人がいる、という感じのする音楽/人の心にどう届いていくか
Posted at 09/10/02 PermaLink» Tweet
昨日。仕事10時まで。調子を悪くしたので少し休むかも、と言っていた人が来たので一安心。あまり無理しないようにと伝える。帰ってきて夕食。少し安心感があったせいで、食べ過ぎた。夕食はいつも夜遅いので食べ過ぎないようにしようと思うのだが、疲れたという思いがあるせいかつい食べ過ぎてしまう。食べると割合すぐに眠くなってしまうし、だいたい10時過ぎに食べても12時過ぎには寝るし、6時頃には起きるので、まあもう少し何とかならんかなと思うのだけど、この仕事の形態を変えるのは少し難しいし。田舎で社会生活をちゃんと送るためにはやはり6時には起きていた方がいいし。いろいろだ。
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あんまり疲れていて、電気もつけっぱなしで歯も磨かないまま眠ってしまい、4時半に喉が調子が悪くて目が覚めた。左足の方がやはり冷える感じがするので、また足湯をしてみたのだが、少しぬるめにしてしまったのか、あまり足が赤くならず。それでもそのあとで寝たら、起きたあと下半身に汗をかいていた。やはり季節の変わり目の時期、身体がうまく対応できてない部分が多いなと思う。『整体入門』(ちくま文庫)を読むと、この時期の調整は胸椎5番10番を正すことが眼目で、後頭部を緊しめ、捻り体操をするといいとある。頭部の手当をして、活元運動をすればいいということだ。やることをちゃんとやらないとなと思う。
6時半におきだして、思いついたことをモーニングページにメモし、すぐごみを捨てに職場に出かける。今週はなぜかゴミが少ないのはなぜだろう。楽でいいけど。帰ってきて朝食。腹具合がいまいちなのでパンを半分と温めた牛乳のみ。全く食べ過ぎだ。
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帰ってきてモーニングページの続きを書き、FMを聴こうとするとどうも雑音が入るので、フジ子・ヘミングのテープでも聞こうとカセットのエジェクトを押したら、中にテープが入っていた。見てみると、探していたビル・エヴァンス・クインテットのテープだった。かけてみると、こんな雨の日にはちょうどいいかなという感じの音楽。正確には癒し系とはいわないだろうけど、ビル・エヴァンズの音楽は優しい。疲れているときにちょっと優しい言葉をかけて、後はほっといてくれるような優しい音楽。聴いていて疲れない。邪魔にならない。ポピュラー音楽というのは自己主張が強くて聴いていると疲れるのが多いのだけど、ジャズはものによるが、こういう楽なものは結構ある。だからといってイージーリスニング的な毒気のなさとは違う。
イージーリスニングというのはそこに人がいるというのを感じさせない、無色透明な、無毒無害な感じがして、つかみどころがないし、聴いていて邪魔にならないというよりは、こういうものなら邪魔にならないでしょ、という主張が逆に強く感じられて邪魔な感じがすることがある。
ジャズはやはり演奏者がそこにいるという感じがする。最近そんなに聞いてないのであまり薀蓄的なことは言えないが、そう、ぬくもりというか暖かさがあるといえばいいのか。その「人がいる」という感じがこちらを安心させるということなんだろうと思う。イージーリスニングは、すべてとはいわないが、そういう存在感がぞんざいというか投げやりというか気が入っていないというか、ある意味あまりいい感じではないことが多いような気がする。まあそれは演奏者とか、アルバムやCDのつくり手によることなのかもしれないのだけど。ビル・エヴァンズはいい。
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とはいえ、私のマイベストのジャズピアニストはミシェル・ペトルチアーニだ。ペトルチアーニは小人症で、椅子の上に立って叩きつけるようなタッチでピアノを弾く人で、一度聴いてみたいと思いながら時が経ち、ふと思い立ってネットで調べたら既になくなっているということを知って愕然としたという思い出がある。最初にこの人のCDを聞いたときに、第一音で心を奪われるような感じがあった。その頃から、調子のいいときはペトルチアーニ、よくないときはビル・エヴァンズだな、という感じがあった。
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ということを書きながら、『ピアノの森』のエピソードを思い出した。主人公カイの先生である阿字野壮介と、雨宮修平の父、雨宮洋一郎の関係だ。阿字野は心を揺さぶる、聴いている人の心を動かさずにはいられない、ピアノを弾いて、雨宮父は学生時代からライバル心を燃やしていた。一方の雨宮父は癒しのピアノと呼ばれ、聴く人を平和な気持ちにさせる、マンガの中では現在の日本で一番の人気ピアニストだということになっている。修平のカイへのライバル心に雨宮父は自分の阿字野へのライバル心を重ねてしまい、それを感じ取った修平が重すぎるプレッシャーを感じてしまう、というような話だ。雨宮父の友人のクリスティナは「あなたのピアノの方が好きだし、代理戦争をさせるのはよくない」という指摘する。けれども、阿字野を越えたい、という雨宮父の思いがカイを越えたい、という修平の思いとオーヴァーラップして、物語の一つの基調を成して行く。
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そういえば、ビル・エヴァンスと並んで思い出すのはセロニアス・モンクだが、モンクのピアノはちょっと鬼気迫るような感じがある。山田詠美の『ベッドタイムアイズ』の中で、雨の日にベッドのなかで二人でレコードを聴き、「こんな日にセロニアス・モンク。」というフレーズが出てくるけれども、確かに雨の日に聴きたいような音楽ではない。
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そんなふうに、音楽というものは心を揺さぶるものもあれば心を落ち着けるものもある。私は、少なくとも若い頃は音楽だけでなく映画やアートでも心を揺さぶるもの系の方に強く惹かれていたし、そういうものがつくれないかと念じていたけれども、人にとって必要なのは必ずしもそうした心を揺さぶるもの系のものだけではないこともまた確かだ。先日なくなった庄野潤三の小説などはまさに心を落ち着けるもの系の典型のようなものだ。この世の中では、本当にいろいろなものが必要とされているし、いろいろなものを生み出す人がいる。一人の人間だって、何か一つだけあればいいというものでもない。世界を豊かにするために、いろいろなものを生み出していくのが人の営みなのだと思う。そういう意味ではトレンドとか傾向に惑わされることは本当はないのだ。
人の心にどう届いていくものを書きたいのか。そういう観点から文章を考えてみることもいいかもしれない、と思った。
それは、心の内側に入って、心を内側から暖かくし、心の氷を溶かして、動き出さずにはいられなくなるような、そういう文章かなと今ちょっと思った。書けるといいけどね。
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