サン=サーンス『オルガン付き』とかポー『黒猫』とかサンデル『正義』とか
Posted at 10/10/06 PermaLink» Tweet
今日は午前中松本に出かけからだを見てもらう。少しおなかの調子を調整してもらった感じ。行きの車の中でFMをつけていたら聴いたことのある曲が流れてきて、曲名が全然わからず何だろうなあと思っていたのだけど、さっき番組表を調べてサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」だということが分かった。そうか、サン=サーンスか。何かあんまりフランスっぽく感じなかったけど、サン=サーンスといわれると腑に落ちるものがある。こういう曲を書く人だという感じがする。
エドガー・アラン・ポー『黒猫・アッシャー家の崩壊』を読んでいる。今「黒猫」「赤き死の仮面」「ライジーア」の三篇を読了。75/191ページ。怖いというのか何と言うかどうも作りものっぽい可笑しさといえばいいのか、そういうものを感じてしまう。B級ホラーに感じる可笑しさというか。「赤き死の仮面」なんて子どものころは本当に怖かったのだが、それは子どものころにしか感じることのできないある種の特権なのかもしれないな。お化け屋敷とかも本気で怖かったからなあ。そういう意味では大人になった今では感じるべきところを別のところを開いて読むべきなんだろう。ゴシック的なごてごてした悪趣味の世界というのを好むか否かという趣味の問題に限定されてしまうと、何というか「怪奇と幻想の館」が好きかどうかということになってしまうし、まあ私にとってはそれはそれで面白いと思う、という程度のことなので、そればっかりではどうかなという気がする。
黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫) | |
エドガー・アラン ポー | |
新潮社 |
そうなると解釈、ということになるけど、「黒猫」も「ライジーア」も「アヘン中毒」というキーワードが出てきて、どうもそれに引っ掛かる。私はどうも薬物というものには生理的に相当強い拒否反応があるような気がする。天の邪鬼、というキーワードはよくわかる。理性では抑えきれない、理性的なものに対する強い反感みたいなもの、というのはもちろん私でも感じないわけではないのだけど、どうもそれが純粋にぶつけられるとどうもあまり面白く感じられない。この三篇の中では、あいかわらず「赤き死の仮面」が好きかな。私が子どものころ読んだものでは国王プロスぺローは出て来なかったけど、この寓話的な構造は私の好きな話のパターンではあるようだ。
昨日、特急の中で『これから「正義」の話をしよう』を読了。がっつり取り組ませられたという感じ。著者は幸福、自由、美徳という順番に正義について考察し、最終的には美徳の立場に立つ、ということを表明して、何が正義かということについてもっと議論を戦わせて行こう、ということを言っている。オバマが斬新なのは、ケネディら伝統的なリベラル派と違い、積極的に政治に美徳という側面を導入し、それについて議論しつつ前に進むことを提案している、ということなんだなと思う。いずれにしても、読み終えた時の感触と一日たった今との感触はまた違うので、自分の中で安定するまで少し時間がかかるかもしれない。
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学 | |
マイケル・サンデル,Michael J. Sandel | |
早川書房 |
同性婚をめぐる問題で、結婚の意味を子孫を残すことではなく、愛情に基づくもう一人の人間との独占的で永続的な個人的関係だ、というように定義しなおすことで問題を乗り越えて行く、という司法的・立法的プロセスを示しているが、それは結婚というものを自由な個人の間の自由な結びつきだから例えば三人で結婚してもいいだろう、というような立場は排除しているわけだ。一対多の結婚を認めると言うのはチベットやイスラムの例にあるように今までも珍しくないが、同性同士の結婚を認めると言うのは歴史上かつてなかったことではないかと思う。
まあそういうものの是非はとりあえず置いておいて、そういうものが議論によって選択されて行く過程というものを著者は示している。まあこのあたりになるとちょっとなかなかにわかには賛同しにくいところもかなり出てくるのは確かなのだが、多様な社会において共通善を志向するためにはお互いに意見をぶつけ合い、学び合い、討論し合うことによって乗り越えて行く可能性を探るべきだ、という著者の主張は、理解はできる。ちょっと楽観的かなとは思うが。
しかし、正義というものが偏狭なものである必要は別になく、政治的プロセスによって幸福・自由・美徳という異なる正義の源を実現して行こうとする方向性は面白いと思った。いずれにしても先に書いたように、まだ自分の中でこの本の位置づけが安定していないので、また思い出したように書くことがあるかもしれない。
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