ノートPCが突然ダウン/桜井章一『精神力』

Posted at 09/10/30 Comment(7)»

昨日。私は信州にいるときは2001年に中古で買ったSHARPのmebius(B5ノート)を使っているのだが、仕事中に突然PCの電源が切れて、うんともすんとも言わなくなってしまった。慌てていろいろやってみるが電源が入らない。いつもPCのことで世話になっている人に急遽来てもらったのだが、結局電源コードの接触がおかしく、曲げ方によって通電がなくなるということがわかった。たいしたことでなくてよかったのだが、電源コードを中古で手にいれてもらうことにし、いちおう大事なものはUSBメモリにコピーを取っておくことにした。

OSがWindows98(2ndEdition)なのでUSBメモリも使えるのが限られていて、今使っているのは1GBなのだが、ハードディスク全体のコピーが出来るかなと思ってマイコンピュータをみたらハードディスクが11GBだということがわかって驚いた。といっても使っているのは半分くらいなのだが。なにしろハードディスクなしの時代からPCを使っていたが、スペックのこととかあまり考えないでやってきたのでそういうところが間が抜けている。とりあえずデスクトップとマイドキュメントと、メールだけはコピーしておこうと思う。

***

精神力 強くなる迷い方 (青春新書INTELLIGENCE)
桜井 章一
青春出版社

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桜井章一『精神力』読了。これは、私が今まで何冊か読んだ桜井章一の著書のなかで一番面白かった。桜井はある種の超人だと思うが、だから彼のやったこと、いったことだけを追いかけていくとなんだか現実感がなくなるようなところがある。しかしこの本は桜井の元に寄せられたさまざまな悩み相談、質問の手紙などに対して桜井が答えるという形式になっていて、現代の若者(だけに限らないが)が抱えているさまざまな問題についてどう考えればいいのか、どう対処すればいいのか、どう行動すればいいのかについてのさまざまなヒントが示されている、という感じがする。その中には私自身の悩みとか問題点とかについて書かれているという感じがするところも多々あり、そういう意味では読んでいていたいところもたくさんある。また、世の中にはとんでもない質問をする人がいるんだなと思うこともあるし、ああ、この人は私がたどってきた悩みの道を今たどっているんだなという感じがするところもある。そういうふうにも読めるところが、この本の魅力なんだろう。

悩み相談、人生相談みたいなものは新聞や婦人雑誌などで昔から人気のあるコーナーで、ラジオでも子ども相談室みたいなものがあってなかなか面白かった。無着成恭とか阿部進とか、今となっては懐かしい人たちも、そういうところで生の声を聞いていたために親近感を持っているということはあるなと思う。

そういえば子どものころ、家に『家の光』か何かの別冊の法律相談の冊子があって、それがなんだか面白かったような気がする。まだ70年代だから今の相談とはいろいろ違うけれども、肉体関係になった男に捨てられてどうしたらいいのかわからない、みたいな話が出ていた。当時の私にはちんぷんかんぷんだったが、世の中にはいろいろなことがあるんだなと思った。今モーニングに連載されている『特上カバチ!』ではちょうど不実な男にたくさんお金を貸した上で捨てられて、それを踏み倒されそうになっている21歳女、みたいな話になっているが、こういうのがマンガと言う形式をとった新しい形態の法律相談ものだといえるのかもしれない。

それにしても、まあ法律相談などは技術的な部分が大きいのでまた話は違うが、悩み相談というのは結局相談を受ける人をどのくらい信頼できるか、ということが大きい。桜井という人はある意味ものすごい人だと私は思うので、真剣に読める。考えてみたら、昔は本というものはだいたい著者を信頼して読んでいた。もちろん頭から信じるのは危険だが、ある程度の信頼感がなければ本など読む気にならない。だいたいの本はだいたい信用できる、という前提のもとで昔は本を読んでいたわけだけど、ある頃からこの著者は絶対信用できない、という感じがむくむくと出てくるようになり、自分がおかしいのかと最初は思った。最初に強い拒絶反応を感じたのは何かいわゆる従軍慰安婦について書いてある本だった。一度そういう信用できない著者がいるということを理解すると警戒しすぎることにもなり、また自分が今まで信じてきたものがそれでよかったのか疑い始めたりして、ずいぶん大変だった。まあ今でも、常に自分の知識の中身は再検討する必要があると思っているけれども、思いがけないところでそういうことが出て来ると今でも焦ることが多い。知識というものは、そういう意味で当てにならないことも多い。

桜井の人生相談の回答には、基本的にそういう知識を疑え、という鋭い批判に発しているものが多い。考えてみたら呉智英もそうだし、小林秀雄やもっと昔ではヴィーコなど、自分が信頼できると感じる著者はみなそういうことを言っている人たちだ。私が大学院でフランス革命をやろうと思ったのも、フランソワ=フュレによる従来の、つまり進歩主義的/マルクス主義的なフランス革命論に対する批判を読んだということが大きかった。考え方を批判するのか、知識に頼る人間そのものを批判するのか、その批判の深さ、射程についてはみなさまざまであるが、みなそれぞれに現代文明というものに対峙する強さと大きさを持っている。

私が「学ぶ」ということが苦手なのは、その批判と学びの両立が難しい、うまく両立させにくい、ということがあるような気がする。学ぶ前から批判していたのでは話にならないし、また批判のための批判になっては昔の社会党のようにナンセンスだ。だから結局、何かを批判するときに、それをやろうとする私自身がいったい何を持っているのか、ということが大事になってくる。知識をもって知識を批判する、というのはある意味限界がある。せいぜい、伝統的知識によって近代的知識を批判する、というくらいのものだ。しかし桜井はより感性的な部分で知識を批判、というか知識に依存する現代人のあり方を批判しているわけだ。それは従来からよくある「頭でっかち」に対する批判ではあるのだけど、それも誰にでもいえる表面的なレベルのことであれば魅力がないが、この本を読んで感じるのは、その批判の投げかけ方が少なくとも私にとってはすごく新鮮で、いちいち感心する、ということなのだ。

だからこの本はとても私にとっては面白いのだけど、誰もがそういうものをこの本から汲み取れるかというとそれはよくわからない。しかし、人はあって見なければわからないし本は読んでみなければわからないので、何かに行き詰まっている人にはとりあえず何かのヒントがあるかもしれないとは言っていいのだと思う。またこの本も何度か読み返すことになりそうなので、これについて書くことがあるかもしれない。

"ノートPCが突然ダウン/桜井章一『精神力』"へのコメント

CommentData » Posted by shakti at 09/10/30

刺激を受けて、モーニング購入しました。私がマンガを購入するのはまれなのですが。。。たしかに全部佳作みたいな感じがします。余談ですが、榎本俊二がイラストで参加しているのは、ちょっと悲しいですね。あと、櫻井の精神力だったかな、これもついでのときにbk1で注文しました。これも面白そうですね。以前一回だまされたことがあったけれど(某脳科学社の本だ!笑)、今度はうん、なるほど、と強く納得しました。

CommentData » Posted by kous37 at 09/10/30

榎本俊二お好きですか。単行本では育児マンガとかもありますよね。イラストは、本谷有希子との押したり引いたりの関係が面白いですよ、毎週読んでると。やっぱりそういうナンセンス系の人が好きなのかな、shaktiさんは。

養老猛、つまらなかったですか。(笑)『バカの壁』は私は面白かったですけどね。後になればなるほど薄くなってはいると思います。

CommentData » Posted by shakti at 09/10/31

養老猛じゃありませんよ! オウムで売れっ子になってしまった、某脳機能科学者の法です。なお、勝間は購入してません、念のため。

CommentData » Posted by shakti at 09/10/31

よしながふみは、一回だけ読んで天才的だなと感心したのですが、今回のはなんじゃい!という駄作でした。疲れて、誤魔化した感じだ。

出産漫画は、男と女の壁を考えました。でも男と女の壁って、文学ではあまり感じないな。漫画でもたいした壁じゃないな、と思った。民族の差異のほうが大きいみたいだ。クッツェーだって、女役をやるが、黒人役はやらない。

CommentData » Posted by kous37 at 09/10/31

>オウムで売れっ子になってしまった、某脳機能科学者
ああ、苫米地英人のことですか。過去の記事を調べてみましたが、この人面白いとは私は書いていませんよ。読みたいと思って買いに行ったけどなかった、としか。(笑)こちらです。↓
http://www.honsagashi.net/bones/2009/03/post_1450.html
でもまあ確かに、読んでから書いたほうがいいですね。

>よしながふみ
『きのう何食べた?」は面白くなかったですか?私はわりと好きですよ、こういうゆるい感じのマンガは。まあ単行本買おうというまでには行かないけど。ジェンダーとか問題意識ないですしね。でもモーニングのような最も売れてる商業誌ではゲイのカップルを正面から扱ってるだけでやはり特異だと思います。『僕の小規模な生活』の出産シーンもそう。商業誌を読むときは私はわりと商業志の基準で読んでるなやっぱり。

>男と女の壁
野口晴哉を読んでいると、女は人間の男よりも雌ヒョウとか雌ライオンの方に近い動物だ、とか言ってますよ。(笑)まあそれにしても、「壁」という問題意識も最近ないなあ、私。

CommentData » Posted by shakti at 09/10/31

>「壁」という問題意識も最近ないなあ、私。

村上春樹のノンフィクションはなぜかNEWSWEEKに特筆すべき本のなかにありました。そこでまずは、約束された場所から読み、いまは最初の巻を少し筒読んでいます。結局、彼のエレサレムの壁発言は、ここに繋がってくるだろうなと思いました。

ポストコロニアル文学関係だと、コンラッドの闇の奥。
中村恵子は面白いことを言う。コンラッドのなかでは野蛮人として表象される私を読めるから面白い。

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今度のブログのテーマです。
教えている子は、櫻井を知っていた。
負けても良いから最善を尽くせというあたりか。

ええとブログなんですが、僕は将棋やるんですね、PC将棋です。
PCは強くて4段くらいあるのかな。それを相手に負けない将棋を指すというやり方っていうのですが、安全を求めて駒をがちがちに固めるようなやり方で勝とうというのは、ダメなんですよ。某銀や相懸かりという命知らずの乱戦を狙うと勝ち目がでてくるのです。桜井の哲学とちょっと似てるでしょ?というような馬鹿話。

CommentData » Posted by こうs37 at 09/11/01

エルサレム発言の『壁』と男女の壁は全然違う問題ではないでしょうか?

桜井の「哲学」で本当にすごいと思うのは、すべての生きるスキルは遊びの中から生まれてくる、というところかな。私は子供のころ読書が一番楽しい遊びだったから、読書の中から生まれてくるもの、というものについてもっと追求して行きたいものだと思っています。

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