父の死

Posted at 09/12/08 Comment(2)»

あったことを全部書くことはできないのだが。

12月4日。朝から病院へいき、父のそばについていた。ふだんならば1時ごろ帰宅して食事をし、仕事の準備をして出かけるのだが、その日はちょっと目が離せないような感じで、帰らずについていた。着替えをするというので部屋の外に出て目を離していたら、婦長さんが来て母は来ているかという。母に電話して部屋にいると先生が来て、今夜は越せないかもという。しばらくしたら、もう本当に危ないといわれ、呼吸の回数がとても少なくなって、「お父さん」と何度呼びかけても呼吸が戻らなくなった。それでも心臓が動いているのだけど、母が来て、何度呼びかけてもそれは戻らず、やがて心臓の鼓動も弱くなって、「確認」が行われた。そのとき、いったい何を考えていたのだろう。そこにいた人たちに「ありがとうございました」といわなければと思い、そしてそう言ったことは覚えているが、たぶん嗚咽を漏らしたと思うのだけど、あまりよく覚えていない。午後2時32分。

兄弟たちは、間に合わなかった。父が意識を失って以来、毎週土日に帰っては父の枕もとに交代でいたのだけど。それでも私と、そして母が父のそばにいて、ずっと手首を握って、かすかな脈拍を追いかけていたことを思い出す。父の浮腫んだ腕。その中に、あってほしい脈拍を探る。あると思えばある気がする、でも見失ってしまいそうな脈拍。視覚よりも聴覚よりも、触覚の方が原始的な、いのちに直結する感覚なんだろう。見たものも聞いたものももうぼんやりとしてしまっているけれど、触覚は今でも確かに残っている。

父の体はきれいにされ、4時過ぎに病院を、主治医やリハビリ医、世話になった言語療法士、婦長さんに見送られて出発した。うちについて、兄弟たちが集まり、また叔父たちや葬儀屋、もうなんだかわからないたくさんの人たちが集まってきて、なんだかわからないうちに私はすべての中心にいた。私は長男なので、喪主になったからだ。すべての中心にいるのに今どんな話が進んでいるのか、全然わからなかった。葬儀までのだいたいの日程が決まり、隣組に挨拶に行き、もう何をやったのかあまりよく覚えていないのだが、いや、そのときに書いたメモ書きなどを読めばたぶん思い出せるのだろうけど、まだあまり思い出したくはない。寝たのは3時近くで、6時にはおきなければならなかったのだけど、実際にはほとんど寝られなかった。変なものが寝床の周りで飛び回っていて、ブッダの悟りを妨げるマーラ(悪魔)とか、『バカボンド』の武蔵の周りにあるごちゃごちゃしたものみたいな感じだった。

土曜日は、朝お寺に行って葬儀のお願いをし、それからとにかく打ち合わせ、打ち合わせ、打ち合わせ。途中で気持ちが悪くなってしばらく休んだが、夕方には何とかなって、とにかく通夜の喪主の仕事は何とかできた。ひとつ終えて、ようやくものが食べられたし、その夜は寝られた。

日曜日は、12時に枕経を上げてもらい、1時15分に出棺。自宅前と職場前で地域の人に喪主挨拶。火葬場に向かい、そのしばらくあとで父は骨になった。

月曜日は朝7時から門悔み。地域の人が焼香に来る。9時に家を出て10時から受け付け、11時から葬儀。土曜日から練習していた甥姪たちが父に「ふるさと」を歌ってくれた。

一つ一つはまだ詳細に思い出したくない。

ツイッターやミクシイは携帯から投稿できるのでときどきは投稿したのだが、ブログの方はまったく更新ができなかった。

ネット上の各所からいただいたお返事もまだなかなか書く気にならず、不義理をしていて申し訳ないと思う。

いろいろとありがとうございました。

"父の死"へのコメント

CommentData » Posted by うさたろう at 09/12/09

お父上のご逝去、お悔やみ申し上げます。

文章を読んでいると、もう20年近く前の、私の父が亡くなった時のことが思い出されました。

CommentData » Posted by kous37 at 09/12/09

>うさたろうさん
お悔やみありがとうございます。

やはり経験してみないとわからないということは多いですね。父が死んで、自分の気持ちがこんな風になるとは、想像もしませんでした。いろいろな方が書いておられることがはじめてわかった感じです。

同時に父の人柄というのも、葬儀に参列していただいた方のお話や弔辞ではじめてわかったことも多いです。母は葬儀自体をやりたくない感じがあったのですが、無理にでもやってよかったなと思っています。

どうもありがとうございました。

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