に乗ることにしたようで、ゆっくりと準備をしていた。私は家の前の道の雪を竹箒ではいていた。灯油もタンクに入れようと思ったのだけどどうも時間はなさそうだった。火の元と戸締りを確かめて軽に乗って駅に出かける。駅について、こういうとき、いつもは「行ってらっしゃい、気をつけて」というのだけど今朝はなぜか言い忘れた。なんだかちょっとぼうっとしているみたいだ。帰るときに連絡してくれとだけ伝えたのだが。
車で家に戻る途中、ローソンでモーニングとカフェオレを買う。本年初マンガ雑誌。家に戻って灯油をタンクに入れて運ぶ。モーニングを軽く読んでから車を戻しに行き、それから朝食を食べた。まず炊き立てのご飯をよそって父の仏前に供える。父が亡くなってから、母や毎朝ご飯を炊いている。朝は二人ともパンしか食べないのだが。酵母パンをトースターで焼いて蜂蜜を塗り、牛乳をレンジで温めて、母の用意してくれたレタスとキュウリにマヨネーズをかけて。
食べ終わってからテレビをつけて、政治家のお正月という番組を少し見た。政治家の正月の仕事というのは要するにあいさつ回りだ。政策の実行という点では下らないと言えば下らないのだが、やりたい政策を実行するためにはまず権力を握らなければならず、政治家にとって権力とは第一には議席なので、その確保には大物といえども心血を注ぐ。私の親戚の政治家が政治家に必要なのは権力と政策で、権力だけがあってもだめだし政策(理想)だけがあってもだめだと言っていた。権力というのは要するに誰の顔を見てもやあやあと親しみやすい顔をして挨拶をしたり苦情を熱心に聞いてあげたりすることなのだと言う。「一票」などという気まぐれなものを確保するのがいかに大変かと思う。まあ日本の政治家はそこにエネルギーを使い過ぎて政策とか理想とか言うのがおろそかになっていると思うけど。民主党の議員たちも去年の体たらくは結局政策をちゃんと練り上げられていなかったことにあると思う。政策を実現するための方法をまだ彼らはちゃんと把握していないし、実行部隊である官僚も掌握していない。この調子で今年もだめだめだったらまさに前途多難だなあと思っていたが、テレビの政治記者というのも結局は「政局好き」というか「政局マニア」みたいな人が多くて、政策やその実現についてもっと突っ込んで考えようと言う人が少ないように思われる。まあワイドショーだからかもしれないけど。
まあ「政局」を楽しんでいられるのはおおむね日本は大丈夫、と思える時期であって、これからもそうだという保証はないから、そろそろまともな方向性を打ち出してほしいものだと思う。まあそれにしても、政治家というのは大変だ。エゴやらルサンチマンやらさまざまな人間性の最低の部分を汲みあげて、世界平和やら国家の安寧やら人間の自由やら権利やらの人間性の最高の部分を実現しなければならないのだから。やっぱり日本の政治家に足りないのはそうした大きな理想の実現への気概だなという気がする。オバマは政治家としての評価はだんだん下がっているけれども、人間としての評価は相変わらず高いらしい。そしてそこに、アメリカ国民が期待する何かがあると思う。日本にもそういう高い理想に耐えられる、引き受けられる政治家が出て来ないものかと思う。
っと、思わず久しぶりに政治論を書いてしまった。これも正月の効能か。しかし今日から私の仕事も通常営業。今までは午前中から何かと仕事があったのだが、今日からは3時に行けば十分なので、またものを書くのに十分な時間がとれる。しかしどうも今日はぼおっとしているな。
今週のモーニング。南Q太の新作将棋マンガ、「ひらけ駒!」がはじまった。この絵とコマ運びのペースは私の好きな感じだ。期待が持てる。「ジャイキリ」試合中に寝てしまう監督とは新機軸。でも選手はちゃんと仕事を…「ReMember」これは相当面白くなってきた。ザジと象三郎の出会い。「宇宙兄弟」バギーの問題点の改良。なるほどこういう方向性か。「島耕作」ふうん。災い転じて福、か?「柳沢教授」この作者にはちょっと珍しい感じだが、面白かった。「う」スーパーのウナギの美味しい食べ方。「デラシネマ」どうなるのかな。「ピアノの森」うーん、なるほど。ソフィーから始まるファイナル、ワルシャワフィルとピアノの上空からの描写、やはりこういうのはいいなあ。
読書の方は『バガヴァッド・ギーターの世界』と『ノルウェイの森』を交互に読み進めている。
バガヴァッド・ギーターの世界―ヒンドゥー教の救済 (ちくま学芸文庫) | |
上村 勝彦 | |
筑摩書房 |
『ギーター』は『ギーターの世界』を読んでから岩波文庫の本体を読むという感じ。現在134/307ページ。やるべきことをやることによって絶対者に近づくと言うまあそりゃそうだろうなあという感じ。アートマンがすべての生命に宿ると言うことを、大乗仏教の如来蔵思想、天台宗の本覚思想と共通すると言っているのだけど、そうなると如来蔵思想と無我論がなぜ両立するのかがよくわからないなと思う。仏教論だけ読んでいると仏教思想の特徴とか矛盾とかが見えてこないが、ヒンドゥーと比較することで見えて来ることは多いんだなと目を開かされるような感じがする。
ノルウェイの森 上 (講談社文庫) | |
村上 春樹 | |
講談社 |
『ノルウェイの森』上巻、現在178/302ページ。なかなか長い。昨日はだいたい100ページくらい読んだか。以下ほとんどネタバレなので御注意を。誕生日のあとの直子に向けて出した初めての手紙の内容は、あるとき自分が感じてはいたけれどもうまく口には出せなかったことが書かれているという感じがした。無責任だけど本音で、本音だけど無責任なこと。力になってあげたいと感じながら、それは無理だとも思っている。相手から、この人は自分の力になってくれるかと怯えるような藁にもすがる思いとどうせ無理だという冷たい絶望を背景にした拒絶を感じながら。今思うと、その時の自分につきあえるような人ではなかったなあと思う。でもそれをやってしまうのが若さゆえの無謀さで、それはこちらも傷つけたけれども向こうも傷つけている。しかし向こうはあまりに傷が多すぎてこちらがつけた傷がなんだったのかさえ分からないのではないかというふうにも思う。愛してさえいなかった、というのはそういうことなんじゃないかと思う。
「大学解体」を叫んでいた連中が講義に戻って出席の返事をするのに腹を立てたワタナベは出席しているのに返事をしないという挙に出、ますます空気を悪くするがそれが故に緑に出会う。ようやく緑が出てきた。入れ替わりに突撃隊がいなくなった。永沢との会話、緑との会話、緑との食事、キスと食後の火事つきの。そして永沢との外出と不毛な朝の不毛な情事から帰って来ると直子からの手紙が来ていた、というところまで。
というのが第4章の内容なのだが、どういう基準で章を分けているのか。第1章で語られるのは回想のみ。第2章から物語の筋立てが語られ、書き割が立てられ、基本的にリアルタイムで話が進むが、2章の最後にキズキと直子との出会いからキズキの死までが語られる。喪失の理由がそこで明らかにされる。3章で直子と過ごした時間と誕生日のこと、そして直子がいなくなり、そしてホタルのエピソードとともに突撃隊もいなくなる。繰り返される喪失。4章ではやはり緑の出現とともに未来への希望のようなものが出てくる感じがする。でもそこに直子からの手紙。直子というのは確かにワタナベにとって唯一の現実なんだなと思う。その現実とどう向き合うべきなのか、今のところ彼には向きあうことさえ許されていない。そのもどかしさ。自分と相手との間に確かに大きな見えない壁、見えない川のようなものがあってそこを超えて行くことはなぜかできない。緑との間の壁はあったとしても人間が作ったものだから越えていくことは多分出来るけれども、直子との間の壁は人間にはどうしようもない何かがある。ああ、そういうことに私もそのころ気付くことが出来たらなあと思う。緑という存在があるからこそワタナベも読者も直子という存在を相対化して見ることが出来る。そうでないと、直子だけを見つめていても近づくことも遠ざかることもできない究極のダブルバインドに見舞われてしまう。
しかしこの本を当時読んでいたらそういうことに気づくことが出来たかと言えばそれはないだろうなと思う。高校教師をやっていたころに「高校教師」とか「ハイスクール落書き」とか学校ものが流行っていたけれども絶対に見る気がしなかった。現実との距離感が取れないのに、無責任なフィクションを見たりしたところで自分の混乱が深まるだけだ。
そうか、自分の中の混乱の一つの原因は、そういう「直子のような人」に近づきすぎて、自分の中のそういう要素を起こしてしまったということにもあるのかもしれないなと思う。そのおかげで何か獲得したものも実際にあると思うけれども、失ってしまったものも多分あるわけで、その収支決算がまだ自分にはできていない。そんな決算が可能なのかどうかさえよくわからないけど、『ノルウェイの森』を読んでいくことによって自分の中のいろいろな要素が羽毛でくすぐられるように目覚めていく感じがする。違う意味で、『バガヴァッド・ギーター』にもそれがある。
もう11時半か。よい天気になって来た。母は今ごろ、妹に会っているだろうか。私は以前書いた作品を小冊子にしてみたり、友人に読んでもらって感想を聞いたりしている。なかなか新しい作品のプランは立たないのだけど、小説を書くと言うことは自分にとって自己治癒のプロセスでもあり自分を成長させたり視野を広げたり違う角度からものを見られるようになったりするためのプロセスでもあるなと思う。そういう力はどうしたわけかフィクションにしかない。しかし、そういうことが起こっているということを確認するということ自体はこうした文章の方がやりやすかったりはする。車の両輪のようなものなのだろう。
どうも体が乾燥する。唇は荒れてはいないのだけど、かかとがひび割れて痛い。私は基本的に掌は湿っているのだけど、最近乾いていることが多いし、髪の毛もどうもまとまらない。ホットカーペットとストーブのせいだとは思うが、つけないわけにもいかない。しょうがないので水を飲む。今朝の気温は多分、マイナス3度くらいまでしか下がっていない。雪は積もっていても比較的暖かい朝だった。
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