本を読む意味を取りもどす/石原慎太郎も半分気違いだ

Posted at 09/07/14

昨日。部屋の中を片付けよう、というかまずは本棚をどうにかしようと思いつつ、あまりに本が溢れていて途方にくれる。考えていても仕方ないなと思いつつ洗濯したり、食器を洗ったり。洗濯物を外に干そうとして、そういえば汚れたレースのカーテンももう10年以上前のだなあと思い、近くのニトリに見に行くことにした。安かったら買おうと。

150cm×180cmくらいのサイズのがあまりいいのがなかったのだけど、結局ブルーがかったのを買って北西側の部屋にかけてみたらさわやかな感じになった。これはいいと思ってもう一度出かけ、ブルーのがなかったので黄緑っぽいのを買ってかけてみたらすごく黄色くてやや困る。北西の部屋は元のカーテンが緑が基調、南西の部屋は黄色。まっきっき。家具も茶色いし、ちょっとさすがにどうなんだろうと思う。でも隣の部屋と比べなければ、これはこれでありかもという気もする。

なんだか本のことを考えるのがうんざりしてきて、しばらく本から離れるのもいいかなと思う。「美しさ」ということを考えていても、白洲正子などを読んでもまず物から、ということばかり書いているし。でも、レースのカーテン一つ架け替えるだけでかなり気分が変わることは確か。

(あ、今日7/14はパリ祭=フランス革命記念日だ)

一昨日、久しぶりに土鍋でご飯を炊き、朝はそれで済まして、昼はパレットのパン。3時頃でかける。気分転換といっても、とりあえずは手近な街。日本橋で降りて、郵便局に行き忘れているのを思い出し、丸善の裏の日本橋プラザへ。お金をおろして、1階に山梨県の物産館があるのに気がつく。煮貝とか、山梨の名物が割りとリーズナブルな値段であった。これは、と思ったのは印伝があったこと。印伝はいいものを見るためには甲府に行かなければいけないかと思っていた。銀座コアの中にも印伝の店はあるのだがいかにも高そうだし。割と自然に見られる場所がこういうところにあるのかとメモっておこう。各県の物産館というのは、どこに行ってもわりと楽しい。隣に山口県の物産館があり、鯨のベーコンだとかふぐの何か(なんだっけ?)があったりして面白い。金子みすずの便箋とか祝儀袋とかがあって、これはいいなと思った。木製パズルとかも。贈物とかするときにはここを思い出せるといいなと思う。

なんとなく楽しくなって丸善に入る。一階を見て二階に上がり、マンガのコーナーを見たら東村アキコ『海月姫』の二巻(講談社、2009)が出ていたので迷わず買う。さてしかしそれからどう行動しようかと迷い、どこかのカフェでも行こうかと雑誌をぱらぱらめくって、大丸に行ってみた。しかし結局お茶をしたいなという気にならず。バーゲンでいろいろ出ているが、デパートのバーゲンは十分に値段が下がってないのでいまいち買う気がしない。ブランドだったらある程度は出費を覚悟はするんだけど。で、八重洲口をぶらぶらと南下し、八重洲ブックセンターの喫茶に入る。ここは東京駅の様子が見えて、わりと好きだ。林檎タルトもコーヒーも堅実な味。いろいろ見たが結局小林よしのり編『日本を貶めた10人の売国政治家』(幻冬舎新書、2009)と石原慎太郎『私の好きな日本人』(幻冬舎新書ゴールド、2009)を買う。題名だけ見たらすごいが、立ち読みしたら二冊ともかなり面白かった。

それからガードをくぐって東京国際フォーラムの中を歩く。修学旅行客や、何かのコンサートかイベントに来ている人たちでごった返していた。西銀座デパートのHMVをのぞいたり、三省堂をのぞいたり。銀座一丁目の地下通路に潜る。この道を行けば地下経由で中央通りに出られるということに気づく。隠密行動に最適。何の目的が。でも一丁目付近だからちょっと北過ぎる。教文館まで南下して、なんとなく新書や文庫を見ていたら、立ち読みに熱中して来た。この感じは久しぶりだ。なんだか楽しい。

岩波文庫のコーナーで美に関する本を見ていたら、ディルタイやらニーチェやら、結構あることに気がついた。いろいろ読み比べて見ると結構楽しい。古い本が多くて印刷が悪かったり翻訳が古くてよくわからなかったりするものが多いのだけど、読んでいて熱中してくる。美というものはなんだろう。読みながら、多分美には相反する二つの考えがあるといっていいのではないかと思う。つまり、『美は調和だ』という考え方と『美は破調だ』という考え方。これはもちろんどちらかだけで成り立つわけではない。人は調和の取れたものを喜ぶ感覚もあるし、調和が取れすぎるとそれが崩れたものに新鮮な快楽を感じる感覚もある。またカントを読んでいると、美は感情性が感じるもの、という表現があってへえと思う。美というのは感覚、感受性の問題だと思っていたから。しかし、人を本当に動かす美は、確かに動かすと言うことは、感情を動かすということだ。癒しとか、喜びとか、興奮とか、そういうものを人間の感情に現象として巻き起こすものだ。そのあたりのところ、もっと考えてみてもいい。

そんなことをやっているうちに、「本を読むことに何の意味があるんだろう」という漠然とした疑問の答えが出てきたように思った。本を読むことはそれ自体楽しいし、読むことによって美について考えることが出来る。日本人は美について、不立文字というか、言葉ではいえないもの、というほうに走りすぎてきた。だから結局、美について考えようとするとヨーロッパの美学の言葉を援用せざるを得ない。日本人の生活感覚に根付いたままで美について考えると、どうしても物に付き過ぎる。小林秀雄は「美しい花がある、花の美しさというものはない」と言った。それはその通りではあるのだが、だからといって美しさというものについて考えるのが無意味だと言うことではないと思う。少なくとも私は、一生本から離れることは出来ないと思うし、本を読むことをひとつの大きな柱として何かについて考えていくしかない。そういう方向でもやれることはいくらでもある。そういう方向で考えながら、実際のものに触れていくことで、考えも感覚もより深めていくことができるはずだ。とそんなことを思った。

結局、カント『美と崇高との感情性に関する考察』(岩波文庫、1948)とキルケゴール『現代の批判』(岩波文庫、1981)を買う。

四丁目の角の花屋で黄色のバラの花束(10本600円)を買い、中央通を歩いて京橋の方へ。どこかで夕食を取ろうと思ったがなかなか開いていない。以前よくいった甘味屋が閉店してしまったようだ。パイロットのペンステーションの前を通る。万年筆好きの人を一度誘ってみようかと思う。紳士服のコナカの前でワゴンセール。普通買わないだろうなというネクタイでいいなと思うのを見つけて買う。990円。絹100%。高島屋の地下に入り、サンマルコで長州鶏のチキンカレー。680円。もう一度丸善の中を物色して帰宅。8時過ぎ。

海月姫 2 (講談社コミックスキス)
東村 アキコ
講談社

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本の感想。『海月姫』。東村アキコはやはり天才だ。蔵之介(女装ノンケ男子)と兄のシュウシュウの複雑な家庭環境。でもそのぶっ放しぐあいで全然深刻化しないところがいい。この二人が月海(海月オタク女子)をめぐって三角関係?になる。楽しくてしょうがないストーリー。読了。

私の好きな日本人 (幻冬舎新書ゴールド)
石原 慎太郎
幻冬舎

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『私の好きな日本人』岡本太郎のところだけ読む。石原慎太郎が岡本にあなたは半分気違いみたいですね、と言ったらお前もそうじゃないか、といわれて愉快だった、という話が可笑しい。いや、人間というものは本来みんな半分気違いみたいなものなんだと思う。私なんかもこんなに本の洪水なのに昨日は5冊も新しい本を買ったもんな。石原慎太郎のやってることを見ていると、半分気違いなんだなと思うと納得できるところは多いだろう。岡本太郎は本腰を入れてその気違いの部分を生ききった人だ。石原慎太郎というのは江藤淳が「無意識過剰」と評したが、本質的にそういうものを見つけるのが上手な人だ。自分もそういうものを買っていて、それが創作や政治活動の源泉になってるからなんだと思う。やっぱりこの人は面白い。周りは振り回されるけど。まあここの政策に関しては、築地市場移転とか、まあここにクレームをつけて阻止していくしかないと思うけどね。

日本を貶めた10人の売国政治家 (幻冬舎新書 こ 10-1)

幻冬舎

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『日本を貶めた10人の売国政治家』対談のところしか読んでないが、勝谷誠彦と他の面子のいうことが微妙に違っていて面白い。交友関係の違いだな。

美と崇高との感情性に関する観察 (岩波文庫 青 626-0)
イマヌエル・カント
岩波書店

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カント。「人というものは自らの愛欲を満足させる限りにおいてのみ自ら幸福を感じるもの」とか結構直接的なことをいっていて面白い。認識論みたいなことは飛び離れていてよくわからないのだけど、こういうことなら読んでいてカントを身近に感じられると思った。美学の祖のバウムガルテンとか、その学派の祖のライプニッツのモナド論とか、今までよくわからなかったが調べて見るといろいろ面白い。

現代の批判―他1篇 (岩波文庫 青 635-4)
セーレン・キルケゴール
岩波書店

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キルケゴール。「革命時代は本質的に情熱的である」というフレーズが繰り返し出てきて、ちょっと読んで見たいと思った。ニーチェも面白そうだったのだけど、まずはこっちを先にした。

やはり読書というのは、自分にとって抜き差しならない、読まないではいられないものを読むことが大事なんだと思った。

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