生理的に受け付けない本を読む方法

Posted at 09/11/06

昨日。朝から何かと忙しく。朝食後山麓に行って話し合いをし、帰ってきて少し休んでいたら人が訪ねてきた。玄関で立ち話をし、フィリピンのお土産をもらう。近所で家の新築工事をしているので、重機の音がかなりする。山麓でかなり疲れたのでどうもうまく動けず、午前中は休んでいた。モーニングを何度か読み直しはしたが、目当てにしているマンガたちが今週はあまり動きがなく、少し残念。まあ毎週山場というわけには行かないのが連載マンガというものだが。

昼食後もあまり調子が上がらず、銀行に行く予定だったのが仕事の時間ぎりぎりになった。気疲れしているときというのは、頭が疲れているとか体が疲れているとかいうのと違って自分をどうケアしていいのかわかりにくい。今朝活元運動をしながらそんなことをつらつら考えていたが、ある箇所が「疲れている」ということはその箇所の動きが鈍くなっている、可動性が悪くなっているということだから、気が滞っていると言い換えてもいいわけで、気疲れしているというのは、特に頭の気が滞っている、頭だけではなくその影響で身体中の気が滞っているということなんだろうと思う。だから気の流れをよくする、つまり新鮮な気を入れるというのが一方法で、つまり気分転換がいい、ということなんだろう。そういえば最近、花も生けていないしどこかにちょっと立ち寄って景色を見たり本をのぞいたりもあまりしていない。一つにはそういうことが必要なんだろう。また、督脈とか任脈とか中国医学でいう経脈の流れと言うのも意識してみると面白いことが最近わかったので、このあたりも少し調べてみると自分の身体を整えるのに役に立つかもしれないと思う。


ウェブデザイン見本帳 実例で学ぶWebのためのレイアウト基礎
オブスキュアインク
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『ウェブデザイン見本帳』は一通り目を通した。自分のサイト作りもだいたいこういうデザインかなという例は見つかったのだが、これはデザインだけの本なので具体的にどうすればそういうデザインが出来るのかはまだわからない。最近のサイトは以前の単純なつくりとは違うので、自分の出来る技術、自分の用意できるソフトでそのデザインが実現できるのかどうかもわからないのだが、とりあえず一つ一つ前に進むしかないだろう。

今並行して読んでいる本は5冊。松岡正剛『多読術』、プラトン『饗宴』、草森紳一『本の読み方 墓場の書斎に閉じこもる』、ダンテ『新生』、吉川英治『鳴門秘帖』。一番読みやすそうなのは草森なのだが、どうもこれはもっと元気のあるときに一気に読んだ方が向いているという感じの本だ。『新生』これはときどき音読するといいかもしれない。『饗宴』と同じく、愛がテーマなので、この二つは一緒に読むといいかもしれない。『饗宴』も医者の話になり、ギリシャの医者など知らない世界の話なのでなかなか読みにくくなってきたのだが、音読してみるとなかなか調子がいい。『鳴門秘帖』これも活劇というか、昔の時代劇の映画を見ているようだ。『大菩薩峠』のようなモノクロにもできるが、かなり色彩に関して豊かな表現があるので市川右太衛門の『旗本退屈男』みたいな感じも想像できる。しかしやはりこれも時代が違うためか集中するのに少し時間がかかり、細切れの時間で読むとなかなか進まない。

多読術 (ちくまプリマー新書)
松岡 正剛
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結局今一番読んでいるのは『多読術』だ。現在137/205ページ。松岡の多読術を探るため、インタビュー形式で聞き出そうとしているという趣向なのだが、松岡を持ち上げすぎで読んでいて読みにくいのが難。松岡という人は私は、典型的な「広く浅く」の人だという感じがしてしまうのだけど、それはもともと私がそういう傾向の人間なので、そういう部分を評価しにくいしある種の近親憎悪的に評価を下げてしまうところがあるのだと思う。博覧強記といえばいいのだけど、どうもそう言いたくない感じがある。

私はだから「広く浅く」よりも「狭くても深く」に憧れる人間で、でも自分ではなかなかそうは出来ない。深く掘るためには広く掘らなければと思ってしまうしそれ以外の方法がよくわからない。松岡が広くたくさん読むための方法としてあげていることは自分がやったことのある方法が多い。まあそれをちゃんと実らせているところが松岡が偉いところなのだろうなと思うけれども、でもそれをやっても自分の欲しいものは得られなかった、というものでもある。

ただ、この本を読んでよかったと思うのは、彼のいう「編集」とか「編集工学」というものが少しわかったということだ。彼は文化現象すべてに編集という概念をあてはめているのだけど、彼によれば読書もまた編集という現象の一部ということになる。つまり、書く人は内容を文字にし書籍にして、いわば内容をエンコード(記号化?)する。読む人はその本を読んで記号を内容に変換して(デコード)して理解する、つまりその読書という現象そのものが編集である、というわけだ。

この考え方はとても面白いと思った。つまり、世の中でもてはやされているが自分が読めない類の本、たとえば高橋哲也『靖国問題』などを読むときに使えると直感的に思ったのだ。高橋の本は読み始めると、私などが読むと一から十まで間違っている、と思ってしまうので最初から全然受け付けず、読めないのだ。読めないものを批判することは出来ないので批判はしてないのだけど、しかしこんな見解が世の中にストレートに受け入れられては困る、と思っていた。松岡の考え方を応用すると、高橋はまず何かを読んでそれを自分に吸収するときに、つまりデコードの段階でかなり恣意的な、左翼的な強烈な偏向的な歪んだデコードをしているというふうに考えられる(あくまで私がそう思うということ)し、また書く段階でも相当嫌味な書きぶりで彼の特殊な個人的な嫌悪感を文章にこめる尋常ならざるエンコードを得意にしている、と解釈できるわけだ。(上に同じ)そうすると、この概念を用いれば彼がデコードの段階でどこを読み誤って(あるいは意図的に誤読して)いるのか、エンコードの段階で事実と理屈と感情をどのようにこき混ぜているのかを解き明かす、考える方法として応用できると思う。つまりあまりに間違いすぎていて体が受け付けないが世間的な影響力はあるという一番始末に終えないものも何とか批判できるのではないかと思う。

松岡という人に関しては、「講談社学術文庫などの解説に書いてあることをそのまま書いている人」、つまり「受け売りが多い人」という批判があったけれども、それはわかる気がする。多読の人というのはどうしてもその本に対する批判は弱くなってしまう、そんなことをしてる暇があったらほかの本を読みたいから、ということになるからだ。

しかし、読んでいて思うのは、やはりこの人は先生タイプの人なんだと思う。それも大学教授というよりは、高校の先生だ、彼の「編集工学」の概念と実践を除いては。この概念に関しては私もまだ本当にわかったわけではないので批判は差し控えるが、彼が書いている書評(彼の言によれば読書体験記、この言い方は生理的に私にはとても適合していて、その辺ちょっと悔しいのだが)の内容は「受け売り」っぽい部分が多いという感じは私にもある。しかし、「高校の先生」なら、「受け売り」は許されると思うのだ。高校の先生がオリジナルな内容の授業ばかりしていたら高校教育は成立しない。やはり学問伝統の上に乗った基本をちゃんと教える必要がある。その一方で、知の世界の楽しさを生徒に伝えていくのがやはりいい先生だから、自分が読んだ本の面白いところを自慢するようなところがあったほうがいい先生だと思う。あるいは編集者というものも仕事の内容が高校教師と共通するところがあるのかもしれない。だいたい多分、私も教員時代、そういうタイプの教師だったしそういうものを目指してもいたので、批判することはなかなか変な感じではあるのだが。

まあそういう意味で、普通の意味での「面白い本」というのとは(私にとっては)違うけれども、読むと得るもののある人は多いのではないかと思う。

***

と上記のことを書き終えて11時。それから山麓に出かけて、八ヶ岳など写真を撮ったり。帰りにホームセンターでたもを買って帰る。池に松葉がたくさん落ちて、排水口が詰まりそうなので。

車を運転しながら、今日の文章に題をつけるとしたら何だろうと考える。「生理的に受け付けない本を読む方法」ということにしようと思う。書き終えたらかなりすっきりして、結局こうやって書きたいことを文章にするのが一番カタルシスがあるし気分転換になる近道なんだなと思う。山麓からの帰りに川沿いのバイパスに出る。ここはスピードが出るし道が細いので運転に気合が入るのだが、考えてみたら最近楽な道ばかり走っていたなと思う。ちゃんと気合の入ることをすれば、気の流れというのはよくなるんだなと思う。本当に疲れていて危ないときはともかく、すこし回復してきたら気合の入る道を運転するという方法は一つあるなと思った。

ホームセンターでたもを買うついでにトルコキキョウを買って帰って家で生けた。花を生けるというのも、家の中を飾るだけでなく、いいかげんに使うと危ない鋏を使うということが気合の入る一つの理由だと思った。以前疲れているときに左手をざっくりやったこともある。

まあそれにしてもまずは文章を、それも気になっているけどなかなかうまく書けないことを書くのがいい。そのネタにめぐり合うかどうかは、やはり心がけ次第だ。

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