固定観念と強さともろさ
Posted at 09/10/07 PermaLink» Tweet
ツイッターのタイムラインを読んでいると関東ではだいぶ雨風が激しいようなのだけど、7日の9時45分現在、長野県中部では雨は降っていないし風もない。ただし寒い。昨日から職場でベストを着たのだけど、今朝はベストだけでは寒くて、ズボンも冬用のウールにし、靴下も厚いのにして上はフリースみたいのを着て机の前に座っている。朝食を食べにいったとき、母はストーブをつけていた。私の部屋ではまだ暖房はなるべく入れたくないので厚着をしている。でももう10月、このあたりでは朝夕に暖房を入れてもそうおかしくない時期になってきた。
昨日は10時の特急で帰郷。席は比較的混んでいて、9時過ぎに指定を取ったときにはもう窓際の席はなかった。新宿駅でシュウマイ弁当を買って乗る。少な目の弁当にしたつもりだったがやはりまだ量が多かったようで、帰宅後腹具合に問題があった。
出かける前に、『月刊全生』10月号の「11種、12種体癖について」というのを読みながら、今まで私は過敏であっても反応不全ということは考えたこともなかったのだけど、確かに適応不全というか、適応する働きが鈍くなるという傾向はあるなあと思った。それは、状況が変わっても古い状態にこだわり、新しい状況への適応を拒絶するということで、身体的なものでもあるけれども精神的な側面の影響が大きいのではないかと思った。
2001年に今の整体指導室に通うようになったのも、「モノが食べられない」という状態に陥ったときで、それはつまり新しい状況に飛び込んでいくことを体が拒否している、というときだった。そのころは考えすぎて考えすぎて、新しい仕事をはじめる前に特に悪いことを想像しすぎて体がおかしくなったという状態だった。実際にはじめてみればその症状はすうっとなくなっていった。思ったようではないことでなかなか仕事を軌道に乗せるのは大変だったけど。
それはからだが敏感だからそうなったのだと思っていたけれども、そうではなくて適応に問題があったのだということにようやく気がついた。そんなことに8年もかかるとは。「人のいうことにも適応できないからなかなか訳が分らない。説得しようと思っても分らないのです。そういうために、信念のある人のように思われることがあるけれども、それは信念ではなくて、適応困難という言葉で表現したらいい場合が多いのです。」
考えてみたら私はそういう状態に陥ることが教員時代もよくあった。そのときは自分が正しいとしか思えないから人のいうことを全く受け付けず、自分で自分を追い込んでいってしまう。自分が正しいのだから、自分が譲らないのはいいことだという考えから全く抜けられない。自分は信念だと思っていても、実は適応困難だという面も多分あったのだと思う。言葉にしてみたら多分そのときそうであったことはいまだに正しいと思うと思うけれども。しかしまあ、そこでとどまって動けなくなってしまっていたから、結局教員という仕事はやめざるを得なくなったのだ。
人を見抜く技術──20年間無敗、伝説の雀鬼の「人間観察力」 (講談社プラスアルファ新書)桜井 章一講談社このアイテムの詳細を見る |
特急のなかで桜井章一『人を見抜く技術』(講談社+α新書、2009)を読みながら、同じテーマにぶつかった。この手の本を読むときは最近大体線を引くようにしているのだけど、この本は線を引かないで読みたいという気持ちがあって、それはこの本から何かを吸収しようというより、本を読むことで桜井と対話したいという感じがあったからなんだと思う。
吸収するのはよいことだ、と一般には思われているけれども、それだけでは自然の摂理に反する、と桜井は言う。自然は「得たら捨てる」のサイクルで成り立っているのに、教育や学問は得る一辺倒になっている、というわけだ。その結果、学問などひとつのことを追究してきた人には強い固定観念にとらえられている人が多く、そこから抜け出せなくなってしまうという。
確かに自分は、そういうものを正しいとしてきたし、しかし、そこにある固定観念についてはいつも疑問を感じてきた。人の固定観念に対して、それを批判的に指摘しても、まず本人は受け付けない。それは変だなと思ってきたのだけど、もともと構造的にそうなってしまうものなんだというのはいわれてはじめて気がついた。自分の固定観念というのも、確かにそうやって形成されてきたであろうものが多いと思う。
そしてそれは、その固定観念が通用する世界であれば問題はないのだけど、生きている人間の世界、自然の世界ではその固定観念が通用しない場面はいくらでもあるのだ。しかしそれが正しいということが譲れないと、結局適応困難をおこして、どこかがおかしくなっていく。自分に起こったのはそういうことなんだということがわかってきた。
考えてみたら私は、「これは、こうあるべき」という考えが子どもの頃から強い。それがそうなってなくて起こったり憤慨したり抗議したり、でも受け入れられなくて泣いたり怒ったりいじめられたりということもよくあった。それではだめだなあと思って融通の聞く考えになりたいと思って相手のいうことに譲ったり理解しようとしたりしたが、それがエスカレートして相手のいうことを分ったふりをしてみたり、知ったかぶりをしたりしたことも多い。いつかそれに気づいてそういうことはやめようと心がけてはいるが。
しかし譲れないものは譲れない、というところもやっぱりあって、それは強さとして発揮される場合もあるけれども、もろさとして現れることもある。順調にいっているときは強いけれども、いざ逆境になって心に反することを受け入れざるを得なくなってしまうと、そのことが自分自身を破壊していく感じになってしまうのだ。
その「正しさ」が観念や理性に結びついている場合は見直しもしやすいしあるいはそれに依拠して力を発揮することもできるのだけど、その「正しさ」が感情や感覚に結びついているときは、受け入れられても不安が残ったり、受け入れられないとものすごく感情に衝撃や葛藤を感じたりすることになる。それが自分を激しく傷つけることになる。
意志や信念というのは自分で持っていればいいことなのだが、感情と結びついた「正しさ」というのは、どうしても人にもそれを共有してもらいたいと思うし、受け入れてもらいたいと思う。しかし他人は自分の思い通りにはならないから、どうすることもできない。
まあ学校というのは、先に書いたとおりある種の固定観念を育てる場所でもあるから、そういうものにとらわれやすくまたそういうものに疑問を感じる私のような人間は、生徒として短い期間在籍するのはともかく(大体あまり学校というものは好きではなかったのに、何で教師になどなったのか)教師として何十年もいるのはやはり無理があったということなんだなと思った。
自由に生きるというのは難しいことだ。
そういうことで、意志ってなんだろう、正しさってなんだろう、ということをまた考えてみなければと思った。自分が固定観念にとらわれやすく、それで身体的にもそういう適応困難的なことが出てくるんだということは、面白くないが確認させられた。
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