裁判員裁判は、日本が変わるきっかけになるかもしれない/ニーチェって岡本太郎に似ている
Posted at 09/08/05 PermaLink» Tweet
久しぶりに時事ネタを書こう。ビル・クリントンが訪朝。北朝鮮としては、元大統領呼びつけに成功したということで大成功だろう。アメリカから何を引き出したのか。北朝鮮にとっては、結局アメリカはくみしやすい相手なのか。少なくとも民主党政権はそのようだ。あんまり変なことを約束していないといいが、人道問題に限るとはいえ、これは北朝鮮にとっては大喜びだろう。国連大使とかも異様に機嫌のいい顔をしていたし。
裁判員裁判。産経新聞のサイトで、裁判の一部始終をかなり熟読してしまった。裁判とはこういうもの、というのをプロが噛み砕いて見せているんだな、という感じが伝わってきてこれはある種の教育でもあるのだなと思う。しかし読んでいて思うのは、被告の人生歴の惨憺たるありさまだ。粗暴な犯罪を繰り返し、72歳でついに殺人を犯してしまう。犯行後も競馬に行こうとしたり酒を飲んだり。普通に考えると情状酌量は難しいだろう。また被害者が在日朝鮮人の女性で女手一つで子どもを育て上げた人であること。サバイバルナイフを刃渡り全部差し込んで指が背中にあたるまで突き刺している。
こういう何というか、ライフスタイルの人の犯す犯罪というものを、一般の裁判員が(といってもどういう人たちなのかは全然わからないが)自分が判断しなければならない問題としてとらえるというのはどういうことなんだろうと考えさせられる。普通に生きていれば、こういう人たちの犯す犯罪などというものに一生触れずにいた可能性も強いわけだから、そう言う人たちが実際にいるということを知ること自体が全くすごい経験だったのではないかと思う。一人の裁判員が体調不良で欠席して解任され、補充裁判員が任命されたりしたが、実際相当のカルチャーショックだったのではないかと思う。
ただ、裁判員になることによって社会の底辺でどういうことが起こっているのかということを多くの人が知っていくということは、日本の社会が成熟していく上で必要なことなのかもしれないと思った。教育問題などを論じていても、本当に困難な学校の実態などを説明しても、普通の人にはまず全く理解してもらえない。想像の範囲外にあるからだ。だから困難な学校の教師が辞めていく、病院勤務の医師がやめていく、つまり本当の問題がどこにあるのかを社会に理解してもらえないままその場を立ち去り、問題はさらに深まっていくという現実を変えるために、この制度は実は役に立つのではないかという気がしてきた。
裁判員になる、ということを前提として考えれば、人は自分のことにだけ関わって生きているわけには行かなくなり、否応なく社会への関心を持たなければならなくなる。そのことは、日本の社会にとっては確実にプラスなのではないかと思う。
多くの人は、日本の社会が一体どれだけ病んでいるのかを知って、愕然とするかもしれない。しかし実態を知るところからしか改善は始まらないだろう。
以上のようなことで、私はいままで基本的に裁判員制度に批判的だったが、考えを変えた。多くの国民が日本の社会の実態を深く知ることは、必ず日本がよくなることに繋がると思う。
***
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ショーペンハウエル。第一部「生涯」を読み終わり、第二部「思想」の164ページを読んでいる。ショーペンハウエルの文章は非常に高く評価されているらしい。哲学的な内容を、比喩を用いてわかりやすく説明しているのだという。彼の言葉には、「名言」と言われるようなものが多いというのもそのあたりにあるのだろう。
すべてのものには「存在する力」が内在しており、人で言えばそれは「生きようとする力」である。それは盲目的な意志で、仏教で言えば「無明」ということだろう。この世・人生を「苦」ととらえる考え方とかが、原始仏教に共通している。人生を苦と捉えることで倫理の根本を同情=共苦におく、という考え方も納得できる。ただこのあたり、ショーペンハウエルの系譜を引くニーチェが「同情」を否定してるわけで、どういうふうに理解していいのかまだ読まないとわからないところがある。
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まあショーペンハウエルも少々飽きたのでニーチェ『悲劇の誕生』をまた読み始める。しばらく置いて、ショーペンハウエルの言っていることを理解した上で読んでみるとまた理解が少し深まる感じがした。一度55ページまで読んだがノートを取ろうと思ってもう一度43ページから読み直してみている。
ニーチェって、岡本太郎みたいだ。「・・・アポロ的ギリシャ人は、どんなに驚いて彼らを眺めねばならなかったことか!しかもその驚きはいよいよ高まるばかりだったのだ。これらすべてのことが元来自分たちにもそれほど縁遠いものではないということ、それどころか、自分たちのアポロ的意識はただヴェールのようにこのディオニソス的世界を覆い隠しているに過ぎないという身の毛のよだつ思いが、この驚きに混っていたからである。」
芸術がバクハツしている。ニーチェは基本的に「生きようとする力」を全面的に肯定して生の哲学をつくっていて、それを「ディオニソス的なもの」と表現しているのだが、そのあたり岡本太郎のやろうとしていることとよく似ている。ニーチェは「柔らかな考えをもつことができぬ者は柔らかな脳を持つにいたる」とチェスタトンに揶揄されていたが、岡本太郎も晩年は認知症の症状がかなり進んでいたようだ。
ショーペンハウエル自身の文章を読んでいるわけではないので比較は出来ないが、ショーペンハウエルの方が言ってることはまともだと思うが、ニーチェの方が読んでてずっと面白い。わけわからないけど。ショーペンハウエルは比喩を用いて説明することがうまかったが、説明手段としての比喩というものをニーチェは表現手段に高め、さらに比喩としての寓話をギリシャ文化全体へと舞台装置を大きくし、その舞台で思う存分、大仰な身振りで語っている。ギリシャ文化全体が彼の思想を説明するだしに使われているわけで、その気宇壮大なところが面白い。ショーペンハウエルは基本的に抑制的だが、ニーチェは大声で語りたがりなように思う。まあ何だかんだとこのあたりは面白い。
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