『ストップ!!ひばりくん』が浄化された/天然酵母のパン屋/死ぬ瞬間とか新しい倫理とか
Posted at 10/03/08 PermaLink» Tweet
昨日から今日にかけて。いろいろなことをやりながら。風邪を治すのにプラスになっているのかどうか分からないことも多い。うちでじっとしてるばかりが能じゃないだろう、と思って動き回っているのは、体温が大体36度台後半だからだが、昨日も今日も帰ってきてすぐ計ったときは37度2分あった。普段はめったに測らないので変動がある気がするが、基礎体温ではないけれども普段から計っておくと変動しているときの様子が分かるから計っておくといいかもしれないと思った。野口整体でも体温と脈拍と呼吸数は判断材料にすることがあるので、自分の体の観察の一環として少し習慣付けてみようかと思う。
考えてみたら、中学生のときに「野口整体ってすごいな」と思ったのは、右脇で測った体温と左脇で測った体温が違う、ということを指摘されたときだった。もちろんそのことだけではないのだけど、体温というのはわりと重要な指標であることは野口さんの著書にも書いてあるし、今までおろそかにしすぎたかもしれない。
ストップ!!ひばりくん! コンプリート・エディション1江口 寿史小学館クリエイティブこのアイテムの詳細を見る |
昨日は昼食後神保町に出かけた。新御茶ノ水のがいあプロジェクトに立ち寄ろうと思ったら仕舞っていた。書泉ブックマートで江口寿史『ストップ!!ひばりくんコンプリートエディション』全3巻(小学館、2009-10)を一気買いした。最初は3だけにしようかと思ったが、勢いのあるときに買ってしまえと思い。それから三省堂と東京堂を見て東京堂で野口晴哉『風邪の効用』(ちくま文庫、2003)を買ってマザーズに行き、レストランでテイクアウトの880円詰め放題(もっと入るよといわれたが)のごはんとおかずを買い、マーケットで生姜の蜂蜜漬けと生姜湯を買った。なんで生姜尽くしになったのか。風邪を引いているせいだ。昨日はわりとあっさり帰り、家で『ひばりくん』をじっくり読んだ。
『ひばりくん』は80年代マンガ黄金期の作品の中でも、当時のメジャー誌の中でいちばん好きな作品だった。既に大学生だったから『少年ジャンプ』を買うのも気が引け、ときどき立ち読みしてはコミックスがでたら買うという感じだったので、今でもジャンプコミックス4巻は持っている。ただ、いかにも中途半端なところで終わっているので、常々先が読みたい、一段落するまで読みたいと思っていた。
ストップ!!ひばりくん!コンプリート・エディション 2江口 寿史小学館クリエイティブこのアイテムの詳細を見る |
ついに念願がかなった感じで、1巻から読み始める。表紙が完全に新しいイラストだ。何しろ当時と絵柄が違う。中身は、連載時にカラーのところはカラーで、二色刷り(黒と朱?)のところは二色刷りになっていて、いろいろと感慨深かった。2巻は未収録作品がひとつあって、なんか違和感があるなと思いながら読んだのだけど、帯を読んで納得が行ったのだが、作者として納得が行かずに単行本に収録しなかった作品(二回分)を、今回のコンプリート版編集に当たってひとつにまとめ、新しく書き下ろしたのだという。線が違うし背景の描き方も違うので、その当たりに違和感を感じるのは当然だったのだ。いくら江口寿史でも、28年前と同じに描けるわけがない。
ストップ!!ひばりくん! コンプリート・エディション 3江口 寿史小学館クリエイティブこのアイテムの詳細を見る |
第3巻は初めて見る作品がずいぶん多くてやはり読み応えがあった。表紙のイラストは、ツイッター上で下書きが公開されていたもの。読者も漫画家の皆さんもみな「ありがたや~!!」という感じで拝んでいたが、それが表紙になって、なんだか実際ありがたいものになっている。1、2巻もそうだが、ジャンプコミックス(以下JCと表記)に収録されたときには連載時と順番が異なっているものもいくつかあるし、結局収録されなかったものもいくつもあるんだということがわかった。私はJC「ひばりくん」は何度も読み返したけれども、そのせいで「ひばりくん」の世界はそこに収録されたものだけで完結してしまっていたのだけど、こうして読んだことない作品が出てくると本当はもっと広い世界だったんだなあとじんわりした気持ちになる。
特にJCに未収録の、当時の原稿のものは胸がきゅんきゅんするといっていい。何で自分は今までこれを読んでなかったんだろうとジャンプを毎回買ってなかった自分を責めたくなるような感じだ。最終回の「激ちゃん」は、「少年漫画は死んだッ…」という台詞ばかりが有名でどんな作品なのか全然分からなかったが、ぶっちぎられたあとを26年後に書き足すという荒技でついに完結させ、なんというか、「ひばりくんの続きを読みたい…!」という26年越しの思いが、ついに鎮魂させられたという感じがする。そう思うのはいろいろ理由があるけれども、多分今までもこうしたコンプリート版が出されてもそういうことはしなかったのは、やはり絵柄がもう変わってしまったからだったのだと思うし、今回それをも顧みずともかくも完結させたその江口先生の、作者自身も引きずってきた思いがここに浄化されているのを見るともう何もいえない…という感じがするからだ。本当に、これで終わりなんだ…という思いがする。本当に「26年後の江口寿史の絵」でかかれた「ひばりくん」をみると、そう思う。巻末に没カットがいくつか収録されていて、どれもそれなりに面白い、というか、「こういうふうにもなりえたひばりくん」という感じでまだ見ぬ懐かしさのようなものを感じた。ああ、こういうものは手放しで褒めてしまうなあすべてを。
風邪の効用 (ちくま文庫)野口 晴哉筑摩書房このアイテムの詳細を見る |
『風邪の効用』は全生社から出ているものを持ってはいるのだが信州の方においてあるので、東京で読みたいときのためにちくま文庫版を一冊買っておいた。内容が微妙に異なるところもある気がするが、今のところよく分からない。何だか昨日は「エディション」によって違う、既に原エディションは持っているものばかり買ったんだなということに今頃気づいた。
Landreaall (11) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)おがき ちか一迅社このアイテムの詳細を見る |
『ひばりくん』を読み終わったあとなぜか『ランドリ』モードに入ってしまい、『ランドリオール』の特にウルファネア編をじっくり読んだ。最初に読んだときにわりとはしょって読んでしまってから、どうも細部がよく分かっていなかったのだが、なぜかあまりこの当たりは読み返してなくて、登場人物のそのときそのときの心情がよくつかめていなかった。今回はわりとそのあたりがよく読めてよかった。
ということが日をまたいで月曜の午前中まで続く。モーニングペ-ジも書かずに読んでいて、一段落ついたらもう昼近くになっていて、今日の予定の行動のタイムリミットになった。といっても体調によってはそれを取りやめる考えもあったのだが、体温が安定しているので出かけることにした。声はまあまりよくないんだけど。
行く店を二つメモして出かける。まずは千代田線で「代々木公園」へ。山手通りの歩道橋を渡って富ヶ谷。「ルヴァン」へ行く。これは西村佳哲が『自分の仕事をつくる』で紹介していた天然酵母のパン屋。カフェもやっていてその場で食べられるということが分かったので昼食時間にと思って。店に行きつくと、あまりに私の持つ「自然食の店」とイメージにぴったりの店で逆にちょっとびびったが、窓際の席に座って「ゴマみそサンドイッチのプレート」を注文。出てくるまでの間にモーニングページを書く。店員の人はみな生き生きと働いていて、何だか客の私もあんまりのんびりしたりくつろいでいたりしたらいけないんじゃないかという気分になってくる。それが急かされるようないやな感じというのではなく、やっぱり働いているのが人間の正しい姿だよな、と自然に思ってしまうような。経営者の甲田さんもときどき目の前を通ったりして、「ああ、この人なんだな」と思う。でてきたのは菜の花と人参を煮たのにゴマみそをかけたサンドイッチと、薄いドレッシングで味付けされたレタス、それに自然な味のマーマレードを添えられたパンが二かけら。レタスが美味しい。菜の花と人参なんて、こんな単純なものがこんなに美味しいなんて、という感じ。二つのパンもかなり大きく、食べきれない感じで休み休み食べる。顎がだいぶ運動した。パンが残っていたので一息入れてからコーヒーを注文。割とオーガニックな味だが美味しいコーヒーで、パンをお茶請けにして飲んだ。満足。
それから店舗のほうに回り、いちじくのパンとレーズンのパンを買って袋に入れてもらって店を出た。帰りは井の頭通りの横断歩道を渡り、山手通りの下をくぐって駅に戻った。
英単語ピーナツほどおいしいものはない 銅メダルコース清水 かつぞー南雲堂このアイテムの詳細を見る |
もしおなかが余裕があったら同じく西村佳哲の『自分をいかして生きる』にでてくる黒森庵という蕎麦屋に行こうと思っていたのだけど、それどころではなかったので新御茶ノ水へ。今日はがいあプロジェクトは開いていた。英語の参考書でひとつ目当てのものがあったので三省堂へ行ってみたがどうも予想より面白くなく、他のを見て『英単語ピーナッツ』を3巻買った。これは先日友人が面白いよと教えてくれたもので、確かにいいなと思ったので買ってみた。今日はどうも本をじっくり見たい気になって、マンガのところやイラスト本のところを見て、中村佑介の作品を見たら『アジカン』のアルバムがほしくなり、神田でCDはどこで買えばいいのか分からずうろうろしているうちにディスクユニオンに行けばいいことが分かって高岡書店の隣のディスクユニオンで『ファンクラブ』を買った。
ファンクラブ後藤正文KREこのアイテムの詳細を見る |
そのあとでちょっと気になった作品があった高岡書店をのぞいたが、絵は思い出せるんだが作品名が出て来ないのでここには書けない。それを買うかどうか考えながら歩いてどうせなら書泉グランデの地下も覗こうと思って下に行き、いろいろ考えたけど買わなかったのだが、1階に上って何気なく文庫を見ていたら父の葬儀に来てくれた父の友人が熱心にこの著者は面白いと勧めてくれたキューブラー・ロスの本があった。中公文庫で何冊かでているようだったが、その1がなかったので河岸を変えて、東京堂で見たら全部あったのだけど、結局その1の『死ぬ瞬間』ではなく、講演を収録した『「死ぬ瞬間」と死後の生』(中公文庫、2001)を買った。まだちゃんと読んでないのでよく分からないけど、スイスで三つ子として生まれ、ポーランドでホロコースト生き残りの少女と会い、医者になってニューヨークに渡り、見捨てられた精神病患者たちと対話し…という人生を送った人らしい。立ち読みした『死ぬ瞬間』では、患者が死を宣告されてからそれを受け入れるまでの心の変化について詳細に書いてあるようだったが、このあたりたしか野口晴哉『人間の探求』でも取り上げられていたと思うし、もし面白いようだったら取り上げて比べてみてもいいかもしれないと思った。ただそちらの方は本も厚いし専門的・論理的な感じがしたのでまずは講演本を、と思って買ったのだった。
「死ぬ瞬間」と死後の生 (中公文庫)エリザベス キューブラー・ロス中央公論新社このアイテムの詳細を見る |
ついでにもう一冊と思い、物色して今道友信『エコエティカ』(講談社学術文庫、1990)を買う。この人は私の大学在学時代は保守反動の大物として有名で、私の友人らも何人か最終講義のときに野次を飛ばしに行ったのがいたが、今考えてみたら心無いことをしたものだと思う。まあ逆にいえばまだ全共闘時代の残り火みたいなのがあったともいえるんだけど。私はこの先生の授業を一度だけ受けたことがあったが、「藝術」という字を黒板の真ん中に書いてなんか難しい話を深刻な顔をしてしていたという印象しかなく、反動なんだかなんなんだかもよく分からなかった。美学の教授というふうにしか見ていなかったので倫理学の本も書いてるんだへえという感じはあるのだけど、社会の変化に伴って倫理も新しく立て直していかなければならないという作者の主張はよく分かるし、宗教的でない意志的な倫理というものを、一度ちゃんと考えてみてもいいのではないかという気がしたようで、この本を買ったのだった。まあ最近とみに強くなっている「政治的な正しさ」的な押し付けがましい倫理感(今年のアカデミー賞はその最たるもので、イラク戦争への反省・植民地主義への反感・イルカ漁糾弾の隠し撮り正当化など、民主党政権下のアメリカのイヤな面が強く出ている)でなく、「保守反動」なくらいの人のほうが読みやすいだろうとも思ったし。読んだ感じでは割と面白い、というより共感できる感じがする。
エコエティカ (講談社学術文庫)今道 友信講談社このアイテムの詳細を見る |
けっこう2時間くらい散策したあとでがいあプロジェクトにより、弁当と無農薬のあきたこまちを1キロ買って帰る。帰ってきて体温を測ったらやはり37度2分だった。今はもう6度9分に下がっているが。なんか今日は買出しの一日だったな。
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