うますぎて真実味がない小説

Posted at 10/08/03

用事で昨日の午後帰郷した。今朝も朝からずっと用事があり、帰ってきて一休みして仕事。新しい仕事が二件も入っていたのだけど、ぼちぼちという感じだ。

三四郎 (新潮文庫)
夏目 漱石
新潮社

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本は少しずつ読んでいる。『三四郎』は211/284ページ。3/4くらい読んだか。美禰子という女性のいたずら心というか、河合奈保子「けんかをやめて」的な世界というか、まあそういうのを面白いと思うかどうか、そういうのに手玉に取られる三四郎の実直さに好感を持てるかどうか、というところがポイントかもしれないなあと思う。でもなんというか、人物造形はさすがだなと思う。まあ記号的な人物も結構多いけど、美禰子はよく書けてるなあと思う。

春の草 (日経ビジネス人文庫)
岡 潔
日本経済新聞出版社

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岡潔『春の草』90/177ページ。まあ思い出話が中心で、昔に岡潔を読んだ時よりは面白いとあまり思わないな。なぜだろう。

現代の古典解析―微積分基礎課程 (ちくま学芸文庫)
森 毅
筑摩書房

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森毅『現代の古典数学』56/349ページ。止まっている。まあもうちょっと飛ばし読み的に読んでみてもいいかもしれない。

東京奇譚集 (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社

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村上春樹『東京奇譚集』94/246ページ。うーん、村上春樹ってうまいなあと改めて思った。最初の短編「偶然の旅人」のたまたま同じ本を読んでいた中年女性と自分の姉との不思議な符合。乳癌、という誰にとっても(女性にとってだが)切実な題材を使う使い方が上手い。語り手がゲイであることが話の雰囲気を自然にしている。村上はそういうふうに、一つ一つのピースを「これでないとうまく当てはまらない」という感じに組み上げるのが上手い。しかし逆に言えばうますぎる。のが鼻につく。上手くくみ上げるために出てくる人物をゲイにもすればおしにもつんぼにもする、という感じのところがあり、そういう障害者の使い方は松浦理英子が批判してたりしたそうだ。そういう意味でメフィスト的な部分が村上という作家にはある、と改めて思った。「ハナレイ・ベイ」のどうしようもない若者たちとの会話なども実に手際よく処理しているのだけど、そこに村上らしいデオドラントさがあって、それも鼻につく人にはつくだろうなと思った。ああいう世界を描くには、もっと不器用さがあった方が真実味がある気がする。そう、村上の描く世界というのは、特に短編では、うますぎて真実味がない、というところがあるんだと思う。

まあ今日はこんなところで。

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by Luke Peterson

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