『ハウルの動く城』/『タイタニック』/『セックスなんか興味ない』/イマジネーションを馬鹿にしてはいけない
Posted at 10/10/26 PermaLink» Tweet
なんだかんだ言って、結局『ハウルの動く城』を見た。
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一見した感じは、普通にいいファンタジー映画だった、という感じだ。Wikipediaをみると原作とはかなり変えてあるところがあるようだけど、宮崎らしい仕上がりに成っているのではないか。若いソフィーが魔法で急に年を取らされて老人の苦しみを知り、また逆に老人になることで若いときに気にしていたものに囚われなくなる様子など、私などにとってもよくわかる。年を取ることのプラスとマイナスの表現がうまくストーリーに乗っている。
ソフィーが劇中で年を取ったり若返ったり頻繁にすることが全然説明されていないが、ソフィーに関しては魔法を解くとか解かれるということが全然関係なくなっていってしまうのが面白い。『千と千尋の神隠し』までは割ときっちりしていたそういう「お約束」が『崖の上のポニョ』では全く消滅していて面食らったのだが、『ハウルの動く城』でそういう面では既に消え始めていたんだなと思う。
テーマは他にもいくつかある。たとえば「家族」。ハウルとマルクル、それにカルシファー(火)だけの時にはそれぞれ役回りが決まっていたのが、ソフィーがやってきて家族の結束が始まり、それにもと荒地の魔女の老婆とサリマン先生の使い犬のヒンが加わってついには悪魔のカルシファーまでが家族になってしまうという展開。やはりそれは家族の中心にソフィーがいるからだ。ソフィーって、物語によく出てくるお母さん、あるいは長女のの役回りなんだけど、こういう存在というのはほっとする。原作ではソフィーも魔法の力を持っているみたいだけど、映画ではそれを曖昧にして、魔力というよりはむしろ愛の力で呪いを解いていくみたいな感じになっているのが宮崎監督の狙いなんじゃないかなと思った。
もう一つは善と悪、契約と自由、みたいな話で、ハウルの心の中に自由で優しいものを見出して心引かれていくソフィーの心に対して傲慢で小心で気ままな魔法使いハウルが「守りたいもの」を得て「愛する人のために戦う」ように気持ちが変化していったり、子どものハウルが魔法使いになったところに実はソフィーが立ち会っていて、すべての鍵を握っていたのはソフィーであることがわかったり、ソフィーの心の変化に応じて物語が伸びたり縮んだりする感じがする。すべては心のあり方次第、というのももう一つのメッセージなのかもしれない。
物語の大きな枠は原作に任せて、宮崎監督は自由に場面を作って行っているように思われる。原作ものの方が好きに作れるという面はあるんだろうなと思うけれども、メッセージ性の強さという点では原作から手がけた作品とは違う。まあ情念の込め方が違うし、見るほうもそのぶん楽に見られるということはある。良し悪しはいえないが、原作ものだけでは宮崎監督自身が物足りないだろうと思う。
***
昨日は本当に調子が悪くて、午前中はどうなるかと思ったけれども、昼前に友人から電話がかかってきて少し話したらだいぶ調子がよくなった感がある。だいぶ何というか人の作った話を見て人のペースに乗せられていた感じがした。世の中自分で動かなければ何もはじまらない。神様や真実はこころの内にある、というけれども、つまりは自分が「やりたいと思うこと」が自分にとっての真実であり、神であるといえばいいすぎかもしれないが、自分が頼りにすべきというか動こうとするときに基本的に従うべきものはそれしかないのであって、難しい局面、つらい局面でも何のためにこれをやっているのかと思ったときに、自分がやりたいと思ってやると決めてやっている、自分にはこれしかない、と思ってやることが大事なんだと思う。このあたり正確に書くのは難しいが、心の内の火のようなものをけさないようにしないといけないし、それは結局心の持ち方なんだなと思う。
いろいろなものを取り入れるのはいいんだけど、そこで自分のペースを崩したらいけないんだと思う。私も今回またはまったなあと思うのは「コンプリートの欲望」であって、後一本見れば宮崎原作・脚本・監督の作品は全部になる、みたいなコンプリートの野望がでてしまうと、明らかにオーバーペースだなと思っても見てしまう。で、だからなんだといえば、人に説明するときに「全部見たよ」と言えるだけのことで、つまり人のために自分の体調を犠牲にしてしまっていることになる。人のためと言っても結局は自分の説明しやすさのためで、自分のためと言っても自分の本当にやりたいこととは違う。そういうものに囚われてしまうと後がよくない。「コンプリートの欲望」というのは森博嗣が『自由に生きる』か『創るセンス』に書いていた表現だが、鋭い。その通りだと思う。
デスクの位置を動かしたのでPCの本体とデスクの上の距離が変わり、PS2でマウスを使っていたのがUSBに換えなければいけなくなって、USBの口が足りなくなったのでヤマダ電機でUSBのハブポートを買ってきた。ついでに昼食をサンクスで買って帰る。雨が降ったりやんだり。
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2時過ぎにだいぶ体調も落ち着いてきたので読みたい本があるなと思って日本橋に出かける。なるべく近いところと思って日本橋丸善へ。地下でモーニングページ用のノートを買って新書とコミックスを探すが両方なかった。こりゃ困った、どこに行こうと考えて、八重洲ブックセンターまで歩いた。5階の新書売り場で小西浩文『生き残る技術』(講談社α新書、2009)を買う。6階のコミックス売り場はほとんどなくて、8階の写真集売り場で客船の写真集はないかと聞いたら船関係は3階だといわれたので、3階の工学関係の売り場に行って『シップ検定 公式読本 客船編』(海事プレス社、2009)というのを買った。少し読んで、そうか豪華客船の内装とか知りたかったら『タイタニック』を見ればいいんだということに気がつく。
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それから東京駅地下の栄松堂とかを見て、大丸の地下で夕食を買い、結局丸の内の丸善まで行く。2階のコミックス売り場で、最近気になっていたきづきあきら『セックスなんか興味ない』(小学館IKKIコミックス、2010)を買う。1、2巻買うつもりだったが2巻しかなかった。まあこういうものが欲しければ最初から神保町とかに行けばよかったんだが、本を探していろいろ歩いているうちに自分のやりたいことをやるためにこうして歩き回っているという実感が湧いてきて元気が出てきたのでこれでよかったんだなと思った。
地元の駅で下りて、宮崎駿『ハウルの動く城』とジェームズ・キャメロン『タイタニック』を借りて帰る。『ハウル』は上に書いたとおりだが、『タイタニック』は最初の30分ほど見た。客船の中の風景は、思った通りだいぶイメージがわいた。しかし195分か、すごい超大作だな。最初の30分がたってようやくディカプリオがケイト・ウィンスレットを初めて見かけた。なるほど上流階級の籠の鳥の女性と下層階級のエネルギッシュな男の恋愛という黄金パターン。こういう超大作はこういうふうに枠組をはっきりさせておいた方がいいということなんだろうなと思う。あんまり疲れる前に見るのをやめる。最初の潜水の場面とかが結構長かった。
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『セックスなんか興味ない』は文字通りセックスに関する短篇集。まあいろいろだね。大体こんな感じかな、と思ったものが入っているのだけど、もちろんその一つ一つまで想像できるわけではなく、人のセクシュアリティの多様さというものや、恋愛とセックスの不思議な関係というようなものが描かれていて面白い。
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今朝は6時起床。夢うつつのときに、不思議なたくさんのイメージに取り囲まれてぼーっと幸せな感じがしていた。その一つ一つのイメージに対してつい批評心が湧いてしまって一つ一つはくだらないな、とか思ってしまったのだけど、はっとした。イマジネーションでものを書こうという人間にとって、その一つ一つのイメージを馬鹿にしたり切り捨てたりすることは自殺行為だということに。あぶないあぶない。美輪明宏の声をした「夢の老婆」が出てきてイメージの大切さを説いてくれた。そうだよな。イメージは物語の源泉で、同じイマジネーションを読む人も共有することが出来る、あるいは同じようなイマジネーションが読む人の心の中にも湧くから物語が成立するのだということを忘れてはいけない。そういう意味では、イメージというものはどんなものでも大切なものなのだ。慌てて消すのをやめたイメージの中からも、今書こうとしている物語に必要な登場人物を一人拾い上げることができた。これは大事なことだ。ゆめゆめ疎かにしてはならない。
ディカプリオは『ロミオ+ジュリエット』はロードショーで見たのに『タイタニック』は売れすぎてるという理由で見なかったんだよな。少し見ただけで、よく売れた理由はよくわかった。ぼちぼち見よう。
小西浩文『生き残る技術』。これは面白いなあ。『勝ち残る!「腹力」トレーニング』も思いのほかよかったが、この本もかなり面白い。
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