指定席と自由席の雰囲気の違い/人の心には魔が差すということはある/『ロミジュリ』と『タイタニック』
Posted at 10/10/27 PermaLink» Tweet
昨日。父の一周忌の法要の準備の関係で帰郷途中に新宿の伊勢丹に立ち寄る。帰郷の乗り継ぎ以外で新宿に出たのは久しぶりだった。日本橋で銀座線に、赤坂見附で丸ノ内線のにり替えて新宿三丁目で降りる。いつもは10時半に家を出て東京駅で本を見たり弁当を買ったりするのだが、昨日は時間をゆっくり見て9時半に出たら10時半には話が終わって、乗ろうと思えばいつも乗っている12時の特急より一本前の11時に乗れる状況になった。さてどうしようかと考えて、とりあえず紀伊国屋のアドホックにマンガを探しに行く。昨日東京駅周辺の書店を3軒回っても見つからなかったきづきあきら+サトウノンキ『セックスなんか興味ない』(小学館IKKIコミックス、2009)の第1巻を買って駅にダッシュしたら5分前。急いで弁当を買って自由席に乗った。あずさ回数券は本当は指定を取れるのだが、指定をとっている暇がなかったので自由席に飛び乗ることにしたのだ。この切符は事前に指定を取らなければ指定席には座れない。以前はそうでもなかったのだが、最近は厳しくなった。
セックスなんか興味ない 1 (IKKI COMIX) | |
きづき あきら,サトウ ナンキ | |
小学館 |
自由席はけっこう混んでいて、窓側の席は3両とも全部埋まっていた。通路側はけっこう開いていたけど。3両目の入り口から三番目くらいの席のビジネスマンの隣に座る。この人は最初寝ていたが途中でおもむろにiPadを取り出して何やら仕事を初めてあらすごいと思った。八王子の直前でトイレに行ったらその帰りにその人が下りるのにすれ違った。できるビジネスマンは八王子まで特急に乗るのか。(笑)で、窓側の席に移ると、今度は黒い服を着た小柄なおばあさんが「隣いいですか」と言ってきたのでどうぞと言った。私はそれからしばらく寝たいたのだが、おばあさんは端然と椅子に座り続けて、韮崎で前後の席の人たちが降りたので別の席に移ったがその時もちゃんと会釈して行った。いつも感じることだけど、自由席は人の動きがダイナミックだ。指定席はここは自分の席だ!というドーンという感じでみんなのっているけど。ときどきは乗ると面白いんだけどね。
最近いい本に当たることが多いなあと思うのだけど、昨日読み終えた小西浩文『生き残る技術』(講談社α新書、2009)もいい本だった。森博嗣と言いこの人といい、全然知らなかった人でたまたま書店で見かけたものがいい本だったことが多くて「出会いの季節」なんだろうなと思う。今ちらっと読み返した荒木経惟『いい顔してる人』(PHP、2010)もやはりいい本で、自分の進むべき方向を示唆してくれている部分があるなと思ったのだけど。久しぶりに読み返した清岡卓行『アカシヤの大連』(講談社、1970)の「朝の悲しみ」もシンプルな詩情にあふれていい小説だった。
生き残る技術 -無酸素登頂トップクライマーの限界を超える極意- (講談社プラスアルファ新書) | |
小西 浩文 | |
講談社 |
『生き残る技術』は、限界を超えるときにおこること、というテーマを追求している。日常でもいろいろ限界を越えなければならない時があるわけで、その時人間に起こる、特に心におこる現象について書いていて、私はとても参考になった。
夢に向かって進んでいるとき、恐いと感じることがある。その時、どのように考えればいいか。そういうことは、多かれ少なかれ誰でも感じること、考えることだろう。この本は、8000メートル峰に無酸素で登る、という人間の限界に挑戦するときに起こるいろいろなことについて述べている。それらのいくつかの心の動きは自分でも経験した覚えのあることだし、いくつかは今まで理解できなかったけどこういうことなんだなと感じることがある。
私自身に起こりがちなのは、焦りや不安によって人を信じられなくなることだ。そうして後から考えれば何であんなこと言ってしまった、やってしまったんだろうというようなことをやってその人との関係を失う、ということだ。それで限界を超えられずに終わってしまう。まあ本当に限界を超えるときには案外やすやすと越えたりするのだが、しかし苦労して越えた経験も持っておかないと同じことが二度できない。小西の本にはそういう状況に応じて人間の心にはどういうことが起こりやすく、その時のどう対処したらいいかが書いてあって、何か単純に役に立つと思う。大事なことは、人の心には「魔が差す」ということはあるのだということだ。しかしそれに支配されてはいけないのだ。
普段何でもない時は心のそういう弱い部分は十分守られている。とくに大人になると自分の弱点というのは無意識にせよ大体自覚しているので、そういうものをあらわにしないように気をつけている。しかし、いざという時になるとそういう面が出てくる。仕事で重要な局面とか、初めて好きな異性と一線を越えるとかいうとき、つまりいわゆる「テンパッた状況」に、そういうことが起こりやすい。山で生きるか死ぬかの事態になったときとかはなおさらだろう。そういう場面で人間の弱さとかみにくさとかが一番はっきり表れやすい。
結局、そういう時にものをいうのは心の強さなんだけど、じゃあ心の強さとか弱さとかいうのは一体何なんだろうと思う。心にも体みたいなものがあって、デリケートな部分があったり、傷ついていたり、昔痛めた古傷があったり、今病んでいたりするところが心の中にもあって、心のその部分が不安とか怯えとかいうものの発信源になるのではないかと思う。そして、そういうものに心全体が覆われてしまわないようにできるのが強さということなんだろうなと思う。
心の中に、昔痛めた古傷みたいな部分がない人間なんていないだろう。そしてそれがときどき疼くことは誰にでもあるんじゃないかと思う。しかしその時に、自分の心のみを――自分がこれをやりたくて、そのために自分が苦労しているんだという自覚――たよりにして乗り越えていける、これはある意味訓練のたまものなんだろうと思う。
こういうことって、漠然と思っていても今まで心の中であまりうまく整理されていなかったのだけど、小西のこの本は本当に分かりやすい。小西のもう一冊の『勝ち残る!「腹力」トレーニング』と並んで、しばらく座右に置くことになりそうだ。
***
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早く着いたので銀行関係の仕事を一件片付けられた。そのあと自室に戻ってしばらく休んで、仕事に出る。いくつか仕事がたまっていたり、お休みの人がいたりしたのでちょっと忙しく。10時まで仕事。帰宅して夕食、入浴。母に愉気し、寝る前に『タイタニック』を少し見て、就寝。私の中のレオナルド・ディカプリオのイメージは『ロミオ+ジュリエット』でアロハシャツを着たロミオを演じる悪ガキだったのだけど、『タイタニック』のジャック・ドーソンは少しいい人すぎる感じがするな。この映画ではディカプリオがずいぶん騒がれたけれども、この映画の見所は20世紀初頭の、もう誰も知らないけれども懐かしいベルエポックの残影みたいなものが色濃く現れた『タイタニック』という巨大客船の、ゆったりとしたペースで流れる時間そのものなのではないかという気がする。まだ50分くらいのところ。ジャックの絵が上手い、という話まで来た。
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今朝は5時過ぎに一度目が覚めたが二度寝。寒くてトイレに行ったあとまた寝た。ストーブをつけて少し暖かくなってから、6時過ぎに起きてモーニングページを一時間ほど書いた。それから、お世話になった先生がなくなったので9時ごろ弔問に出かけ、帰りに父の墓に墓参りして帰ってきた。
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