医者になった古い知人と再会/人生初JAF/弘兼憲史『父 島耕作』
Posted at 09/06/04 PermaLink» Tweet
なんだかんだと忙しい。昨夜は父が調子を崩したので深夜病院に車で連れて行った。結局たいしたことはなかったのだが、父が昔教えて私も面識のある人がこの病院の外科医になっていて、たまたま救急の当番で病院につめていたのだ。診察してもらったわけではないが、診察が終わったあとででてきて、ひとしきり昔話をして盛り上った。私が学生時代にしていた芝居を見に来てくれて、当時の座長のことも覚えていた。ああ、いろいろな人に見に来てもらったんだなあと感慨深い。座長は今はプロになっているわけだが、そういうことも雑誌などで読んで知っていた。私は見にきてもらったことすら忘れていたが、本当にいろいろな人に関わりを持ってもらったんだと思ったし、またそれを覚えていてくれたことがとても嬉しかった。帰宅して就寝一時。
朝は6時過ぎに起きてモーニングページを書いた後、ファミマにモーニングを買いに行く。父の日特集で『父 島耕作』というおまけマンガ?がついていて、娘・奈美とのひとコマがいくつか載せられていて、なんだかじんと来る感じがした。娘との関わりを描いた『父 島耕作』というコンビニ本が出ているのを知り、あとで買いに行こうと思う。
『モーニング』を軽く読む。「社長島耕作」。うわ。二人が死んでる。「バカボンド」。先週号の乱丁のお詫びとお知らせ。手元にある先週号を見てみたら、私が買ったのも乱丁であることがわかった。送料着払いで講談社に送ったら交換してもらえるらしい。交換してもらうのも味わい深いが、どうしようかな。『OL進化論』。20年程前の単行本を先日読んでいたら「社長秘書・玲子」というネタがたくさん使われていたが、このマンガはもう連載935回ということで、そのときそのときの世情が反映されていて面白いなと思った。最近のネタは「35歳で独身で」というヤツ。まあ身につまされるというか何というか。「ビリーバット」。月旅行の予言。「とりぱん」。オナガ軍団の来襲が映画みたいな描写。「ジャイアントキリング」。エースの重圧。「かぶく者」。歌舞伎界の過去の解明(架空だけど)。「ディアスポリス」暁天栄作の過去。「東京怪童」ハシのマンガ。これは面白いなあ。今週号は「へうげもの」も「ひまわりっ」「ピアノの森」も掲載のない週で、しかも「誰も寝てはならぬ」も「チェーザレ」も休載。何か物足りない。
朝食の前に父に愉気。まだ万全という感じではないので、朝病院に受診に行くという。それは母に任せた。私は経理関係の仕事で銀行に行き、ついでにコンビニを回って『父 島耕作』を探した。サークルKになく、デイリーヤマザキにもない。しかも車を降りたときにキーを挿したまま鍵をしめてしまい、JAFを呼ぶ破目に。人生初JAFだ。鍵ってあんなふうにして開けるんだなあと感心。30分ほど無駄にした。次にセブンイレブンにいったらようやくあった。最初からメジャーなコンビニに行けばよかったんだなと思う。
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帰ってきて『父 島耕作』を読む。課長時代。離婚し妻が育てている娘と、休日の面会。石神井公園。白紙答案を出した娘に文句を言う島。会社でもずいぶんがみがみ言っていて、こういうキャラクターだったっけなとへえと思った。大泉専務がパトロンになっている銀座の女と寝たりしていて、この辺は覚えている感じに近いのだが。娘から手紙がきて、中に100点の答案が入っていて、「豊島園に連れて行って」と書いてある。涙する島。こういうのを見てぐっと来る年になったんだなと思う。自分に子どもはいないけど。それに、何かこういう「ヤングエグゼクティブ」みたいな世界って昔は反発しかなかったけど、今読むとなんだかそれはそれでしみじみするな。何かそれもまた人生であることに違いはないんだし。この世にこの地上にともに生きている人たちの。
いくつか印象に残るエピソード。80話のカレンダーのエピソード、いい。課長島耕作最終話の典子の愛の告白もいい。いずれも親子関係とは関係ないが。
206ページまで読んで思ったが、私の「会社」というもののイメージって、実はこの「島耕作」でなんとなく読んだイメージで大体できてるんだなと思う。改めて「会社」ってものに縁がない人生なんだなと思う。
読了。うーん、もっと島と娘のエピソードが出て来ると思ったが、違う親子のストーリーが多かった。でもなんだかんだと親子のエピソードをたくさん取り上げてるマンガなんだなと思った。ラストのページにウェブ上でのマンガの無料公開の案内が出ていて、一つだけ読んでみたがこちらの方が島と娘のエピソードが中心のようだ。ただ感動ものばかりではない。
この作品は、今さら言うのもなんだが、やはり弘兼憲史の代表作といえるんだなと思う。『課長 島耕作』の最初の方の会の会社人間の家庭崩壊というテーマは多分その頃にはまだ珍しかったと思う。またメンタリティもやはり団塊世代という感じが強く、自問自答している感じも68年世代という感じだ。しかしそのマンガが今や『社長 島耕作』になって、日本のマンガ雑誌の最先端ともいえる『モーニング』にいまだに連載されているというのはすごいことだと思った。
「日本のサラリーマンの憧れ」みたいなものがいちばん詰まった作品なんだろうなあ。そういう意味ではファンタジーなんだろう。バツイチ子持ちのサラリーマンがこれだけたくさんの女にモテモテ(死語)で、派閥が嫌いだが尊敬できる上司に恵まれ、ハードに働くがそれも正当に評価されて順調に出世してついには社長に。サラリーマンの誰にでも起こりえることが描かれるとともに、ダンディズム(というか個人主義・父親として子供のことは大切にするが子供の犠牲にならない・尊敬する上司と行動をともにするが派閥には与しない、など)を貫きつつ仕事で実績をあげてきちんと出世もしていく。
それはさすがに誰にでもは起こらないが、でもそういう「正当さ」というものが描かれた作品は、それだけで読んでいて気持ちがすっとするところがある。『神曲』で悪者がその悪業の報いを受けて地獄で苦しむのを読むと気持ちがすっとするというのと表裏一体だ。時代性もあるし、案外こういう作品が後世に残っていくのかもしれない。(たとえば『神曲』だって当時のイタリアのよく知られたエピソードがたくさん書かれていた、けっこう時事的な作品だという面もあったと思う。)
そんなことを考えてみると、『課長 島耕作』がいちばん前衛な、エッジが立った作品だと評価される時代が来ないとは言いきれないな。20年代後半だった私にとっては、読んでるのがしれたらカッコ悪い、と感じてたような作品なんだが。でも力のある作品というのは、そういう一種の俗悪さのようなものをもともと持っているのかもしれないとも思う。
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