世界の認識パラダイムを揺さぶられる
Posted at 09/05/03 PermaLink» Tweet
昨日。書くほうの仕事が乗ってきたので火を焚くのはやめにし、午前中はそれに取り組む。昼前に職場に荷物を置きに出かけたついでに、職場の前に新装開店した花屋さんで変わった色の薔薇を三本買ったら、ガーベラを一つ開店記念にくれた。その写真、ちゃんと撮ろうと思っていたのだけど撮り忘れた。そういえば金曜日に生けた花の写真もアップしてない。じゃあここで。
下の花は今まであった二つの花を一つにしたものだけど、上の花はどこで買ったんだろうとつらつら考えて、そういえばガラス器の美術館の隣の農協の専売所で買ったと言うことを思い出した。カーネーションもいいが、濃い真紅の薔薇のような色をしたアルストロメリアが感じがいい。部屋の感じからすると少しどぎついといえなくもないんだけど。
王様の仕立て屋~サルト・フィニート~ 22 (22) (ジャンプコミックスデラックス)大河原 遁集英社このアイテムの詳細を見る |
午後はずっと仕事をしていたが暇だった。7時の特急で上京する前に駅前の書店を物色し、大河原遁『王様の仕立て屋』22巻(集英社、2009)を買う。もう一冊探したがマイナーなのでないだろうと思ったらやはりなかった。特急は比較的空いていた。ゴールデンウィークだが逆方向だからな。逆方向は空いてるんだからそのコストはあまりないはずだし、むしろ割り引いてもいいんじゃないかと思うんだけど、高いんだよな。
宇宙家族ノベヤマ 2 (ビッグコミックス)岡崎 二郎小学館このアイテムの詳細を見る |
地元の駅に戻ってきて書店を物色して岡崎二郎『宇宙家族ノベヤマ』2巻(小学館、2009)を買う。この発行をずっと待っていた。連載では一通りちゃんと読んだのだけど、やはり単行本になったのを集中して読みたいマンガだ。はっきりいってこれだけちゃんとしたものを考える系のSFは読んだことがない。実際に我々が抱えている問題とどのくらい関わりがあるかはともかく、ストーリー設定、テーマ設定、どちらもとてもしっかりしていて読み応えがある。昨日から今日にかけて、1巻と2巻を通してじっくり読み直して、やはりいいなと思った。
昨日はいろいろ調べものをしていて、精神分析学などのことをネットで調べていたのだが、いろいろ読んでいるうちにこうした精神病理学系統の学問というのは実は斜陽なのだということがだんだん見えてきてかなり愕然とした。少し前、と言っても10数年前から認知科学だの脳科学だのといったよくわからない分野がさかんになってきて?と思っていたのだが、これらは心の問題を物質的・計測可能な側面からアプローチをしようという分野名のだということに気がつき、また逆に言えば主観に頼らざるを得ないフロイトやユングなどの心理学は旗色が悪くなって来ているということなんだなと思った。無意識というものの存在そのものについて否定的な意見や、心の多層構造自体についても仏教の人などの中にも否定的な人がいて、自分の中で当たり前の常識というかむしろ証明済みのことだと思われていた認識パラダイム自体がぐらついて来ているということに気づいて愕然としたのだった。
このブログを読んでもらえばわかるけれども、コンプレックスだのトラウマだのといったそういった方面の用語をよく使っているが、世界の認識の仕方そのものがそういう理解体系によっている部分が私にはかなりあったからなのだ。でもまあその理解が適当だったので最近になってようやくちゃんとした本を読む気が出てきていたのだけど、20年したら逆にそれら自体が否定的にみられるようになっていたとはびっくりせざるを得ない。時代というのは本当に動いて行くものだし、流行の思想、流行の科学というものも変化していくのだなあとそういうことを見ているとしみじみ思う。そういえば、先日友人と電話で話したときに、心理学のことを友人が「失敗した科学だ」といっていて、それは誰のどういう見解なんだろうと思っていたのだけど、そういうことをいっている人は実はそう少なくもないようだと気づいた。
でまあ少しいろいろ頭の中がひっくり返ってとっちらかっていてあまり何も書く気分でなくなっていたのだが、そのあとでなんとなくぼおっと考えていると、実はそういうトラウマとかコンプレックスなど自分の中の負の要素というものに自分はなんだか取り付かれていた、こだわりすぎていたんじゃないかという気がしてきた。そういう理論そのものが力を失っていると聞くと、自分の中のそういうものもあんまり意味がないように思えてくる。自分では「こういうことがトラウマになっている」とか思い込んでいたけど、そういうのも無理やりこじつけただけかもしれないとか、あんまり真剣に考えるのが馬鹿馬鹿しくなってくる感じもあって、何というか逆に少し解放された気分にもなった。
でもまあ、今までずっとフロイト派やユング派に属して人生をそれに賭けて研究を続けてきた人は、もはやこれでその学問の有効性がなくなったといわれてもはいそうですかというわけには行かないんだろうなと思う。少し前ならマルクス主義経済学というのもそうだったし、民俗学なども文化人類学の前に霞んでいる感じもある。フロイトやユング、マルクスや柳田国男など、確かにそういう意味での巨人はいるしその価値はそう簡単になくなりはしないと思うけれども、現代においての価値というよりは歴史的な価値になっていきつつあるのだろう。
もちろん、どんなに社会主義革命がアウトオブデートになっても断固としてその可能性を追求する老革命家がいるように、そういうものを固守することを目指す人々もいるし私もそういうのは嫌いではないのだが、心理学に関しては自分は固守する立場ではないなと思う。他にはそういうものはあるんだけど、こと心理学に関しては。心理学が自由にした人はたくさんいると思うし自分も自分の中を探るのに心理学の体系を利用はさせてもらったけど、それでどのくらいのことが分かったかというとよくはわからない。わかったような気にさせてもらったとはいえるんだが、今こういうふうに考えが動き出して見ると一度全部考え直してみないといけないので評価不能の状態になっている。むしろそういう心理学の体系を使わないでいろいろなことを考えて見ることが明るく楽しいような感じがしていて、ちょっとそちらの方に心ひかれている。
新しい体系を受け入れる、ということもまあそんなに熱心にやる気はないが、さわりくらいは知っておいたほうが先々生きていく上でメリットはあるだろうと思う。とはいっても認知科学とか、本を読んでいても全然わからなかったのは一つにはそうした心理学の地盤の上に立って考えながら読んでいたせいなんだろうなと思う。また暇なときにでもそういうものにチャレンジするのもいいかなと思う。
そんなこんなをしていたら、夜ネットを見ていて忌野清志郎が死んだことを知った。享年58。ああ、自分の価値観が大きく変化させられることを実感させる一日だ。人はいつかはしんでいくんだなと思う。清志郎ですら。冥福とか合掌とか、そんなことを書く気にもならない。
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