今年読んで面白かった本(3・4月編)

Posted at 10/12/27

今年読んで面白かった本の続き。3・4月編。

2月頃から創作の関心が批評から小説に移ってきて、2月には「少女タイラント」という小説のアイディアの断片を記したブログを少しやってみた。3月から4月はそのあたりをもとに短いものを書いていた。とはいっても、詩なのか小説なのか分からない感じのものが多く、まだまだ焦点が定まっていない。何を書きたいのかが分からないけどとにかく書きたい、という感じで手探りの時期だったなと今では思う。

ストップ!!ひばりくん! コンプリート・エディション1
江口 寿史
小学館クリエイティブ

3月に読んだものをざっとブログで見てみてもあまり印象に残っている本がない。マンガはいくつかある。江口寿史『ストップ!ひばりくん』のコンプリートエディションが完結し、ものすごく久しぶりに江口寿史のマンガを買った。これもツイッターでフォローしていたからだ。当時のブログにも書いたがやはり『ひばりくん』を最後まで読みたい、という思いが消えてなかったのだけど、このコンプリートエディションでお蔵出しや書き足しまで含めて総ざらえされていて、ああ、『ひばりくん』は本当に終わったんだなとようやく思うことが出来た。

おもいでエマノン (リュウコミックススペシャル)
鶴田 謙二,梶尾 真治
徳間書店

もう一つ印象に残っているマンガは鶴田謙二『思い出エマノン』と『さすらいエマノン』。これは神保町の書泉グランデ地下で見かけたのがきっかけで、全共闘世代のノスタルジアマンガかと最初は思っていたけど、もっとずっとよかった。やはりマンガ家は絵がうまい人は無条件にいい。

勝利は10%から積み上げる
張栩
朝日新聞出版

普通の本では、囲碁界の麒麟児・台湾出身の張栩の『勝利は10%から積み上げる』が印象に残ったことは覚えている。これは阿佐ヶ谷の『書原』で見つけたもの。将棋は戦闘的なゲームだが囲碁は戦略的なゲームだ、という記述を自分のブログで読んでそうだなあと改めて思った。私のしている勝負が将棋より囲碁に近い、と書いているんだけど、うーんどうかなあ。最近はわりと将棋に近くなっているかもしれない。

ルヴァンの天然酵母パン
甲田 幹夫
柴田書店

4月に読んだものでは『ルヴァンの天然酵母パン』とか。自然食品のパンを毎朝食べるようになったのはいつ頃だったかな。少なくともこの頃にはそういう習慣になっている。ネットで調べてあちこちのパン屋さんに出かけるようになった。父の納骨をしたのが4月の終わり。ちょうど郷里は御柱祭の時期。4月の最初に山出しをし、5月の連休に里曳き、建御柱。その合間を縫って納骨をした。とても天気のいい日だった。

こんなふうに死にたい (新潮文庫)
佐藤 愛子
新潮社

そのせいか、印象に残っているのが佐藤愛子『こんなふうに死にたい』。自伝的な作品。あとは岡田暁生『音楽の聴き方』か。音楽をどう系統的に聴いていったらいいか考えていた時期なので、いろいろ参考になった。

音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)
岡田 暁生
中央公論新社

しかしなんと言っても4月の最大の行事は村上春樹『1Q84』のBook3が出たことだろう。これも例によってさっさと読んだ。

1Q84 BOOK 3
村上 春樹
新潮社

いま読み返してみるとこの時期、私はもう一つ前の長編を書き始めていたようだ。まだ何が書きたいのか焦点が定まらないままとにかく書こうと思って書き始めた作品。でもこの作品を書くことで、いろいろなものが思い出せたし、次へのステップには確実になった。お蔵入りにはなるが、お蔵入りにすることで自分にとって一つの大きなステップを踏む作品になった気がする。そういうものもあるんだなと思う。

『1Q84』。村上の作品はどういうわけか私自身の人生とシンクロしてきてしまうものがあるのだけど、この作品も、Book1・2とBook3の間で父が亡くなるなど、妙にシンクロしたものがあった。1・2は青豆と天吾の二つの章を繰り返すが、3では牛河が加わる。これが最初最も驚いた点。3は結局、1・2で広げたことの落とし前をつける作品、だったと思う。しかし『ねじまき鳥』で出てきた牛河さんがついにこんなに成長した姿を見せたなんてと思うと凄い。牛河というのは村上にとって何なんだろう。小説家としての業のようなものだろうか、と今ちょっと思った。

面白い面白くないとか好きとか嫌いとかはともかく、私の人生に干渉して来てくれちゃうと関わらざるを得ない。多分私は、これからも村上のファンではないといいつつ読者であり続けるだろう。敵性読者というわけでもないが適正読者でもなく。いや、案外これくらいのスタンスが適正なのか。

今このエントリをアップしようとしてイメージを含めて見直してみたら、本当に好きな本が並んでいるなと思った。多分それは大事なことだと思う。

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