「自分がしたいことがわからない」と思ったときに
Posted at 09/08/22 PermaLink» Tweet
宇多田ヒカルの「automatic」の歌詞に「It's automatic そばにいるだけで愛しいなんて思わない ただ必要なだけ淋しいからじゃない I just need you.」というのがあったが、この「必要」という言葉をどうとらえるか、というのはわりと難しいな、と思ったことがあった。私が聞くと、この「必要」という言葉はずいぶん冷たく感じるのだけど、女性にきいてみると「わかる」というひとが多かった。イヤ、それは正確じゃない。一人にしか聞いてなかった気がする。だからこれは全然一般化のできる話ではないのだけど、この「必要」という言葉に対する感じ方は人によって違うんだなと思った。
なぜそんなことを急に思ったかというと、朝起きたときにふと「自分は必要なことをしなければならない」と思ったからだ。必要なこと、というのは、理性的に考えて必要なことと、感情的に考えて必要なことと、たぶんもっとほかにも必要なことがある。必要なこと、というのはいろいろ思いつくのだが、実はあんまり普通の意味で必要というようなことではなくて、結構感情的な内容が混入していることに、考えていて気がついたのだ。
考えてわかったのは、実は私は「したいこと」というのを「必要なこと」と表現した方がしっくり来る、ということだ。つまり、「何がしたいのか」と言われてもぴんとこないのだけど、「何をする必要があるのか」といわれたらいくらでも出てくる。出、それは必要というよりはしたいことなのだ、はっきりいえば。しかし、自分の中ではそれを「したい」と表現することにどういうわけだかためらいがあって、「必要だ」といった方がおさまりがいい。「自分のしたいこと」が何かと考えてみてもわからなくなるということが私にはよくあるし、たぶんそういう人もたくさんいると思うのだけど、そういう人の中には私と同じように「したい」ということに抵抗があるけれども、「必要がある」というなら抵抗がない、という人も結構いるのではないかと思ったのだ。
ではなぜ「したい」ことを「必要がある」と言い換えたいのか、ということを考えてみる。一つには直接的に感情的あるいは本能的な、欲望を表に出した表現をすることに抵抗があるということ。「てれ」といってもいいが、そういう直接的な表現が洗練されてない、「頭の悪い表現」のように感じるということではないかと思う。
自分の中で考えて見るとこれは結構その通りで、「この展覧会には絶対行く必要がある」という方が「この展覧会には絶対行きたい」というより抵抗がないのだ。しかし、この表現が不正確であるということは自分でも自覚していて、なんか変だなとは感じている。必要って一体何の必要なんだ?展覧会に行かなくても死なないし。こういう表現を人がしているのをきくと実は結構鼻につく。「この展覧会には行く必要があるよね」といわれると内心「行きたいって言えよ」と思っていたりする。それは自分の中の葛藤の反映なんだなと今考えていて気がついた。
正直に言う、ということは結構難しい。特に自分との会話において。人との会話は洗練させていくと、本音を語らないと主張が変になるということもあり、どういうのが正確かというのが優先してテレとかかっこつけが逆に出てこない場合も多いのだが、自分との内的な会話というのはそういう違和感というものも考慮して言葉を選んでしまうので正直になれないことが多いような気がする。
しかし逆にいえば、自分がそういう言葉の選択の仕方をしがちだということに気づいてさえいれば、自分との会話にそういう言葉の使い方をしてもいいのだと思う。よく、自分の現在を把握するために「自分のしたいことを書き出してみる」というのがある、というか私はよくするのだけど、どうもあまり出てこないが、「自分が今する必要のあることを書き出してみる」と考えて書いてみると結構いろいろでてくるし、その中には必要というよりはしたいことがかなり含まれている。自分の中を洗いざらいするのが目的なので、別に抵抗のある正直な表現をしようとしてまごついたり、出しきらない感じにもやもやしたりする必要はない。
己を知る、というのはたとえばそういうことで、正直でない自分に自己嫌悪になってみたりするよりも、自分がどういう方向で自分に嘘をつきがちなのか、そういうことを知ってみることでもあるんだろうと思った。
Automatic/time will tell宇多田ヒカル,西平彰,磯村淳,森俊之EMIミュージック・ジャパンこのアイテムの詳細を見る |
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