アニメ『ピアノの森』/アシュケナージとかアルゲリッチとかポゴレリッチとか/『悲劇の誕生』
Posted at 09/07/27 PermaLink» Tweet
一昨日帰京。帰りがけに近くの蔦屋で『ピアノの森』のアニメのDVDを借り、家に帰って来て見た。上戸彩の海はあまりよくない。雨宮修平の声は、まあこんなものかな。もっと上手く出来るとは思うが、まじめで気弱な感じはよく出ていた。でも修平は本当は相当強い芯を持っているので、そこまでは表現できてない気がする。声として一番納得がいったのは白石。スター性のある女優を主役に持って来ればいいというものじゃないんだなと思う。普通の声優の方が上手く出来たのではないだろうか。
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子どもも見るアニメだから青年誌連載の原作のマンガのようにきわどいところは描けないのは当然だが、そうなると物足りないところがでてくるのもまたやむをえない。オヤジに強姦されそうになって間一髪逃げ出した海が森のピアノを演奏して救われるところに阿字野が現れる、という劇的な展開はアニメではない。森の描写などではアニメの方が詳細にはなっているが、あまり神秘性を強調するのもどうかという気がした。
しかし後半部分ではアニメならではの魅力が十分に発揮されていた。コンクールの課題曲が原作ではモーツァルトのK280だったのがK310に変更されていたのはなぜだかよくわからなかったのだけど、どうしても阿字野の真似から脱せない海にモーツァルトの幻影が現れ、楽譜を返せと迫る。とかくとオカルトっぽいがこれが実にマンガっぽく、太っちょやのっぽや子どもや女のモーツァルトが何人も現れて口々に「まだまだだな」とか迫る場面は、原作よりカラーなだけに可笑しさ倍増。また、極度の上がり症の誉子が一番落ち着くトイレの中で犬のウェンディと一緒にピアノを弾いているつもりになって実力を発揮する場面で、野原の中でトイレに腰掛けたままピアノを弾く誉子が、大空に舞い上がっていく様子は、さすがにアニメならではの表現で、アルプスの少女ハイジのようだった。
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結局このアニメを見て寝たのは2時過ぎになっていて、昨日の朝は起きたら10時半を過ぎていた。久しぶりによく寝た。お昼頃友達と電話で話し、夕方アシュケナージのピアノを買おうと銀座に出かける。山野楽器でいくつか物色するが、思ったよりあまり種類がない。もっといろいろな場所を探したらあったのかもしれないのだが。結局ウラディミル・アシュケナージ『スタンウェイ・レジェンズ』(モーツァルト・ショパン他14曲二枚組)とマルタ・アルゲリッチ『ショパンコンクールライブ1965』を買った。教文館によってニーチェ『悲劇の誕生』(岩波文庫、1966)を買う。カフェによってニーチェを読み、三越の地下で夕食の買い物をして帰宅。
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アルゲリッチやアシュケナージのピアノを聞くと、今まで持っていたCDは一体なんだったんだろうと思う。何というか、全く別物だ。今まで、演奏で「この人は違う」と感じたのはホロヴィッツくらいで、そのほかの人の演奏に、「この人じゃなきゃだめだ」という感じを持ったことが無かった。だから、ピアノのCDを買うといっても演奏者にはほとんどこだわらず、曲だけで一番安いのを選んで買っていたのだが、どうもあまり満足できない感じは持っていた。アルゲリッチやアシュケナージを聞くと、逆に曲は何でもいい、アルゲリッチの演奏を聞きたい、アシュケナージの演奏を聞きたい、と思う。
というようなことを思いつつCDの棚を探したら、なんとポゴレリッチが出てきた。ポゴレリッチは1980年のショパンコンクールで審査員特別賞を受賞しているが、彼を入賞させなかった審査委員会をマルタ・アルゲリッチがボイコットしたことで一躍有名になったピアニストだ。なぜ彼のを買ったんだろうと思ってこのブログの過去ログを検索してみたら、2005年に彼について二度触れていた。一度目は『マエストロに乾杯』でインタビューを受けた記事について。二度目はテレビで見たインタビューが興味深くてショパンの4曲のスケルツォのCDを、つまり先ほど発見したものを買ったことについてだった。
ショパンコンクールの件は『ピアノの森』で指揮者・ピアニストのジャン・セローが阿字野の落選に抗議して辞任した、というエピソードが出ていて、これはポゴレリッチ事件を引用したことはまず間違いない。私はポゴレリッチのCDを買っておきながらそれらの事件は全く忘れていて、最近もそういえば聞いたのだがやけにあくの強い演奏だなと思った覚えがあった。
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昨日買ったアルゲリッチとアシュケナージにもたまたまスケルツォがあったのでポゴレリッチと聞き比べてみたが、何というか全く別物で、ポゴレリッチのごつごつぶりは際立っている。
結局なんだかんだいいながら変なもの、印象に残るものは買ってるんだなと改めて思ったのだった。
昨日は早く寝て、今朝は6時前に起きた。朝食を買いに行くついでに東陽町の蔦屋により、アシュケナージ演奏のワルツ全集を借りてきた。
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ニーチェを読む。なんだか演劇みたいだ。
「もしわれわれが以下述べるようなことを頭で理解するだけでなく、直接、具体的に確信できるようになれば、美学に寄与することは多いと思う。すなわち、芸術の発展というものは、アポロ的なものとディオニソス的なものという二重性に結びついていると言うことだ。それはちょうど生殖ということが、たえずいがみあいながら、ただ周期的に和解する男女両性に依存しているのに似ている。……」
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このあたり、どこかで朗読劇にでもして上演して見るとすごく面白いのではないかと思った。哲学書って、きっと、耳で聞くと目で読むよりずっと面白いのではないか。
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