書きたいことを書きたいように書くことは大変だ/中崎タツヤ『もたない男』

Posted at 10/12/07

時間というものはいくらあっても全然足りない、と毎日思う。時間があるときに企画したり参加したりしたいろいろなことがこういうときになるとかなりの足枷になってきて困ったなと思う。人間の時間は本当に限りがあって、一日は24時間しかないし一年は365日しかない。そして体力的な限界も、若いころに比べると訪れるのは早く、すぐに身体にがたが来る。創作にかかわっていない時間はちゃんと社会生活を送らなければならないし、そのときにちゃんと体力がないと外世界との応対が支離滅裂になってしまうので、あまり無理も出来ない。自分がいちばん大変なのは精神状態のコントロールなので、無理しすぎると支障を来たすのだ。こういうことがあると、早く創作一本の生活に出来るように、創作でたつきを立てられるように早くなりたいと思う。窓口になってくれる人がいると助かるなということも昔から思っているのだけど、まあそれも難しくマネージャーも創作も実働も生活も基本的にぜんぶ一人でやっている、まあ田舎にいるときはそれでもだいぶ母や職場の人に力を借りているが、創作周りのことはもちろん自分だけでやっている。

昨日はそれなりに直しは進んだ。直したところを今朝また誤字脱字を探したり表現が変なところを直したりする。これがまあ、けっこうある。部分的に直していくと、その結果全体のバランスが変になることもありそうな感じで、そのあたりも考えなければなあと思う。

昨日は午後、気分転換に日本橋に出かける。しかし、街を歩きながら、この街のどこに出かけても、小説の中の海に突き出した岬の突端に広がる夜の草原の場面よりもいい場所にいけることはないんだよなあと思うと、なんだか不思議な感じがし、ややぞっともした。小説の中の風景がリアルに感じられるようになってきたことはいいことだとは思うけど、逆に現実世界とのコンタクトを失いつつあるんじゃないかという気もしたりして。まあたぶん、あんまり深く考える必要もないんだろうけど、要するに相当集中力は高まっている状態なんだなと思う。

もたない男
中崎タツヤ
飛鳥新社

日本橋丸善でいろいろな本をみたが、結局買ったのは中崎タツヤ『もたない男』(飛鳥新社、2010)。スピリッツで「じみへん」を連載していた人だ。この人の仕事場の写真は衝撃的で、物がほとんどゼロに等しいくらいに、ない。ボールペンでもインクが減ってくると上のほうを削って捨ててしまうというくらい、徹底した無駄嫌い。自分の生原稿さえぜんぶ燃やしてしまったというところには何というか鬼気迫るものを感じる。まあ、私はものが溢れた、というかほとんど本だけど、そういう生活をしているのだけど、何というか根本的な、生理的な部分では分かるところがあるなあと思う。ただ私は物をうまく生かして豊かに生活していく、ということを意識的に選択しているところがあり、そこは中崎とは違うなと思う。ただ、徹底的に自分のしたいようにしたらこうなったという中崎の行き方もまた強い衝撃力を持つわけで、少なくとも自分のライフスタイルを見直すきっかけにはなるなと思った。実際、私のまわりもどう処理したらいいかわからないものの山であることは事実で、そういうラジカルな圧力(というかインパクト)を感じさせるものに向き合うと自分もどうにかしなければという気が起こる。そういうふうに言えば村上隆的な表現をすれば中崎の仕事場というのはアートであると言っても過言ではない。

「書きたいこと」を「そのまま」書くことはそう難しいことではない。というかこのブログはわりとそういう風に書いているが、「書きたいこと」を「書きたいように」書くことはそう簡単ではない。逆に言えば、このブログは「書きたいように」は書いてないんだろうなと思う。そのままの荒削りなまま書いていて、書きにくいことのぼかし方もいい加減だから返って変になっていることもある気がする。

書きたいことを書きたいように書く時間と体力と気力を確保することが、今の自分にとって一番大事なことだなと思う。

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