人が旅に出て探し求めるものは本当はいつも自分自身かもしれない
Posted at 10/09/23 PermaLink» Comment(2)» Tweet
昨夜から強い雨が降り、今朝は雷も鳴って今日はどうなることかと思っていたが、先ほどから雨も上がり、静かになってきた。このまま静かな状態で行くだろうか。空気は澄んでいて、秋の空気だ。垂れこめていた霧も上がり、街のかたちもきれいに見えて来た。
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昨日は昼前に蔦屋に出かけ、『宇宙兄弟』の第11巻を買った。初回限定でホワイトパズルがついている。これはJAXAの宇宙飛行士選抜試験の巻で出て来た真っ白なジグゾーパズルだ。開けるのがもったいなくてまだ開けてない。しかしパズルつきなので普通の単行本より少し高くなっている。スーパージャンプが発売日なので買おうと雑誌コーナーに行ったら宇宙兄弟のムッタの表紙の新しいモーニングがおいてあって、発売日が早まったことを知り、一緒に買う。今週は『ピアノの森』の掲載週なのでまずは載っているか確認しようと目次を見たら、ある。しかし、そのページを探したても掲載されていない。ページをめくっていくと休載のお知らせがあった。ここのところ順調すぎるくらい2号に1号の割合で掲載されていたので、休載されて逆になんだかほっとしたところもある。きっとストレスもかなりたまっているのだろう。物語の展開もハードになってきたし、読者としても温かい目で見てあげたいと思う。ゆっくり休息していい作品を上げてほしい。
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それからレンタルDVDのコーナーを探す。見たい映画は、『スターウォーズ』の第二作はすぐ見つかったが、『気狂いピエロ』が見つからない。帰って来てからネットで調べるとあるようだったので、スターウォーズを返却に行った時に見つけて借りて来ようと思う。
夜まで仕事をして、帰宅、夕食。母にいろいろ仕事関係の話をされ、いらいらしてしまった。仕事から帰ってきて疲れている時にそういう話はあまりしたくない。母にすれば他にそういう話をする時間がないと言うだろうけれども。
今朝は豪雨。朝用事があって職場に出て帰ってきたあと、『ゲゲゲの女房』をBSで見ながら朝食を取っていたら雷の影響で映らなくなってしまった。仕方がないので地上波で8時からもう一度見る。地上波はケーブルテレビなので一応雷は関係ない。お彼岸なので、食後に墓参りに行こうと言っていたのだが、豪雨なのであとに回すことにした。
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アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』読了。読むのにだいぶ時間がかかったが、しかしこの本は最後まで読めるという予感はあった。分かりやすい、読みやすい。須賀敦子が訳すようなヨーロッパの現代小説にはどうも途中から読めなくなってしまう作品がままあるのだが、この作品は、最後まで読めるぞというオーラが漂っていた。しかし他の本も並行して読んでいたからいつになったら読み終われるのかよくわからなかった。
白洲正子『風姿抄』とマイケル・サンデル『これから正義の話をしよう』も並行して読んでいる。これらの本も面白いのだが、読んでいると「自分に今必要なのは面白い小説だ」ということを感じてしまう。そういうわけで『インド夜想曲』を少しずつ読んでいた。
タブッキは今までも『逆さまゲーム』を読み始めたことがあるが、挫折していた。イタリアの現代小説は今の自分には縁がないかなという感じもあったのだけど、丸善日本橋店でたまたま目に入った『インド夜想曲』は、今まで読んだ小説にはない、突き抜けた透明な世界があるように感じる。この感じが何なのか読んでいてもなかなかつかめず、それがこの小説に集中しきれない理由だったのだが、戯れにインターネットで検索して見て、この話が「友人を探しているように見えて本当は自分自身を探している」小説であることを知った。そうだったのか、と思う。すぐに納得できたわけではないが、薄紙が剥がれるように納得出来て行く感じがした。
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人が旅に出て探すものは、本当はいつも自分自身かもしれない。考えてみれば中学生の自分が衝撃を受けた映画、『旅の重さ』も最終的には自分自身を探すストーリーだった。考えてみると、私の書くストーリーの主人公も、基本的にはいつも何かを探している。最近の主人公には、探すのをあきらめていたり、探すのを忘れていたり、あるいはむしろ自分が探すのではなく何物かによって探されていたりするストーリーになったりもしているが、基本的には探し求める話、探求がテーマになっている話が多い。
それはつまり、探し求めることが私の実存に関わる行為だからなのだと思う。私は研究者ではなくて探求者だなと思う。研究者は何を研究しているか知っている。探求者は探し求めるものが何であるのかを知らない。知らないまま探して、これがそうだろうか、これは違うだろうか、と考えている。ときどき大事なものを探し当ててこれで探すのはもう終わりだ、と思うこともあるのだが、何かを探し当てたら探し当てたで、また次のものを探し始める。
タブッキの小説も、最後に来て探し求めていた「友人」がなぜ見つからないかに気付く。それは、「友人」が偽名を使っていたからだ。そしてそれに気がついたとき、自分が探していたのは「友人」ではなく「自分」であることに気づく。とすると、「友人」とは「自分」が使っていた偽名だったのかもしれない。であるならば、いくら探しても見つからなかったはずなのだ。
そしてそれに気がつくのは、南インドの深い闇の情景の中なのだ。「私」はボンベイに降り立ち、マドラスに向かい、ゴアへ行く。ボンベイはイギリスのインド支配の拠点であり、ゴアはバスコ・ダ・ガマ以来ポルトガルの植民地だった。インドの深い闇の中で光るヨーロッパ文明の残光を、読者は強く感じる。しかしそれはもうすでに崩れ落ちている。スラム街の診療所の話やバス停であった人間と思えない姿態をした予言する少年の話も闇が濃いが、今の時点で一番印象に残っているのはゴアの修道院の図書室で夢に見た気の狂った老人だ。彼の言葉は読み直してみるととても予言的で、この旅の意味を示唆している。『旅の終わり』でも印象に残るシーンはたくさんあったが、もうあらかた忘れてしまった。しかし、人の生というものが本質的に抱えている闇をインドの情景や四国の遍路道の情景が生々しく表現していて、それがこれらの作品を成功させているのだと思う。
人生は結局、闇の中を自分だけをたよりに歩いて行くことなのだが、私は何か光を発するものを探しているのだと思う。それを探そうとするのは、光があることを知っているからなのだと思う。探求者はときどき、光を目にすることがある。そして光の中に包まれていることを感じるのだが、やがてその光もまた漆黒の闇であることを知って、更に高次の光を求めざるを得ない。そうやって人は地獄から煉獄へ、そして天上へと上っていくのではないか。『神曲』のダンテのように。その光もまた自分自身なのだが。
また雨が降ってきた。それも強く。
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"人が旅に出て探し求めるものは本当はいつも自分自身かもしれない"へのコメント
CommentData » Posted by Ken-T at 10/10/11
半年ぶりかと思います。時々アクセスして読ませていただいます。本格的に作家活動を始めたのかと想像しながら拝見しています。「探究者」そして「アメ的なジブリ」という向上心と冷静な着眼に共感・感心します。また、光を天命とせずに自分自身とする点も達観されているなと思いました。私はまだ門弟の身分かして、つい、何かに頼ってしまいます。前回は、「転ばぬ先の杖ならぬ知識」の旨、書きましたが、この「知識」-咀嚼できていないとだめですね。そして、「時間」というブレンドは必修ですね。「時間」の価値について述べられていたので、私も大切にしなければと改めて感じました。そして、この「時間」~ワインのように活動しなくても時間とともに熟成していく点~に気付くセンスも大切だと改めて感じた次第です。その気付きには適度な緊張感とゆとりが必要なのかしら?昔の哲学者が、思考の時間を何よりも大切にしたというお話は、このブログで知ったのだったでしょうか・・・これからも元気に頑張ってください。
CommentData » Posted by kous37 at 10/10/11
>Ken-Tさん
コメントありがとうございます。まだまだ全然至らないものですが、思ったことを書かせてもらっています。
熟成する時間が必要なのはまさにその通り。でもその間何をやってすごすのか。自分のやりたいことの本道から極力ずれずに取り組んでいくことが大事なことだと思います。道を失っても、自分のやりたいことを常に問い直していればいつかは気づくでしょう。私はとても長い回り道をしたと思いますが、戻ってくることができたと自分では思っています。そうすれば、その間の時間は味方にもなってくれます。回り道が長ければ長いほど失われたものが多くなるのは仕方ありませんが、それもまたこれからの道のりで生かしていくよう心がけることしかそれを無駄にしない方法はありません。
人生は永遠ではないので、この人生で成し遂げられることは無駄にせず成し遂げて生きたいものだと思っています。