アイデンティティについて考えていたら、けっこうわからなくなってきた。
Posted at 10/01/05 PermaLink» Tweet
今日から仕事。しかし、朝雪かきをしていたらいきなりぎっくり腰が出てしまい、立ったり座ったりがきつくなってしまった。何とか用事はこなせてはいるが、運転するときも腰が少しきついときがあって、全く困る。道場に電話して、先生にどうしたらいいか伺ってもらって、対処法を聞いてやってみる。楽にはなるが、完治というわけにも行かず。やることをいろいろ片付けてからもう一度横になって少し休んだら、すっかり気分が後ろ向きになったりして困った。
最低になったあとで職場に出る。でも職場に出ると気持ちが張りが出る。まあ仕事始めだからなあ。しかし立ったり座ったりが多いのでそのあたりはきつい。
まあ少し様子を見てみようと思う。
***
「大鏡」読了。面白かった。これは抜粋なので、また機会があったら講談社学術文庫版か何かで全訳を読んでみようと思う。
「小林秀雄をこえて」。中上と柄谷の対談を読了。これはまあ、大体昨日書いたようなことだった。アイデンティティというものを、彼らは「偶然性/恣意性をあたかも必然であるかのように見なす」ことによって生じるもの、としていて、なるほどそういう考え方もあるかと思った。次の柄谷の論文、「交通について」でこのことについてはさらに述べられている。
「いま、ここ」に「ほかならぬ自分」がいる、ということの不思議さ、「歴史は一回だけであり、だからこそわれわれは歴史に固執する」というのがアイデンティティの根拠だ、と言っていいんだろう。まあ、しかし考えてみると、私はこういう論理にはもともとけっこう違和感を持っている。たまたま入った学校に愛校心を持て、と言っているような感じだからだ。しかしまあ、アイデンティティの根拠と言うのは確かにそういうことでしかない。日本の歴史が素晴らしいとか文化が素晴らしいとかいうのは自分のアイデンティティを日本に持つその意味づけのための付加価値のようなものだ。私の場合は、たとえば日本神話をよく知っているということが、自分が日本人であることのアイデンティティの根拠のようなものになっている。無意識のうちにそうやって私は自分を日本に縫い付ける作業、あるいは日本を渡しに縫い付ける作業をしていたんだと思う。
もう一つアイデンティティを感じたことは、たとえば自分が物語の登場人物ではない、ということだった。自分はナルニアの登場人物ではない。ピーターやエドマンドのような冒険は出来ない。アスランにも会えないし、朝びらき丸にも乗れないしチャーンの都に行くこともない。自分がどんなに憧れても、自分がナルニアの住人になることはない。自分は今ここにいる日本人の少年なんだ、という自覚だった。つまり負のアイデンティティ、「~でない」というアイデンティティも昔からけっこう強く持っていた。
若いころはいろいろな国に旅行に行くのが好きだったが、最近はすっかり出不精になったのもそういうことと関係があるなと思う。ヨーロッパにいったときはそうは思わなかったけれども、アメリカに行ったときは自分がアメリカ人ではないということをかなり強烈に感じたし、韓国でも自分は日本人だと言うことをかなり意識させられた。ヨーロッパにいったときは、自分が日本のことを全然知らない、ということにかなりショックを受けた。そのあと、外国旅行をしなくなって、主に国内旅行をするようになった。青森県と宮崎県以外は日本中すべての県に行った(少なくとも通った)ことがある、というのも、あまり意識はしていなかったがある意味アイデンティティの確認作業だったんだと思う。しかしこれもまた、四国や東北へ行くと言葉だけでなくがかなり違っていて、自分が東北人でないとか四国人ではないとかいうことも思った。
そういうことを言い出すと、自分のアイデンティティを持てる範囲と言うのは相当狭くなっていってしまう。割とそういうのは不毛な感じがするスパイラルだなと今書いていて思う。
アイデンティティと言うのは自分と何かを同一化することで自分の存在する根拠を証明しようと言う試みだが、考えてみたらあまり科学的ではないし、私はあまりもともとそういう性向のない人間だったと思う。だからむしろそういうものを持っている人を見てそういうものを持っていると生きやすそうだなと思ったからそれを真似ようとした、というところもある。案外そう生きやすいわけでもないのだが、日の丸や君が代は尊重する「べき」ものであって、自然とそういうものの価値を貴いものと感じる、というわけでもない。アメリカ人や中国人が強烈なアイデンティティ、愛国心を持っていることをみて、日本もそうしないとまずい、と思うというようなレベルから出発している部分もある。
まあつまり、ナショナリティをアイデンティティにもつことは近代的インタレクチュアルのパスポートみたいなものだ、という風に感じる部分が大きいのだと思う。宗教に関しても同じだ。
まあそんな風に考えてみると、自分のナショナリティへのアイデンティティとか、自分が宗教をどういうふうに、いや、神というもの、超自然的なものをどのように感じているのかとかも、もういとど問題にしてみても面白いという気がしてくる。つまり、なんとなく自然に、というよりは、けっこう意志によって選択している部分がある、と言うことなのだ。自分の恣意による選択を必然として正当化している、とでもいえば中上的・柄谷的になるが。
まあしかし、その選択が正しかったのかどうか――必然は避け得ないが、意志による選択の結果であれば、それは「正しさ」を検証する気分がどうしても出てくる。ぎりぎりまで詰めての選択でなければ特に。
自分がナショナリティをアイデンティティとして選択したのは、たぶん無国籍的なことをいう周りの人たち――多かれ少なかれ柄谷や中上の影響を受けていたのかもしれない、いや同じ空気を吸っていたのだろう――への反発だったような気がする。それ以前の部分の形成は、もっと情緒的なものだ。
***
けっこういろいろなことを砂上の楼閣に乗せてきて、それを積み上げようとしてきて、それを「自由」だと思ってきたんだなあと思う。
自分が思ってきたいろいろなものを、もう一度改めて考え直してみて、汚れを落としたり本来の輝きを取り戻させて、自分の中をリフレッシュさせられるといいなと思う。思ったよりそれも楽しい。
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